冷蔵庫の前、その妙子もまた手持ち無沙汰な表情に突っ立ち、ようよう喉もとにつっかえていた声が雄吉の口から、英次おはようと転がった。朝の情景になんら変わるところがないけれども、悟り顔の妙子ではある。英次の軟体動物のように捕まえどころのない態度に、現在信仰を強い味方に持つ妙子だから比べればそれはそうだと、雄吉の目は卓上の粽を捕えているのだった。雄吉の頭を、男の、暗黙の了解を病む同志の鎮痛剤、という弁明がよぎる。英次の正面に腰かけて、提げてきた朝刊紙を思い出す。目の前に壁を塗るように広げる。社会面である。その写真に、五年前の英次が倒れていたので吐き気がする。プラットホーム、野次馬、血痕らしい染みを写す写真だ。不良少年のとばっちりだった英次の厄災に似る。
(つづく)
(つづく)