うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

18の秋に

2005年10月11日 | ことばを巡る色色
18歳の秋に読むべき本はなんだろう。18歳で、高校3年生だった時、私が読んだのは、夏目漱石、森鷗外、泉鏡花、ちょっといやいや小林秀雄。
受験生にとって、時間はかけがえのないものである。しかし、本だって読みたい!!問題を解かなくていい本は特に読みたい。しかし、そんな時間はない。そんなときこそ、夏目、鷗外などの明治の文豪の本を読みたい。明治期の文学はたぶん受験生にとって、半分古文、半分現国である。てぇことは、古文、現国両方のチューニングをすることができるという、一挙両得、棚からぼた餅的なものである。古文が苦手なのは、たいていは言葉のチューニングがあっていないからではないかと思う。古文だとて日本語なのだから、「慣れる」ことができれば、大筋の内容は読み取ることができるはずだ。しかし、古文だけをやっていても、外国語のようでなかなか理解できない。それを結んでくれるのが、明治の作品である。
比較的楽に読めるものとしては、夏目の「夢十夜」、鷗外の「舞姫」であろうか。どちらもそれほど長くないし、内容も追いやすい。「夢十夜」は、短編集で、不思議譚のような内容である。一つ一つが暗喩的で、奥深い。また、「舞姫」は、青春譚。古語調でドイツ語を話しているのが楽しいが、お話は切ないものだ。夏目も鷗外も、開国した明治日本を背負って留学した、その時期の日本の才能の先端である。彼らは、当然、子どものころから漢文の素養を育み、言文双方を使い分け、そうして、外国語で生活をするという経験をつんでいる。日本人が持ちうる最高知識の一つの典型といえる。この機に触れておかねば、人生の損失ともいえるだろう。
ちょっと、色合いのほしいときは、泉鏡花の絢爛たる文体で一休みするのもよいだろう。
夏目、鷗外の文体になれてきたら、次は江戸の華、「雨月物語」へと進む。なんとなく聞いたことのある話もあり、これも怪奇譚であるので、その怖さを読み取ったときは、ぞくぞくするような快感がある。笑いたいときは、ずっと時代をさかのぼって「宇治拾遺物語」。下ネタ満載で、愉快である。
ここまでくれば、国語はもう「やなもの」ではなくなっていると思う。

当然、18歳以上の大人の方々にもお奨めしたい。
コメント (33)
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