父の故郷訪問記 (4)
50年前の思い出
シリーズものなので
まだの方は順に読んでね
おばあちゃん = 父の19歳上の実姉
おばあちゃんはお嫁入りの時、
白無垢で家を出て
婚家で赤い着物に着替えた。
実家を出るときには
一度死ぬという意味での白装束であり、
到着した婚家では
生まれ変わるという意味での
赤い着物だという。
大正時代中頃の
栄えていた旧家同士の婚姻である。
しかも、
長女が本家の長男に嫁ぐのである。
あの広い座敷に
大勢のお客を迎えての婚礼の宴は、
どんなに盛大であったことか。
おばあちゃん自身は、それについて
何も語らなかったけれど。
父が新潟でもらった金梨地の漆器
黒漆に金粉が散らされている美しい器。
菓子鉢だろうか。
一辺が18㎝くらいで底が狭くなっている。
黒漆の表面が鏡のようなので、
どうしてもスマホや手が
写りこんでしまう。
器の内側は赤漆。
漆器が入っていた箱の上蓋
箱の底面を返して見たら、
文化元子年9月と書いてあった。
調べてみると
文化元年は子年(ねどし)の
甲子(かっし)であった。
陰陽道では
甲子は変事の起きやすい年なので、
享和4年の2月、
文化元年に改元された。
そして文化元年は何と、
西暦1804年!
え、ほんとに?
ほんとに箱も器も
二百数十年前の物なの?!
親から受け継いで、
ごく軽い気持ちで
部屋に飾ってあるんだけれど、
箱に入れてしまっとくべきか。
迷う。
それにしても、
墨で黒々と消してある部分が
気になるなぁ。
父の故郷訪問記(5) に続く
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