Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

ある自治体史誌に関するプロローグ

2023-05-02 23:24:54 | つぶやき

 ある市誌編さんに関わって、最近悩みが増幅している。

 先ごろの会議でのこと。ふだん顔を見ない方が会議室におられて、ほどなく誰かは想像がついた。マスクをしている近ごろは、誰と明確に判断できるには、常に顔を合わせているような人でないとわからない。それでもこの日、「なんとなく」誰かは分かり、会議の冒頭でも何の説明もなく会議は始まった。その会議が何のために開催されたかは、司会をつとめるその場の長と頻繁に打合せをしていたからわかっていた。その「何のため」がわたしには強くこころにあったから、事務局やその場に初めて加わった方の意図は様子見ではあったものの、この会議の方向性を見失わせるような発言に苛立ったのはいうまでもない。

 この編さん、令和3年1月に編纂委員会が発足して始まった。そもそもの意図とは何だったのか、編さん室のページからうかかがうしかない。わたしは途中から「側面から支援してほしい」との目論見で加わった一人にすぎず、何回も会議は出ているものの、いまもって委嘱状をいただいてもいないし、ただ趣味で参加しているレベルの存在だ。したがってその意図を直接聞いたわけでもなければ、わたしの身分を説明されているわけでもない。このような形で編さんに関わったことは、いままで一度もないし、「こんなやり方もある」と薄っすら「思う」しかない存在でもある。

 さて、〇〇市誌を作る目的には次のように記されている。

1.市民のみなさんにとって、〇〇市への関心と愛情を深めるきっかけ作りのため
2.○○市の発展に役立つ、将来への資料として記録を残すため

そして、その方針として次の6項目があげられている。

1.○○市のことを知りたい時に役立ち、興味が湧く『○○市誌』を作ります
2.『○○市史』『○○町誌』『○○村誌』が刊行された後の事柄を中心にまとめます
3.新しい取り組みに伴う変化、また○○市の歴史や文化を記録し、未来へ繋ぎます
4.写真や文集などを活用し、その当時の人々の声が聞こえ想像力をかき立てるような『○○市誌』を目指します
5.画像や映像、音声を使って、書籍では伝わらない臨場感のあるコンテンツ作りにも取り組みます
6.『○○市誌』のデジタル化を図り、あらゆる世代の方の「知りたい」「調べたい」をサポートします

以上である。この市では平成の合併以前に、それぞれの市町村で編さんされた自治体史誌が発行されている。県内ではごくふつうの自治体史の姿である。その上で、合併後を中心に「新たな」自治体史を編もうとしたもので、県内ではこうした考えで取り組もうという動きは少ないもののある。大きなものとして長野県史があるだろう。昭和時代末期に刊行された県史以降を補う、あるいは「新たな」という意図もあるのだろうが、動き始めている。したがってこうした取り組みにいち早く手をつけようとした考えには賞賛したいと思う。ところが、今さかんに悩んでいるのは、その編さんへの具体的な方法なのだ。方針のうち4.~6.は今だから考えられる新しい取り組みだろう。方法によっては市民にはとても便利なものになるだろう。問題は1.~3.の方針をどうかたちにするかである。

 市誌を編さんする上での作業工程や内容についても記されている。「資料収集」には「必要となる情報や資料を、時代を追って集め整理します」とあり、「調査・研究」には「集めた資料から、調査や研究を行い、根拠のある情報を掲載できるようにします」とある。ごく当たり前のものなのかもしれないが、この方針に沿って議論しようとすると、最近富に横やりが入る。そのせいで悩む時間が嵩んでいるというわけだ。ただでさえ「簡単には編めないもの」とわかっているのに、逆行する批判を受ける。「いったいどういうものをつくろうとしているのか」、わからないし、もしかしたらわたしのイメージとはまったく異なるものを作ろうとしている、そう見える。時間ばかり要してしまってやらなければならないことができない、そんなことにならないで欲しいというのが今の思いである。

続く


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