50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

雄吉に見つめられて・・・

2014-12-10 20:49:23 | 小説
雄吉に見つめられて、食卓の角のところに立ち竦んだ。やはり何だか癪な気がして妙子は、恨めしそうに少しヒステリックに。
「それはそうだけど、英次がおなかをスカシテル姿を、ひとさまに見せたくはないわ」
と目でいって見せる。
「妙子に任す」
と雄吉は表情にするようにして紙面に沈むのだった。『試合はドロー』A選手の話・記録に感激です。期待に応えます。大リーガーでの活躍からして、記録には恵まれてますね。このまま行きたい・・・。
「英次。英次」
妙子がリュックに手をかけると追って行き、あの人は何かにつけて根に持つ人なのと知り尽くす思いを抱いている。構ってはいられない思いであり、玄関の三和土にきてやっと英次を捕まえる。
「お弁当がなくっちゃおなかすいて、おうちに帰れなくなりますよ。会社のお仕事にもさしつかえるんじゃありません」
英次の中に恐らくは根を下ろしている母のイメージを、妙子は唯一の頼りにしたのだ。三十五歳の子供、異人になってしまっている息子にはそれしか不可だろう。

(つづく)