映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
パタゴニアの野兎 ランズマン回想録(上)
2022年02月19日 / 本
著者 クロード・ランズマン 発行所 人文書院
発行年 2016年 訳者 中原毅志 原題 Le lievre de Patagonie
パリ生まれのユダヤ人、クロード・ランズマン(1925~2018)はユダヤ人受難の名高い映画「ショア」1985の作者であり「シンドラーのリスト」1993を痛烈に批判している。「レ・タン・モデルヌ」の編集を長年つとめ、のちに編集長になる。が、私はサルトルとボーヴォワールとのかかわりで彼に興味を持っているのである。
かれは27歳から34歳まで17歳年上のボーヴォワールと「結婚」していた。「レ・マンダラン」執筆中にボーヴォワールと出会い、彼女がつけあぐねていたタイトルは彼の案に決まったそうだ。「ある戦後」にも、ランズマンの名前はしょっちゅう出てくるが、不覚にも注意していなかった。
映画「サルトルとボーヴォワール」の中で、サルトルが別人への恋に走り孤独なボーヴォワール、その彼女が集会で若者たちに熱狂的に支持されるシーンは印象的だが、あれはランズマンの存在が大きかったのだと今にして悟る。
文章は鋭くて切れ味がある。ほとんど詩を読むよう、痛いくらい胸に響く。
「『従僕にとっては英雄は存在しない』ということわざがあるが、そのわけは英雄が英雄でないからではなく、従僕が従僕だからである」という誰かの言葉が本書中に引用されているが、その意味でランズマンが描写するサルトルとボーヴォワールの微笑ましくも美しい肖像は、かれがこの二人を前にしても自由な人間であって、決して従僕ではなかったことを証明している。
→「ボーヴォワールとサルトルに狂わされた娘時代」21-1-31
→映画「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」12-11-18
→「シンドラーのリスト」22-2-1
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