エネルギー雇用促進調査特別委員会県外調査の2日目は、メタンハイドレード研究の第一人者である明治大学研究・知財戦略機構の松本良特任教授からお話を聞きました。
以下は松本先生の説明の概要です。
昨年、38年勤めた東京大学を定年退職したが、地質学をずっと研究してきた。地球の進化、生物の進化と生物環境の関係を調べてきた。その中で、メタンハイドレードにぶち当たって、これが環境を変化させてきたのではないかと考えるようになった。その中で、エネルギーとしてのポテンシャルがあることがわかった。南海トラフトを調査し、日本海へ調査を展開している。10年間研究してきた様々な研究者が明治大学の研究知財戦略機構の中にガスハイドレード研究所というコンソーシアムを作って研究を継続している。
メタンハイドレードは燃える氷。水の分子とメタンの分子で構成されている。カチンカチンの氷。1立方メートルの中に164立方メートルのメダンガス(25度1気圧)が閉じ込められている。世界の海洋縁辺部に広く存在している。これまでに掘削して取れた場所も多いし、さらに探査で存在を確認した部分はもっと多い。水深400メートルから2000メートルくらいのところにある。
メタンハイドレードは深層メタンハイドレード(砂層型)と表層ガスハイドレード(塊状)の2つのタイプがある。音というか、振動を海底に向けて出して、その反射音を確認する反射法地震探査を使ってみると海底とパラレルに反射面(BSR)が出現するが、これがガスハイドレード。海底下150メートルから300メートルに砂と泥の層が出来ているが、この層の砂の粒を充填するように分布している。1000メートルの水深の海底の下の数百メートルになるので大きな人工アクションがないと取り出せない。お湯を注いで溶かして取り出すか、水を注入して圧力をさげてやるかで、ガス化しないといけない。コストパフォーマンスがどうなのか。シェールガスはガスなので隙間を作れば出てくるが、メタンハイドレードは氷という個体のため、取り出すのが難しい。もうひとつは表層型。海底下数メートルから数十メートル。メートル単位である。海底に吹き出して、バクテリアなどで固まったもの。2003年に偶然発見し、2004年から研究を始めた。
上越海盆で確認し、隠岐周辺と網走沖にBSRを確認した。秋田沖ではBSRはないが、ガスハイドレードは確認した。太平洋は浅いところまでは上がっては来ない。大量のガスハイドレードがあって、地層に溶け込めずに表層に出てきている。言い換えれば、太平洋は100万年単位でゆっくり貯まったものであるのに対し、日本海は1万年単位くらいで吹き出したもの。生成量は圧倒的に多いことを示している。
1995年に西大西洋で研究が始まり、南海トラフ、日本海へと調査を広げた。直径8センチの太さのパイプを海底に刺し、土壌を回収するほか、無人探査機を海底で走り回らせて地形や海底の状況を調べている。音響調査できる無人潜水艦を使うこともある。2004年7月―8月の調査で海底のすり鉢状の穴に注目したが、これはガスが抜けた跡で、むしろ丘のようなマウンドの下にメタンハイドレードはあることがわかった。地震調査で地下構造も解析したが、地震波の反射強度が著しく弱いゾーンがあった。直径1~2キロのパイプ状であるが、ここはガスが上がってきている形跡。これをガスチムニーといい、その海底部分のマウンドにメタンハイドレードがたくさんあることを確認した。ガスチムニーは直径1~2キロ、深さ100メートルの大きさがある。この中の構造を確認したいのだが、4トンの重りを付けてパイプを落としたが、グチャッと曲がってしまい、確認できないでいる。ガスハイドレードが数~数十メートルにわたってカチンカチンの堅い堅い氷になっているのかもしれないと期待している。
