会社へ行く、とそればかり口走る英次の忘れものは、<地図>のように広がる言葉だ。殺人犯は実妹の裸体を見、嫉妬していてふいに冗舌だった。そして両人の忘れていたものは、嫉妬と冗舌だったろう。でも今は妙子がいう通り、英次を初孫みたに見守る外ないのだろう、円滑な三人の日々を望むのなら。それは妙子との間で暗黙のうちに、久しく認めあってきたことに違いなかった。互いの逃げ道も。妙子は信仰である。雄吉は今また陶芸にも凝っていた。読書にも。・・・しかし今朝の読後感は強烈。英次を同世代の犯人が告白していたシーンが、真に迫ってきた・・・。
(つづく)
(つづく)