からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

Yumeshibai / NYAI

2021-08-11 | 小説
Yumeshibai / NYAI



Paul Simon - 50 Ways to Leave Your Lover (Official Audio)



Carpenters "We've Only Just Begun" on The Ed Sullivan Show



サンタラ I Hope That I Don't Fall In Love With You ツイキャスプレミア配信Bonfire Time!VOL.3より



(ちんちくりんNo,40)


 どうしてこういうことになってしまったんだろう。
昨日僕は"映画研究部"の部室に顔を出した。かほるは用があるとかで一緒に行かなかった。圭太と貢は暑い暑いと部屋の隅で二人して仰向けになって団扇を仰いでいた。扇風機は彼らの足下で、カタカタ音を鳴らしながら左右に首を振り、回っていた。僕は真ん中のテーブルを横に胡坐をかき、右ひじをテーブルに立てて、掌に側頭部を当て少し体を斜めにした。「明日田舎に帰るよ」
 その言葉に反応した圭太が怠そうに体を起こしてこちらを見た。「ああ、もう目鼻ついてるしな。あとはお前だけやし、俺らもお盆まで出てくるきぃせんし、何よりもてつどうてもろうとる連中に悪い。今から十六日まで休み。十七日にまたここに集合やね」僕が「わりぃ、分かったよ」と返事を返すと、「あ、かほるちゃんにも言っといてよ。電話番号知ってるんでしょ?」と貢が頭を上げた。かほるの家の電話番号は確かに聞いていた。彼女に「親が出るんじゃないか」と文句めいたことを呟いたが、電話はかほる専用のものだとかで、僕はほっとしてそのNo,を手帳に記入したのだった。
 夕方下宿の近くの公衆電話から、かほるに電話をかけると四つ半のコールで「はい、七瀬です」、彼女の裏返ったような声が受話器から僕の耳に飛び込んできた。それがあまりに普段の声との落差があって、思わず吹き出しそうになったところを、何とか抑え込んで僕は自分のことは言わずに手短に休みの件だけを伝えたのだが、「・・・じゃあ」と言いかけたところでかほるから思いもかけない言葉をかけられた。「ねえ、実家にいつ帰るの?」、何故それを?かほるの突然の問いかけに僕は言葉が詰まった。話した憶えがないからだった。でもそれを問い詰めたところで彼女のことだから「何となく思った」としか返事は返ってこないだろう。それに話したところで何があるという訳ではない。僕は問われるままに、今日が帰郷の日であること、そして新宿15:00発の特急に乗って帰ることをかほるに話したのだった。
 それが間違いであったことを僕は今、故郷へと向かう特急列車の中で痛感する。僕は遠足気分でキャッキャッとおやつの袋を開けている隣の彼女、「七瀬かほる」を見て眩暈がするような気分になっていた。
 何でこうなるのさ。





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