上越沖では無人探査機で海底の状況も調べた。マウンドではメタンハイドレードの層があり、すり鉢状のところに数メートルのメタンハイドレードの塊があった。海底一面からガスは吹き出している部分も確認した。このガスを採取するとガスではなく、微少なメタンハイドレードだった。海面下1000メートルで水温も低く、メタンハイドレードも安定した環境だったから、不思議な状況ではない。メタンハイドレードは集積して大きくなると浮力でわっと浮き上がることもある。海底にはズワイガニがたくさんいた。メタンと関係があるのかと採取して腹を割くとカニとイカが詰まっていた。足がないズワイガニがたくさんいたが、共食いの証拠で、地元漁協に話すと共食いしていて商品価値はないと興味を示さなかった。ガスチムニー直上に塊状結晶集合体からなる濃集帯を作り、マウンドとなり、バクテリアマットとなる。メタンブルームを伴うこともあり、山のようなピンゴとなる。日本海底には有機物が集積されていて、メタンガスの生成が進んだのだろう。
隠岐周辺の海底下にBSRがあることを確認した。高周波音源によるサブボトムプロファイラーを作成し、ガスチムニーの分布を調べていくことが必要。その後でパイプを落として、メタンハイドレードを採取して分析する。多数のガスチムニー、明瞭なマウンド(=表層メタンハイドレードの集積帯)、ガスチムニー(メタンガスの吹き出し口)を確認したので、メタンハイドレードの存在することは確かだ。
メタンハイドレードの資源ポテンシャルを評価するためには、①ガスチムニーのハイドレード量を確認し、②ガスチムニーの分布の解明が必要。①は堅いハドレード密集帯に阻まれ、ことごとく失敗したので、ロータリーコアリングで深層掘削を実施する必要があり、②では日本海全域に拡大していくことが重要である。船を2~3週間借り上げて調査していたが、数ヶ月から半年にわっての調査を数年続ければ確認できる。学術的評価の段階は終わったので、資源量評価をしっかりして、その結果に基づいて、開発するか、しないかを決めることになる。
質問にも丁寧に答えていただきました。以下はその要約です。
Q いつごろ資源評価はできるか。
A 2~3年で要点を押さえ、同時に掘削調査をすると、4~5年先には評価でき、どんな技術が必要か開発し、楽観的にみれば次の5年で開発となる。
Q 魚群探知機でプルーム調査ができれば調査は早くなると聞きましたが、そうでしょうか。
Q この調査は東京海洋大学の船を使っているようだが、国家プロジェクトではないのか。和歌山県は独自調査を始めたが、調査が民間機関に委託されたが、それでいいのだろうか。
A プルームの確認が一番大事なので半分以上は間違い。ガスチムニーが30あってもプルームは3~4。ガスチムニーを見逃すことになる。プルームがあっても、それでメタンハイドレードは確認できない。東京海洋大学の調査船を使うのは、毎年、7月に上越沖に入るので、お願いしているだけ。
Q 先生の使った知見を基に国家プロジェクトにすべきでは。
A 新しい鉱業法でき、先願権は許されず、開発ができなくなったので、問題はない。資源量評価は国がやるとしても、開発は民間でしなければならいので、オールジャパンでコンソーシアムを組むべきだ。
Q どれくらいの研究費があれば、いいのか。
A 年間2,30億円を5年間。掘削だけで40億円はかかる。国は深層型の開発を先行させたいとしている。日本海は資源対象にならないとされてきたので、サポートは薄かった。
Q 日本海に有機物の集積があるのは、日本海は昔、陸地だったからでは。地形でわかるのではないか。
A その通り。だから若い地層が分厚く貯まっているところを調べた。太平洋岸の方が有機物の体積も少なく、地熱も低いので生成は少ない。深部から供給されて、メタンハイドレードとなって浮かんで消える。とっても、また、生成されるので、再生可能エネルギーとなるのかもしれない。生成のメカニズムが解明できれば、
Q 地球環境に与える影響はないのか
A 海水中に吹き出しても溶けるし、深海は海水が冷たいので固まってしまうので、環境に与える影響は陸上のガス田よりも小さい。環境に与える影響を与えるものではない。むしろ、噴出するメタンを採集すれば、むしろ環境にはいい影響を与えるのではないか。
Q 開発や研究でクリアすべき課題は
A 深い井戸は回転。100メートル程度に堅いハイドレードと柔らかい泥が混在しているのでやってみるしかない。ロータリーコアリングは、海底に掘削装置を設置して、さっと掘る技術はイギリスの研究機関が開発しているので参考にしたい。
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