「この落馬を騎士はひどく恥じ、かつ悲しんだ。物具を身につけ、血腥い戦場で初めて槍を揮って以来、これほどの恥辱を受けたことはただの一度もなかったのだ。数ある騎士のなかでも最も気高い騎士よ、初めて落馬させられ、初めて地面に落とされたことを嘆き給うな、そなたのせいではない、目に見えぬ秘力のためだ、 草地に突き落とした槍には魔法がかかっていたのだ。」
「だが、いかなる人に打ち倒されたのか分かっていたら、一人の乙女と対等に渡り合い、これほど手痛く打ち破られたという不運によって、 さらに悲しみと恥ずかしさを新たにしたことであろう。これぞ、かの名高いブリトマートで、ヴィーナスの鏡で姿を見た恋人を尋ねて、ああ、遥かなる恋の旅路よ、ブリトンの国から、奇しき旅を重ねているのであった。」
(エドマンド・スペンサー『妖精の女王』第3巻「ブリトマートの貞節の物語」より抜粋)
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