明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

酒のツマミ話(56)阿武町、3590万円が戻って来たって?

2022-05-24 13:14:21 | ニュース

1、最初っからの疑問

誤送金の流れだが、役場から銀行へフロッピーディスクで振込依頼を行った後に「別に」振込依頼書を印刷提出したことで、二重振込になってしまったということである。私はこの、後から印刷した振込依頼書が「どういうもの」なのか、ずっと不思議に思っていた。銀行提出の振込依頼書というからには、銀行業務に則った「ちゃんとした書式」であるはず。では正式書式である依頼書が「何故、一人の口座に全額振込む指示」という形式になっていたのか?、である。例え振込先口座が463件であろうとも10万件であろうとも、その紙に基づいて刷り込みをするわけであるから「1件ずつ操作」するはずである。つまり、合計金額ではなく「463枚の振込依頼書」が提出されなくてはおかしい。

私の想像だが、多分役場内での「入出金帳簿の補助帳記録用」に作られたデータであって(フロッピーの元データから生成か)、形式は銀行振込依頼書と同じだが「内容は合計金額で表示」された閲覧用データだったのじゃないかと思う。要するに、印刷すると「見た目は正式な振込依頼書」に見えるのだが、中身は全然使えない代物だったのである。

ここに「システム上の問題」が発生する。

つまり、印刷すると表示内容は「463件の合算」なのに、印刷すると「合計金額1件の送金依頼」になってしまうのだ。これはシステムの「重大欠陥」である。本来は、内容が合算であるから「463件ありますが印刷しますか?」などと警告メッセージが出るべきである。どうしても印刷したいのであれば、「463枚の依頼書」が印刷されるというのがシステム処理である。

あるいは合算であるから最初っから振込先名を「〇〇様、他462件」としておけば、仮に印刷しても間違いは防げる。とにかくデータベースの考え方から言えば、送金データは1件ずつの個別データ形式で保存されるべきであり、合算するなら「別形式」で帳簿に載せるべきというのがコンピュータの大原則である。まま入出金記録として帳簿を印刷する可能性も考えるなら、データは1件ずつ実際の送金額通りに持っていて、帳簿には「送金連番、代表送金先・件数と合計金額」を計算して表示するのがベストである。これなら合算の金額と1番目送金先を「「正式依頼書の形式」で印刷してしまう、というミスは「絶対に」起きない。システムというのは、こういう「あらゆる場合を想定して」間違いが起きないように念には念を入れて作るものの筈だ。印刷する必要が「ないのに」印刷が出来てしまうなどという「曖昧なシチュエーション」を、操作者に注意喚起すらせずに「何の疑問もなく」印刷してしまうシステムということに、今回の問題の「全ての失敗の原因」があると私は思っている。

この事件が発覚してからというもの、ずっとこのニュースを見続けているが「いまだにこの問題を追及しているマスコミが無い」ということに、日本のデジタル化の深刻な遅れをひしひしと感じている。

2、全部返したからって罪は同じ
容疑者は最初っから「キープ」するつもりだったことが明るみに出たわけだ。事件が発覚した頃に流れた情報では、「お金はもう無い、罪には服します」だった。いかにも罪をあっさり認めていて「改心してる」みたいだし、本当は悪いやつじゃなくて「出来心」でやっちゃった哀れな奴なんだ、と思わせたわけだ。だが容疑者の周到な立ち回りからは、とうとう「悪の本性」が出たというところか。私はこの際、この容疑者の手口を「仔細に渡って解説」するようなワイドショーが、「出てこない」ことを祈るだけである。ワイドショー的には視聴率を稼げるので是非やりたいと思っているだろうが、こういう情報を掘り下げれば掘り下げるほど、参考にする「悪いやつ」が増えてくる。話題として取りあげるなら、後手後手で不始末をしでかした「システム納入業者」の失敗を取りあげるべきであろう。誤送金の金を追いかけるのは「役場と町民それに警察」にお任せして、全国の銀行と経理担当者の疑問にまず「正しく答えるべき」である。

3、誤送金した金は誰のもの?

いつも思っていることだが、「間違えて送金してしまった」お金については、一定の時間内(例えば1日)であれば「間違いを戻せる」風にはならないもんだろうか。口座の残高に関する所有権はもちろん「口座名義人」なわけであるが、今回町役場の担当者が田口容疑者の家に行った段階では、まだ田口容疑者は「誤送金の事実」を知らなかったらしいのだ。そんなら家になど行って「お願い」なんかするのではなく、「振込元」の最高責任者の町長が、振込依頼先の銀行の最高責任者の頭取に「直接電話して」、口座を送金前の状態に戻してもらうよう「お願い」するべきだと、私は思う。何がどうであったとしても、この時点で新人担当者のミスは「何やってんだ、馬鹿!」の一言で済んでいたはずである、その意味で、「町長の責任」は重いと言わなければならない。なお、口座名義人が(入金された金額を誤入金と知らずに)自分の負債の返済に充当していた場合は、仕方ないので裁判とかの差押え処理をするしかないだろう。いずれにしても「出来るだけ早い」処理が必要なのは間違いない。ここについての「法整備」は、世の中の「経理担当者全員の切なる願い」だと思っている。すぐに返金が出来ないにしても、銀行内の別口座に移しておくぐらいの「緊急避難的処理」の抜け道は、経理担当者のストレスを軽減してあげるためにも、残しておいてあげるのが温情というものであろう。


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