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日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

監査役設置会社を廃止する際には

2024-07-03 10:17:34 | 商業法人登記

監査役を置くのをやめる場合には、定款変更をして「監査役設置会社の定めの廃止」の手続きをする必要があるのですが、その際に「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の登記がされている場合には、そちらも併せて廃止の登記をする必要があります。監査役設置会社の定めの廃止をすれば自動的に抹消されるわけではありません。

うっかり忘れそうだったので、備忘録として記載しておきます。

なお平成27年5月1日以降最初の監査役の退任の登記である場合には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨の登記及び廃止の登記をする必要はなく、当該監査役の退任登記だけをすればよし。


株主リストに記載する株主

2023-12-13 10:51:36 | 商業法人登記

平成28年10月1日より、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合又は登記すべき事項について株主全員の同意が必要な時は、「株主リスト」が添付書面として必要書類になりました。

7年以上経過しているので、実務でも浸透し当たり前のようになったと思います。

株主リストに記載するのは、①議決権数の上位10名の株主、②議決権割合が3分の2に達するまでの株主、①と②でいずれか少ない方の株主について記載したものが必要です。

自己株式のように議決権を行使できない株式を有する株主は記載しませんが、当該株主総会に欠席または議決権を行使しなかった株主は記載する必要があります。私は勘違いをして、株主総会で議決権を行使した株主のみを記載して提出したので、見事に補正となりました(議決権を行使した株主のみの記載でも、要件を満たしていれば補正にならなかったと思いますが)。

なお遺産分割協議前の株主の株式がある場合には、相続人全員の住所及び氏名を記載する必要がありますが、株主としては相続人全員ではなく、被相続人の人数でカウントします。

遺産分割前の株式の議決権の行使 - 司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上 (goo.ne.jp)

自己株式がある場合の株主総会議事録の記載方法及び株主リストの作成方法 - 司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上 (goo.ne.jp)


株主総会の普通決議の定足数

2023-12-12 10:48:32 | 商業法人登記

株主総会の決議は、法令または定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成により成立します(会社法309条1項)。

株主総会の普通決議の定足数は、定款の定めにより変更可能です。法定の定足数の定めを排除し、「出席した株主の議決権の過半数の賛成により決議が成立する。」と定めることも問題ありません。

ただし取締役、会計参与、監査役といった役員を選任または解任する株主総会の決議は、上記のように定足数を完全に排除することは出来ず「定足数は、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満とすることはできない(会社法341条)」とされています。役員の選任に関しては、定足数は「議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上が出席し」と定めるのがギリギリのラインだと思います。

なお、特例有限会社についても同様です。

 


死亡を証する書面

2023-09-11 10:31:42 | 商業法人登記

会社法人等の役員が死亡した場合には、死亡による退任登記が必要です。

その際に「死亡を証する書面」が必要になるのですが、具体的には次の書面が該当します。

①死亡の記載のある戸籍謄本等

②死亡診断書(写しのみは不可、原本還付は可能)

③家族が会社宛てに提出した死亡届

いつも戸籍謄本等を提出することが多いのですが、死亡した役員の相続登記にも関与しており、戸籍謄本で死亡の日付は確認済みだったので、今回初めて③の「家族が会社宛てに提出した死亡届」を死亡を証する書面として提出しました。その死亡届を作成した家族の人の肩書には、死亡した人との続柄(長男など)を記載する必要があります。些細なことですが、記載しないと補正の対象になるのでご注意を。

 


株式の譲渡制限に関する規定がない?

2023-09-08 10:16:09 | 商業法人登記

とある株式会社の役員変更登記手続きを2年前から関与させていただいているのですが、「株式の譲渡制限に関する規定」が設定されていませんでした。典型的な家族経営の会社なのですが、なぜ設定していないのか深く考えたことはありませんでした。「株式の譲渡制限に関する規定」がないと、役員の任期を延長することは出来ないですし、取締役会設置会社を廃止することは出来ないので3名以上の取締役を置く必要があります。今期の取締役の改選をするにあたり、3名いた取締役のうち1名が死亡してしまったので補充してもらう必要がありました。しかし名前だけ取締役になってもらうのも実際の経営環境と合っていませんでしたので、この度定款変更をして、会社の実態と合わせることにしました。そこでまずは「株式の譲渡制限に関する規定」を設定する必要がありました。それにあたり色々調べていくと、昭和41年以前の商法では、株式会社について株式の譲渡制限が認められていなかったようです。商法は明治32年に制定されたものですが、昭和25年の改正で今まで認められていた株式会社の株式の譲渡制限が禁止されるようになり、その理由には、有限会社法が制定されたことなどがあるようです。

今回の会社の登記内容を確認すると、会社成立年月日が昭和36年でした。まさに昭和25年以降41年以前に設立された株式会社に当てはまりますから、定款変更することもなく今に至ったものと思われます。このような事例には初めて遭遇しましたが、まだまだ同じような会社が存在するのかもしれません。