愛媛松山は「文学のまち」などと賞されております。夏目漱石「坊ちゃん」(実は漱石先生は松山が嫌いだったとか)と正岡子規(実は俳句よりも短歌に素晴らしいものがあるとか)押しでありまして。まあ、地元原住民にそんな意識があるかは怪しいものですが。ただ、市内の小学校では長期バケーションには俳句をひねる宿題がしょっちゅう出るくらい、でありますし、俳句ポストがそこいら中に設置されています。ここしばらくのトレンドとしては司馬遼太郎の「坂之上の雲」の街づくりがおこなわれています。
日本中の地方都市では中心商店街の空洞化が叫ばれておりまして、松山中心部の「銀天街」「大街道」もかつての賑わいが影をひそめてしまっていると誰もが思っているかもしれません。人出は確かに減っております、が……………。松山の商店街は滅びることはない、という論を聞き及んだことがあります。その方の論によりますと、松山市駅(伊予鉄松山駅)から2つの商店街を通って文教地区にある愛媛大学・松山大学へ通うルートになっているからだそうです。若者が通ることによって、経済が成り立っているとか。恐らく地元衆には実感がないかもしれません。ぜひとも関係各位は人の流れを調査していただき、今後の街づくりに活かしていただきたいものです。
さて、その松山文教地区に隣接する赤十字松山病院のすぐ東、和菓子の菊屋のはす向かいに鮮やかな蒼い壁のお店が現れました。
この10月にオープンしました「和食たかなし」であります。
重厚な木材の看板というか表札というか、なにかメッセージを発しているように見えるのですが。さてどんな想いを込めているのか、店内に入りますと。
木材をふんだんに使っているレイアウトで落ち着いた店内、カウンターでは大将とスタッフがテキパキと動いております。
土曜日の午後1時くらいに4人で入店です。本日のランチメニューは2種、「アジの塩焼き・厚焼き玉子」と「カンパチの揚げ煮」となっております。お代は800円也、和気入道はカンパチをチョイスです。
オーダーを受けてから焼きに入るため、ちょいと時間をいただきます。さて、ほどなくやってきました「アジの塩焼き」でございます。
串を打って焼かれたアジは泳いでいる姿のように躍動感があります。これだけ丁寧な仕事で供された焼き物は久しぶりに見たような気がします。一見してレベルの高さが判ります。今のご時勢、魚の塩焼きをストレートに押せるお店はあまりありません。シンプルであるがゆえに食材の吟味、技術の高さが要求されます。小手先のごまかしがきかないのです。
お連れは評価はいかがなものであったか。「絶賛」レベルとのことでした。まあ、そうでしょうねえ。次回以降にいただくことにしましょう。アジ以外にはカマスなども供されるとのことです。
さて、続いて和気殿がオーダーしたカンパチが来ましたぞ。
出汁の効いたとろみアンはバランス良く絡んで、絶妙な揚げ具合のカンパチの味をぐっと引き出す感じです。レベル高いですよ。ご飯が進みますなあ。おかわり1杯はサービスとなっております。
添えられた小鉢の炊合せは瀬戸の小エビと里芋・南京です。これまた仕事が行き届いてます。写ってませんが、小松菜の和え物も供されました。自家製のお漬物、汁椀も高い水準ですよ。
たいへん美味しくいただきました。県外から来られた方も喜んでおりました。非常に地味なメニューではありますが、隙のない造り込みは瀬戸の小魚を満喫できるのであります。定食というレベルに留まるものではありませんぞ。お店の心意気を感じます。このクオリティを800円で楽しめるのであれば、コストパフォーマンスも非常に高いといえましょう。夜の部も楽しみです。
道後の端っこに位置するこじんまりとしたお店です。路面電車でアクセスできますので、松山観光の一環として加えてみてはいかがでしょうか。一応、前もって電話でご確認ください。