猫と共に余生を穏やかに過ごす

猫との生活記録が主です。
サブでヘルニア闘病記事も有りますが、徐々に趣味の記事へと移っていきます。

ショートショート「夢と警官」

2022-04-24 17:00:22 | 戯れの小説。内容はしょうもないです。恥ずかしいので読まないで下さい

★朝の掃除で疲れて倒れるようにベッドに横になり、つばさを呼んで一緒に昼寝をしていました。変な夢を見たので、そのまままとめます。

 

 

夢と警官

 

夢を見ていた。明らかに夢の中に居る感覚だった。私は墓地の入り口に一人立ち、たくさんの墓標を眺めていた。季節はいつなのだろうか。私はぼんやり考えた。空を見上げる。灰色一色である。太陽はまったく見えない。朝方なのか夕方なのかすらもわからなかった。もちろん方角も、時刻すらもわからない。腕時計や携帯を見るという発想すらも思い浮かばなかった。

目の前にあるのはそれほど大きな墓地ではなかった。異国の雰囲気はせず、日本国内でよく見かけるごく普通の和式の墓地に見えた。そう、この時までは。

風はほとんど吹いておらず、周囲に人の気配はなかった。私は入り口に佇んだまま周囲を見渡した。私はこんなところで何をしているのだろう。いや、そもそも私は誰だったのだろう。私の名前は確か・・・。と、その時、墓地の外に三人の警官の姿を認めた。人の気配もなく、もちろんパトカーの存在すら一切、感じることは無かったのだが。私は警官たちの方へ向き直った。なんとなく斜めに出迎えるのは相応しくないと無意識で感じたのだろう。三人の警官は静かに私に近寄ってきた。二人は年配で、間もなく退職するような老警官である。一人は若く、三十代に満たないであろう大柄な警官だった。私の視界には、いつのまにかワンボックスタイプの警察車両が出現していた。警官たちの背後にあるその車両は、後部のハッチを上方へ大きく開け放っていた。エンジンの音など全く聞こえなかったが、なぜかそのことに一切、疑問も関心も持たなかった。私は呆然自失状態であったのだろうか。あるいは夢の中であるため、因果を無視する事に慣れてしまっているのだろうか。確信は何も持てなかった。

何の感情もわかないまま、近づいてくる三人の警官を見つめていた。先頭は年配の警官の一人だった。何の違和感もなかった。やがて、私は自分が立っている墓地の入り口には、この墓地には不釣り合いな洋風の飾り門が、頭上高くアーチを描いている事に気づいた。元々あって今気づいたのか、警察車両と同じように突然、出現したのか。どちらでもいいと感じた。心は平板なままだった。

先頭の老警官が声をかけてきた。

「こんにちは。お参りですか。」

なんの警戒心も猜疑心も持たない、温厚温和な声音だった。私は何か言おうとしたのだが、声を発することができず、そのまま入り口に立ちすくんでいた。

「これからご遺体を引き取るのですよ。少しお邪魔いたしますね。」

私は無感動に老警官の言葉を聞き流した。ただ、入り口に突っ立っているのは邪魔だろうと、無言で墓地の中へ足を数歩踏み入れた。今にして思えば、警官が遺体を引き取るなど、おかしな話だと気づくべきだった。しかも和式の墓地から遺体を引き取るなどとは、普通では考えられない事のはずだった。その時の私は何も感じず、ただ三人の警官の動きを目で追っていた。二人の老警官が棺を運んできた。いったいどこからだろう、と初めて私の心が大きく動いた。墓地を眺めると変化があった。高い教会が建っていた。洋風の教会である。どうやら教会の中から老警官たちは棺を運んできたのだろう。棺は非常に軽く見えた。老警官たちはそれほど力を込めている様子はない。そのままワンボックスの車両に棺を載せ、再び教会へと入っていった。

そういえば若い警官はどうしたのだろう。しばらく教会を見ていると、若い警官はひとりで棺を運びながら私の方へ向かってきた。足取りが不確かである。警官はそれなりに体を鍛えているとはいえ、一人で遺体の入った棺を運ぶのは無理があると感じた。どうやら徐々に心が正常に動き始めてきたようだ。手伝うべきだろうか、と若い警官へと私は近づいていった。その時、若い警官の足元に石の階段が出現した。

若い警官は、その突如現れた下り階段から棺ごと転落した。私はハッとなり、足早に彼に近づいて行った。棺がどうなったのか、私は覚えていない。彼のもとに近寄り、尻もちをついた形の彼に声をかけた。

