翌16日朝、道祖神場を訪れると、大勢の人たちが社殿があった場所に集まっていた。みな餅をを焼いているのである。小正月の火祭りでよく言われるように、餅を焼いて食べると風邪を引かずに1年間健康で暮らせる、と言われる。周囲では道祖神祭りの片付けが盛んに行われていた。マチの中をあるくと、やはり外国人の姿がよく見られた。
道祖神祭りを前に、初灯篭を見て回った後、宿へ帰る際に気になる看板を見つけた。「あけび細工製造卸 あけび鈴元祖 みゆき商店」というもの。ところが集まっているお客さんはみな「道祖神まんじゅう」を買っていく。どういうことなのだ、と思いのぞいてみた。「名物道祖神まんじゅう」の真っ赤な旗が掲げられていて、やはりここは「まんじゅう屋」さんだ。狭い店の奥にまんじゅうを作っている空間も見えた。看板との違和感は何なんだと思ったときに浮かんだのが野沢温泉の鳩車のこと。そういえば野沢温泉は鳩車でかつては知られていた。いや、今も知られているのかもしれないが、すっかり鳩車のイメージはわたしからは消えていた。店に並ぶ品物の中に鳩車が見えなかったので、「鳩車ってあるんですか」と聞くと、「ありますよ」と少し上の方の棚を指ざされた。きっとそれほど売れるものではないのだろう、言ってみれば脇の方に追いやられている。製造卸と看板にあることを問うと、おじさんが自分で作っているというのだ。まんじゅうは誰がと聞くと、やはりおじさんが作っているという。鳩車とまんじゅうという組み合わせにとても惹かれたのである。加えて売り物の中にケーキも並ぶ。どういうことなんだと思い「このケーキはどこで作ったものなんですか」と聞くと、これもおじさんが作っているという。狭いながらも、凝縮された空間におじさんの多様な顔が見えた。それならと、まんじゅうを買おうとしたら直前のお客さんで売り切れ。どうしても買いたいという思いに駆られ、翌朝のことを聞く。朝なら確実ということなので、翌朝訪れることを約束した。その代わりに買ったのが「木像道祖神」であった。
翌朝、例会に参加した数人とともに再びおじさんのところへ。みんなまんじゅう目的で訪れたが、わたしはいくつかのケーキとともに鳩車も買った。おじさんに惹かれてのこと。店の中には、かつて7段で造られた時の道祖神社殿の写真が飾られていた。おじさんが棟梁をつとめたという。聞けば長野パラリンピックの聖火台となった社殿を造った時もおじさんが棟梁をつとめたと。知る人ぞ知る、そんなおじさんなんだと思い、店をあとにした。
ちなみにネット上ではこの道祖神まんじゅう、「チーズが入っている」と紹介されているが、わたしにはマーガリンのような気がした。不思議なまんじゅうだった。
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