形 (菊池寛)
侍大将の中村新兵衛は、
武勇で知られた士であった。
長さが三間もある大槍を持ち、
猩々緋(しょうじょうひ)の服折(はおり)と
唐冠(とうかん)の兜とを身に着け、
戦場では『槍中村』として
向かうところ敵なしであった。
そんな新兵衛はある日、
初陣に臨む主君の子に頼まれて
服折と兜とを貸す。
そして新兵衛は、いつもと違う装束で
敵陣に突っ込んでいくのだが・・・
形(菊池寛)
猩々緋 = 鮮やかな深紅色
服折 = 鎧の上に着る陣羽織
唐冠 = 唐の冠を模した兜
縅(おどし)の裏をかいて
= 鎧の胴の裏まで突き通って
菊池寛(1888年~1948年)は、
香川県松山市生まれの
小説家、劇作家、出版社の経営者。
文芸家協会を設立し、
芥川賞、直木賞の設立者でもある。
著作は「父帰る」「恩讐の彼方に」「真珠夫人」
など多数。
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