「雨にも負けず」の原文は
手帳にカタカナでメモ書きしてあったもので、
賢治の死後に発見された。
ここでは、読みやすいように
ひらがなで表記した。
「ヒドリ」は「日照り」とした。
雨にも負けず(宮沢賢治)
雨にも負けず 風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫な体を持ち
欲はなく 決して瞋らず
いつも静かに笑っている
1日に玄米4合と
味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを自分を勘定に入れずに
よく見聞きし 分かり そして忘れず
野原の松の林の蔭の
小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば
行って看病してやり
西に疲れた母あれば
行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば
行って怖がらなくてもいいと言い
北に喧嘩や訴訟があれば
つまらないからやめろと言い
日照りのときは涙を流し
寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにデクノボーと呼ばれ
ほめられもせず
苦にもされず
そういうものに 私はなりたい
宮沢賢治(1896年~1933年)は
岩手県花巻市生まれの
詩人、童話作家、農村指導者、宗教者。
「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」
「春と修羅」など多数の著作があるが、
生前はほとんど無名であった。
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