最初に、犠牲となってしまった方々へ、ご冥福をお祈り申し上げます。
19時のラジオニュースで事故を知り、驚愕するとともに、そうか、という諦めに近い、どうにもやるせない気持ちになりました。
知床半島の港町は二つあり、町のイメージが全く異なります。綺麗な観光地と素朴な漁港です。時間ができれば、知床半島に長期滞在した時の話を書きますが、今回はみなさんに人気の知床クルーズについての経験談を少しだけお話しします。イルカの集団やヒグマの母子をかなり近くから観察できます。運が良ければクジラと出会えます。やり方としては、同業の船が分散してクジラやイルカを探し、発見したら無線で知らせ合ってその地点に全部の船が集合する、という方法です。今回は事故を起こした船が一隻だけで出港したとのことです。なお、私がクルーズを予約した時には、「天候により出港自体が急に取りやめになるかもしれません」と、嫌というほど念を押されました。
私はウトロと羅臼、両方の港からクルーズ船に乗りました。片方は非常に快適な船旅で、私一人だけデッキに出て海水まみれになって遊んでいました。ただ腕が疲れます。波を切る、とはとても言えず、波にドカンドカンとぶつかりながら進みますので、ポールというのかパイプというのか、それをずっと握りしめていました。危険ですので、みなさんは高速航行中にデッキに出るなどという愚かな事は絶対に避けてください。問題はもう一方でした。出港前のレクチャー後、私から航行中にデッキに出てタバコを吸うのはルール違反か否かをガイドさんに尋ねたところ、と、ここまで書いた時点でメールをクルーズ船の会社に送ったのを思い出しました。探してきます。
メールは残っていませんでした。会社のフォーム(私への転送なし)から送信したようです。続きを書きます。上記の事を尋ねると、「あんな強風と潮まみれの環境で吸えるものなら吸ってみろ」と言わんがばかリの呆れ顔をガイドさんにされ、間をおいて「ご自由にどうぞ」と半笑いで言われました。結局、下記の事もあり、デッキに出ることは止めておきました。ちなみにもう一方では、クジラ観察か何かで一旦停止した時に船長さんと一緒にタバコを吸っていました。灰皿も出てきました。吸い殻でぎゅうぎゅうになったコーヒー缶でしたが。いい感じの船長さんでした。
さて、乗員は船長の他、三名くらいのガイドさんがいました。ガイドさんは多くが夏バイトの人達でした。クルーズ自体が季節物なので、正社員を雇う余裕のない会社もあるのです。細かい点は忘れたのですが、出港前のレクチャーでのガイドさんの言動の端々から「海を舐めているな、これは経験の浅いバイトだな」と感じました。まあ、私も上記のように遊んでて、人の事は言えませんが。
絶対に忘れられない事がひとつありました。全員、救命胴衣は必ず付けます。しかもビシバシに強く強く完全に装着します。出港前に私に手渡された救命胴衣ですが、着用前に軽く点検したところ、固定するための紐が一か所、ちぎれていました。脇腹のかなり重要な紐でした。バックルは大丈夫だったとはいえ、こんな物を乗客に未点検で渡していた訳です。状況によってはその紐一本で生死が分かれます。私はその場で申し出て、救命胴衣を交換してもらいました。その際、何の謝罪の言葉もなく、反省も深刻さも感じませんでした。その夜の内に、救命胴衣使用前に不備などがないかを毎回確認するのは絶対に必要ではないのか、レクチャーでのガイドさんの言動が海を舐めすぎている(具体例を山のように書いた記憶だけがあります)、こんなことではいつか大事故に繋がりかねない、という趣旨の超長文メールを送りました。返事はありませんでした。思えばレクチャーを自らせず、素人のガイドにさせる船長にも問題が大いにありました。なお、良かった方のクルーズのレクチャーは船長が自らしていました。出港前点検も船長が早くに来てしていたと想像しています。
今回の事故を起こした会社は、昨年にも二回、事故を起こしていました。今回の出港前に同業の人から制止されたものの、その船長は、結局、出港したとのことです。近くの漁民からの「素人が救命胴衣のひもを結んでも、海中ではすぐほどけてしまうだろう」という話もありました。ましてや紐がないなんて、お話にもなりません。大変な苦労を外す時にしますけど、固くだんご結びにすることを強くお勧めします。いざとなったら入港後にガイドさんに外してもらえばいいだけですので。
最後になりますが、私が言及している会社は、今回の事故を起こした会社とは別の会社です。
