議会最終日、私は県民参画基本条例案に反対の討論をしました。
採決では、我が会派の3人と共産党の計5人が反対。公明党が退席する中、自民、絆、長谷川氏、谷村氏が賛成して可決となりました。以下はその討論原稿です。若干、読み飛ばしたところなどありますが、だいたいこういう内容を話したのだなという感じで読んでみてください。
鳥取市区選出の砂場です。議案第33号「鳥取県民参画基本条例案」について反対、陳情25年未来づくり推進第2号「永住外国人住民への住民投票権付与」について、委員長報告に反対し、採択すべきとの立場から討論を致します。
条例案の第1章から第3章までは、平井知事が進めてこられた情報公開と県民参画を成分化したもので、異論はありません。しかし、第4章の県民投票の制度設計には賛成できません。
条例を含めた法令は、個人や法人の権利の得失を定めるものである以上、法的安定性が求められます。問題があるのを分かっていながら修正することもなく、後日、修正すればいいという安易な立法行為は慎むべきです。政治情勢などでどうしても成立させなければならないときは、見直し条項を盛り込むとか、時限立法にするのが、県政の常道だろうと思います。しかも、都道府県では初めての常設型の住民投票制度を定めるのです。影響の大きさを考えると、一歩前進しているなどと安易に賛成はできません。
以下、問題を指摘します。まず発議です。県議会の賛成を得て住民が発議する場合、条例案は有権者の10分の1以上の署名が必要ですが、地方自治法では50分の1以上で足ります。昨年9月2日現在、鳥取県の選挙人名簿と在外選挙人名簿の登録者合計は48万2961人ですから、条例案では4万8297人の署名が必要であるのに対し、地方自治法では9660人で足ります。確かに条例案をつくる手間は省けますが、3万8637人分も多くの署名を集める方を洗濯する方がいるとは思えません。既存の地方自治法から後退した条例を制定する必要はありません。
県民の署名だけで発議するには、40万人までは3分の1。それ以上は6分の1の署名が必要です。つまり14万7160人の署名が必要です。鳥取市では市庁舎の移転新築を巡り、住民投票を求める市民運動が起こり、鳥取市民の一人として私も、市谷県議、坂野県議と参加しました。487人が呼びかけ人となり、署名活動をする受任者は4460人。配った署名簿は7000冊以上です。街頭でマイクを握って訴え、道行く市民にビラを配り、1軒1軒回って署名をお願いしました。マスコミも連日報道し、市民の関心も高まりましたが、集まったのは5万304人分の署名で、3分の1にはあと一息届きませんでした。県民投票では、その2.8倍もの署名を集めなければなりません。3分の1は現実的ではないというのが、実際に署名を集めた人間の実感です。
しかも、投票率が50%を超えなければ開票されません。鳥取市の住民投票は、市民の関心は極めて高かったと感じていますが、それでも50.82%でした。2004年の投開票された宮城県三本木町の住民投票は47%です。ちなみに今年投票された知事選では、3月17日の千葉県知事選は21%、1月の岐阜県知事選は33%でした。候補者が悪かったと言われれば、すみませんと謝るしかありませんが、前回の鳥取市長選も48%でした。投票率50%は厳しい数字です。
加えて、鳥取市の住民投票では耐震改修案が4万7292票、移転新築案が3万721票という明白な民意が示されたにもかかわらず、いまだに、ああでもない、こうでもないと議論が続いています。1997年の名護市の在日米軍の海上ヘリポート建設の是非を問う住民投票では「反対」が過半数を占めましたが、比嘉市長はヘリポート建設の受け入れを決めて辞任。投票の結果は尊重されませんでした。町長が「如何なる結果になろうと合併を進める」と表明した住民投票さえありました。平井知事は投票結果を尊重されると思いますが、将来、どういう方が知事なるかは分かりません。法的拘束力がない住民投票は極論すればアンケートであり、二元代表制との問題を考えると、条例は本当に必要なのか疑問です。
住民投票は、首長や議会が民意を反映できくなった場合や、首長と議会が激しく対立して抜き差しならなくなった場合に想定されます。稲田副議長が一般質問で言われた言葉を借りれば、抜いてはならない伝家の宝刀です。危機的状況を打開するものである以上、抜群の切れ味が求められます。しかし、縷々申して来ましたように、条例案は使い勝手が非常に悪いと思います。
