今年やり残したことないかな~、と考えていたら、このレビューを書くのを忘れてました。
ご存じ『源氏物語』をきらさんが漫画化した作品です。
はっきり言って、この脚色はちょっと許せない。なぜなら、私の好きな葵の上と明石の上の扱い方がひどいから! この二人は、たった3人しかない光源氏の子をそれぞれ1人ずつ産んでいるんだけど・・・
問題点1:葵の上の妊娠は彼女の作り話になっていて夕霧が生まれてない。
問題点2:京から須磨へ、須磨から明石へ隠棲した光源氏が明石の上と出会ってない。→娘が生まれるはずがない。
そりゃね、『源氏物語』には様々な女性が出てくるから描き方に偏りがあっても仕方ないと思う。でも、葵の上と明石の上に生まれた子どもを無かった存在にするとは、物語の根本を揺るがす事態だと思う。『源氏物語』のおもしろさはいろいろあるけど、一つに光源氏が受けた予言(帝になれば国が乱れるが、臣下に下っても臣下では終わらない。子どもの一人は帝、一人は后、一人は大臣の地位を極める)がどんどん現実のものとなっていく、というところにあると思う。それなのに、その子どもが生まれなくちゃ話にならないよ。
作者はあくまで光源氏・紫の上・藤壺との関係をメインに考えてこの設定にしたのかもしれない。でも、行間に書かれてないことについてイメージを膨らませて書くのはOKだけど、原作を無視した設定は受け入れられない。
ほかにも変なところも多い。たとえば2巻で、まだ光源氏と結ばれる前の紫の上(若紫)が宮中で弘徽殿女御に出会った、というところがヘン!!! 光源氏に養われてるだけでこの時点ではまだ世間的には正体不明の謎の存在だったはずの若紫が宮中に行ける訳がない。
でも、光源氏の兄の帝が病気になった原因が、朧月夜の君が毎夜毎夜眠ってる帝の枕元で亡き父・桐壺院のフリをして怒りの言葉をささやいていたせいだった、というのには笑いました。
やっぱり、『あさきゆめみし』には到底かなわないな。この中で、光源氏と葵の上の息子・夕霧と、いとこの雲居の雁の二人が結ばれるエピソードは、数ある名シーンのなかでも特に好きなエピソードの一つです。
『源氏物語』について偉そうに語ってしまった私ですが、完訳もので読んだのは、与謝野晶子版と瀬戸内寂聴版のみ(^_^;)
他に『源氏物語』関係の本はいくつか持ってるけど、瀬戸内寂聴さんの『女人源氏物語』は、登場する女性の視点から描かれていておもしろい。私の好きな葵の上と明石の上も魅力ある人物に描かれているので好きです。『田辺聖子の源氏がたり』もわかりやすくて入門編にはもってこいの作品です。