★4/27朝追記 徐々に事故前の状況が明らかになってきました。朝日新聞デジタルの記事によると、事前レクチャーは昨年まで甲板員を務めていた社員が行い、同乗はせず船の出港を見送ったようです。アマチュア無線で事故を起こした船と通信した同業他社の方によると、混乱の中、「救命胴衣を着させろ」という声が聞こえたの事です。つまり、乗船前に説明、つまり事前レクチャーはしたものの、救命胴衣を着用させていなかったという事になります。なお、この季節ですので救命胴衣をしていてもすぐに引き上げられなければまず助かりません。低体温で意識を失います。しかしです、救命胴衣の不備有無のチェックはおろか、乗船前に着用させていないというのはちょっと理解に苦しみます。この報道の内容は真実なのでしょうか。まったくもって信じられません。今日の午後三時半に会社の社長がようやく記者会見を行うようです。単なるつるし上げにならない事を祈ります。マスコミ各社には良識ある質問をお願いしたいです。また、昨日の報道によると、同じ港から出航する観光船は私が訪れた直後くらいからかなり統一された安全保安管理を共同で行っており、事故を起こした会社はその共同管理に参加していなかったという事です。私が言いたいのは、事故を起こした会社だけをただ批判するのではダメだということです。二つの港のクルーズ船の関係会社にはガイドの教育、待遇なども含めて、もう一度ゼロから安全対策を見直してもらいたいという事、これが私の一番言いたい事です。丁度七時のラジオニュースが始まったので聴きます。事故を起こした会社は数か月前から事務所の無線のアンテナが壊れていた、と聞こえました。これもちょっと信じられませんが、NHKが言うのですから本当なのでしょう。度し難い。社長は制裁を受けるべきですが、繰り返しになりますが、それは記者会見でつるし上げをすることではないと思います。もっと別の形で、正当な手続きを経た行政罰、刑事罰を受けるべきだと思います。ニュースはウクライナの話に移りました。首の痛みが限界なのでここまでとします。
★★再追記 あと一時間ほどで社長の記者会見が開かれる予定ですが、まさか仮病で中止とか、どこかのだれかさんみたいなこと、しませんよね? 報道の断片を見るに、この社長は逃げられないのが判っているのに逃げている、と断定していいでしょう。余計に厳しい追及に晒されるのが判っているのになぜ逃げるのか、まったくもって理解に苦しみます。この余りに誠実さを欠いた態度は恐らく不必要なほど厳しいマスコミの態度となって現れると思います。これは長い会見になりそうですし、強引に途中で終わらせる可能性が高いと思います。質問が途切れる可能性はゼロです。六時までには無理矢理にでも終わらせるでしょうね。一般人の持つ配慮や思いやり、合理、不合理とは別の世界に生きている人なのだと思います。会見では何を語るかよりも、どのような人となりなのか、に注目したいと思います。そういえば、どこかの議員が会見中に泣いていましたね。私は、いや、誰しもが冷ややかな目でこの社長の会見を見て、ネットではまた悪趣味なパロディが蔓延るのかもしれません。何よりも犠牲者とご遺族に寄り添う姿勢がマスコミと会見を見る人々に必要だと思います。それは、この異質な社長を高圧的に弾劾することと同じではないと考えます。
★★★再々追記 一時間以上遅れて記者会見が始まりそうです。ご遺族、関係のご家族、関係者(以下、関係者と書きます)への説明会が紛糾したそうです。それはそのはずでしょう。で、ちょっと腹が立ったのは、関係者への説明に十分時間をかけたのか、という点です。「この後、記者会見が15:30からありますので・・・。」というエクスキューズを連発して、関係者への説明を早く打ち切ろうとしたのではないでしょうか。そもそも関係者への説明会のお尻を勝手に決めて、記者会見をその後に設定すること自体に誠実さが感じられません。この一点だけをとっても、この社長が一般の人とは違う感覚の持ち主である証左にならないでしょうか。既に予定時刻を70分以上過ぎています。記者会見も早く切り上げようと社長は躍起になっているのかもしれません。いま、国交省の人からお願いがマスコミにありました。過剰取材でご家族が疲弊しているので自重してもらいたい、という事でした。これは総務省だと思いますが所轄官庁から厳しくマスコミに指導しないといけないでしょう。ちょっと記者会見を見ます。
★★★★また追記 記者会見自体は80分遅れで開始されました。記者の質問は比較的冷静なものが多いのですが、気になったのは読売新聞の女性記者です。言葉に険があり、追い詰めようとする意図がはっきりした、非常に感情的なものでした。懸念していたのはまさにこれです。記者の良識が問われます。これでは読売は各社の先頭を切って、酷い関係者取材をしているのではないか、と嫌な想像をしてしまいます。最初に国交省の人と町長が言った通り、関係者への取材は自重してもらいたいし、この記者会見での言葉遣いにも注意してほしいです。社長が見られているだけではなく、取材する側の姿勢も記者会見では見られているのだ、ということを読売新聞にはもっと理解してもらいたいです。投稿は18:22頃です。