マリの朗読と作詞作曲

古典や小説などの朗読と自作曲を紹介するブログです。
写真やイラストはフリー素材を拝借しています。

平家物語・扇の的

2021年11月05日 | 古典の朗読

 

扇の的(那須与一)

源氏と平家の軍勢が

陸と海とで対峙する夕暮れ時。

平家側が「射れるものなら射てみよ」と

設けた的は、

海上の小舟に立つ竿の先の扇。

それを受けて立つ射手は、

源氏軍の若武者、下野の国の那須与一。

 

与一は目を閉じ、「南八幡大菩薩・・・」と

心の中で武運の神に祈念すると、

強弓に鏑矢を番い、

ぎりぎりぎりっといっぱいに引き絞って

ひょうど放つ!!

鏑矢は波の上を鋭く唸って飛んで行き

見事扇の要際を射る。

扇は空へ舞い上がってから

海へさっとばかりに落ちて行き、

「白波の上に 漂ひ、

浮きぬ沈みぬ 揺られければ、

沖には平家、ふなばたをたたいて 感じたり。

陸には源氏、えびらをたたいて どよめきけり。」

海上の平家軍、陸に並んだ源氏軍、

いずれの側からも

やんやの大喝采が起こったのであった。

 

平家物語・扇の的

 

 

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平家物語・祇園精舎

2021年11月03日 | 古典の朗読

 

平家一門の栄枯盛衰を描いた軍記物語。

琵琶法師によって語り(平曲)継がれ、

のちに本にまとめられた。

(近世は講談にもなっている。)

 

平曲は琵琶を弾きながら語るので、

今の弾き語りライブと同じ感じで

聴衆は聴いていたのでは

と考えると、

なんだか身近に思えて楽しい。

当初は語るために作られただけあって、

言葉のリズムが心地良い。

 

 

平家物語・祇園精舎

 

 

平家物語・祇園精舎

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。

おごれる人も久しからず、唯春の世の夢のごとし。

たけき者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵に同じ。

 

 


伊勢物語・狩の使い

2021年10月24日 | 古典の朗読

 

伊勢物語 第六十九段 狩の使

 

伊勢神宮に仕える斎宮と、

職務で都からやって来た貴公子の

禁断の恋、ただ一夜の逢瀬。

次の夜、また二人だけで逢おうとしても

もはや状況がそれを許さなかった。

 

 

伊勢物語・狩の使い

 

 

 

二人は歌のやり取りに

思いの丈のすべてを込める。

「きみや来し われや行きけむ おぼおえず

 夢が現か 寝てかさめてか」

昨夜はあなたがいらっしゃったのでしょうか、

私が訪ねたのでしょうか、夢うつつでした。

 

「かきくらす 心の闇に まどひにき

夢うつつとは こよひ定めよ」

私の心も乱れて、

きのうのことは夢のようにしか思えません。

でも、夢なのか現実なのか、

今宵逢って確かめましょう。

 

 

 

だが男は

つきあいの酒宴につかまってしまい、

身動きが取れない。

明け方近く、さかづきを載せる皿に

女が密かに書いて届けた歌は、上の句のみで、

女「かちびとの 渡れど濡れぬ えにしあれば・・・」

   浅いご縁なので・・・

 

男は傍にあった松明の消え残りの炭で

下の句を書いて返した。

男「また逢坂の 関は越えなむ」

  また逢坂の関を越えて来ます、

  逢いましょう

 

そのうちに夜が明け、

男は秘かに血の涙を流しながら

次の任地の尾張へと発っていった。

 

 

   

    斎宮(さいぐう・いつきのみや)

伊勢神宮に仕えた未婚の内親王,皇女。

天皇の即位のはじめごとに一人選ばれる


伊勢物語・あずさ弓

2021年10月22日 | 古典の朗読

伊勢物語 第24段 あずさ弓

 

昔、田舎に住む男が、

宮仕えするため都へ出て行った。

残された女は1年、2年と待ち続ける。

そして3年も音信がないので耐え切れず

他の男と結婚の約束をする。

(当時の法律では、

3年間相手が不在であれば、

他の相手と再婚できた。) 

そして、まさに新枕を交わす日に、

都に行った男が帰ってくる。

 

三年ぶりに再会した男と女は、

「あずさ弓」の掛け言葉で歌のやり取りをする。

女は、「あなたをずっと思っていた」

という歌まで詠む。

が、女が他の男と結婚するところだと

知った男は、「その人を大切にね」と言って

意外にあっさり去って行く。

 

だが女の思いはその男にあったので、

追いかけるのだが追いつけず、

泉のそばに倒れ、指の血で歌を書き残すと

「そこに いたずらになりにけり」

(そこで 死んでしまった)

 

 

伊勢物語・あずさ弓

 

 

男は、三年ぎりぎりに帰ってきた。

もっとずっと前に帰って来るか、

いっそ永久に帰ってこなければ、

この悲劇は

起きなかったのではないか。

 

哀しいな・・・。

 

 

ずっと相手を放っておいた後ろめたさ、

拒まれた場合でもプライドは守りたい気持ち。

男は、あれやこれやで結果として

女に残酷な態度をとってしまった

と思うのは、

わたしだけ?

 

 


伊勢物語・芥川

2021年10月20日 | 古典の朗読

伊勢物語 第6段 芥川

 

ずっと想いを寄せていた姫君を、

男はあろうことか盗み出し、

おぶって夜道を逃げていく。

その背中で、

初めて見る草の葉の夜露に

「あれはなあに?」と無邪気に問う姫君。

 

ひどい雨と雷を避けるために

逃げ込んだあばら家の蔵には、

鬼が住んでいた・・・

 

 

伊勢物語。芥川

 

 

女を失って

悲嘆のどん底に落ちた男が詠んだ歌

「白玉か 何ぞとひとの 問いしとき

露とこたえて 消えなましものを」

あれは白玉? 一体なあに?」

と問われたときに、

「露」 とだけ答えて、

わが身も露のように

消えてしまえばよかった