「大丈夫ですか、どこか打ちましたか。」

返答はなかった。ただ、苦しそうにうめき、顔を首から大きく下に曲げたまま、両手でみぞおちのあたりを抱え込んでいた。

「みぞおちを打ったのですか。具合はどうですか。」

階段から落ちてみぞおちを打つというのは、どういう事なのかよくわからなかったが、とにかく本人が苦しんでいて、うめき声しか発することができないのは確かなようだった。

「ちょっと待っていてください、さっきのお巡りさんを呼んできます。ここに居てください。」

私は彼にそう声をかけると、教会へ走って行った。

「おまわりさーん、大変です。おまわりさーん。」

私は叫びながら教会へ向かった。

「おまわりさーん、若いお巡りさんが大変です。」

その時、私の目の前にも異物が出現した。まるで教会の建物に入らせまいとしているかのように。

木製のおおきなケージだった。なぜか上下面と左右側面しか壁がなく、手前と奥の面は網すら貼られていなかった。私は立ち止まり、そのケージを迂回しようとした。左右どちらがいいのか判断が付かなかったが、とりあえず左から回りこもうとした瞬間、ケージの奥から二匹のウサギがこちらへゆっくりと歩いてきた。一方は純白、もう一方は焦げ茶色で、白い縞模様が所々見えていた。なぜウサギが、と一瞬、体の動きが止まった。更に突然、後ろから何者かの声がした。

「おい! ウサギを撫でてあげろよ!」

私は若干混乱した。いったい誰が、いや、今はそんなことを気にしている場合ではない。ウサギと謎の声を放置して私はケージを迂回し、教会の中へと入っていった。

教会に入ると、あると予想していた礼拝堂などはなく、八畳ほどの小さな部屋であった。普通ではない明らかに異質な間取りであった。宗教的な儀式に用いるのであろう装飾品などを一瞥し、老警官たちはどこに向かったかと木製の黒ずんだ壁面を見た。一つの木製の扉があり、どうやらそこに入るしかないようだった。逸る気持ちを抑えつつ扉のノブに手をかけた。

次の部屋には青黒い長いベールのような美しい布をまとった女性が膝をついて嘆き悲しんでいた。ぎょっとして嘆く先を眺めるとそれは真っ黒な布地にくるまれた人の形を連想させる何かだった。明らかに人の遺体だった。女性はその遺族なのだろう。反射的に後ずさりしながら、

「し、失礼いたしました。」と詰まり気味に声を出すだけしかできなかった。

元の部屋に逃げるように戻ると三人の正装した聖職者が二等辺三角形を形作るように真っすぐに立っていた。いったいいつの間に教会の外から戻ったのだろうか、そのような考えを薙ぎ払い、言葉をかけた。

「すみません、外の墓地で怪我人が出まして、お力をお貸し願えませんでしょうか」

三角形の手前の頂点に位置する聖職者は非常に大柄な西洋人だった。頭部に被った頭巾は非常に高くそびえたち、その高さは二メートル半ほどは有ろうかと思えた。その聖職者は、ややたどたどしい日本語で答えた。

「申し訳ありません。これより葬儀を行います。時間がありません。」

続けて、何かに気づいたように、

「怪我人ですか、それは大変です。他の人を呼びますのでここで待っていてください。」

そう言い残すと三人の聖職者は、私がさきほど飛び出した部屋に入っていった。誰かに何かを言伝したようなそぶりもなく、私は何とも言えない不安に包まれた。気持ちだけが焦る。居てもたってもいられなくなり、私は若い警官の元へ戻ろうと教会の外に出た。

外は一変していた。それどころか視点すらも異常に低くなっていた。まるで地面に倒れて首をむりやり前に曲げているようだった。目の前には鬱蒼とした草木が生い茂っていた。空は青く、太陽は眩しく、風は暖かかった。ふと、一点に目が釘付けになった。なにやらギザギザした葉の生えた植物である。この植物はなんという名だっただろうかと、ひとり呟いた。呟いたつもりになった。私は鼻をクンクンと鳴らし、その葉を食べ始めた。

 

 

 

★ほぼ完全に私が昼寝で見た夢、そのままを書き留めました。夢占いが出来る方に分析してもらいたいものです。まさかとは思いますが、お読みいただいた方がおられるとしたら、感謝しかありません。ほんとうに夢そのままなので、オチもなにもありません。つばさが膝の上に来たので、これから校正して投稿します。