加えて、永住外国人と18歳以上の未成年者に投票権を認めていないことも問題です。平井知事は質疑の中で、「条例案の情報公開や県民参画から外国人や未成年者の皆様を排除するつもりは毛頭ありません」と言われました。ならば、県民投票からも除外する必要はないのではないでしょうか。
法を学びし者としては、アメリカ独立戦争が「代表なくして課税なし」として始まったことをまず想起します。民主主義国家にとって納税は重要な義務の履行です。義務だけ課して、権利を認めないのは信義則から許されません。しかも、地方参政権とは、地方選挙で被選挙権と選挙権を付与することを意味し、住民投票と同じではありません。せめて、住民投票の権利だけでも認めるべきではないでしょうか。
地域に暮らす者としては、共に暮らす在日外国人の皆様の意見を聞くことに何ら違和感はありません。外国人に投票権を認めた町村の方々にお聞きしますと、一緒に暮らしているキムさんやジョージ君、つまり、顔の見える人を排除することの方に違和感があったそうです。
功利主義者としても容認できません。在日韓国人の皆さんを住民投票から阻害するような地域を、韓国の皆さんが訪れたいとか、ビジネスパートナーにしたいとか思うわけがないからです。県が財政援助して継続を図るDBSフェリーやアシアナ航空に対して、在日の皆様は様々な支援をされていますが、そのモチベーションも下がるでしょう。加えて、在日韓国朝鮮人の皆さんが日本で暮らさざるをえなくなった歴史的経緯も忘れてはなりません。
県条例で市町村事務を創設することはできず、外国人と18歳未満の未成年の報告を市町村に求めることはできないという意見もありますがが、住民基本台帳を転記すれば県は自前で投票権者名簿は調製できます。
ただ、この場合、外国人と18歳以上の未成年は、選挙人名簿に記載されている欠格事由の情報が住民基本台帳にはなく、有権者と不公平が生じるという懸念が残ります。しかし、条例案の投票制度が投票結果に対する法的拘束力のない諮問型であり、投票結果を踏まえて最終的な意思決定は知事や議会が行います。しかも、外国人と18歳以上の未成年の欠格事由に該当する者は極めて少数です。結果が数票の違いだった場合は、県民の意見はほぼ同数であったと判断すればよく、問題はないと考えます。
このように条例案には多くの問題があり、賛成できかねます。平成14年に設置された日野郡民会議を覚えておられますか。委員の選出は当初、選挙で、在日外国人と18歳以上の未成年者の被選挙権と選挙権を認めていました。議員提案で抽選制となりましたが、このとき、自民党案について手島幸二県議は代表質問で「将来に夢を持ち、これから社会人となる若い世代の意見を反映させるため、応募資格を18歳まで引き下げた」と言及され、在日外国人と18歳以上の未成年者も委員として認めていました。鳥取県にはこのような前例があるにもかかわらず、10年以上を経った今、なぜ後退した条例を作らなければならないのでしょうか。
住民投票についても過去の県議会での議論を調べました。石黒豊県議は平成15年9月定例会の一般質問で「年齢的には中学生以上であれば十分に将来を見通した自己の意思表示はできるはずでありますし、ましてや、日本国民と同様に納税義務を負っておられる外国籍の人々も、立派な県民、市町村民であり、当然住民投票の権利があるはずであります」と述べ、知事の所見を求めておられます。片山知事は「日野郡民会議は抽選となりましたが、原案はできるだけ幅広い意見を取り入れるということで、定住外国人の方も含むという案にした」と応じておられますが、まさに石黒県議の言われる通りだと私は思います。
この定例会で代表質問されたのは横山県議でした。「利己主義の風潮が蔓延して誠に憂慮すべき事態です。せめて鳥取県ぐらいは、自他敬愛、みんな仲良し、明るく、楽しく、、おもしろく、そして素朴、誠実な県民性を共有して日々生活できるようでありたい」と述べられています。これに対して、片山知事も「鳥取県ぐらいとはいわず全国が、自分のこともさることならが、人のことも考え、誠実さを大切にする社会でありたいと思う」と応えられています。その通りだと思います。自分のこともさることならが、在日外国人の人々のことも自分のことのように考える鳥取県でありたいと思います。
以上、条例案に反対の立場から縷々申し上げました。議員の皆様にはご理解を賜りますようお願いを申し上げ、討論を終わります。ご静聴、ありがとうございました。
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