からくの一人遊び

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Lou Reed - Vicious (audio)

2022-07-18 | 小説
Lou Reed - Vicious (audio)



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(ちんちくりんNo,87)

 そのような推理を頭の中で繰り広げながら、同時にこのような相談を僕にして来た裕子の思惑について考えていた。裕子は気づいていたのだろうか。
 実はその時より遡ること数年前から、僕はまた小説を書き始めていた。無論僕は山梨に来てからそれまで、一行たりとも小説を書いてはいなかった。むしろこれまで話してきた通り、拒んできたといっても良かった。それが、授業を行う上での参考にしようと、大学時代の教育心理学の教科書を見つけ出すために、押し入れの中の段ボール箱を引き出したことによって、たまたま上の棚から落ちてきた一冊の稚拙な作りの本を手にしたことで変わった。その本のタイトルは「リジェネレイション」。そう、大学最後の夏に映研部の圭太、貢と共に、それとかほるをも巻き込んで作ったあの僕らの想いの詰まった本……。
 上から落ちてきたその本を手にしてまず表紙に目を遣った。―リジェネレイション。その本のタイトルを口にしてみたが、すぐには記憶が明瞭にはならなかった。そこで頁を捲ってみた。目次を飛ばして初っ端に目にしたのは「少年」というタイトル文字。その下に印刷された「神海人」とある自分の名前を見たとき、僕は、記憶の波が一気に僕の脳を呑み込まんがごとく襲い掛かる錯視に陥った。そうだ、これは〝あの頃の僕が書いた僕の少年だった頃の物語″。頁を繰って、僕はその物語をまるで懐かしい友に出会ったときのような期待と喜びで、じっくりと丁寧に読んだ。遥か少年の頃の物語には泣き、叫び、母の″呪文″に捕らわれた僕が必死にそこから抜け出そうとする姿が描き出されていた。僕は何をもってして戦ったのか。……小説。そうだ、僕は小説を書くことによりその楽しさを知り、その歓喜の鐘をもってして少なくともあの忌まわしい″呪文″に対抗できたのだ。だから小説を読み終え、後に続く圭太の映画評論や貢の社会風俗についての論考をパラパラと見ながら、考え、それに気づいたとき、僕は再び小説を書こうと誓った。「やっと気づいた馬鹿な俺」、僕は自嘲気味に独り言ちたが、一方で心の中は妙に晴れ晴れとしていた。

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