司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

不動産取引の意思能力に関する裁判例

2021-10-13 16:50:55 | 研修会

令和3年10月9日(土)、日司連の「不動産取引の意思能力に関する裁判例」というテーマの研修会にZOOMで参加しました。

不動産登記手続きにおいて、本人の意思能力が微妙なケースに遭遇することは時々あるでしょう。司法書士の頭を悩ます事案の一つだと思います。

そのようなケースにおいて、裁判例を踏まえながら、不動産取引においての本人の意思能力をどのように確認すればリスクを軽減できるかなど、今後の実務においてとても参考になる内容でした。

登記の意思能力の有無の判断基準を簡単にまとめておこうと思います。

①その登記手続きの内容が、本人にとって必要性や合理性があるのかどうかを検討する。

本人にとって必要性や合理性が高い登記事務であればさほど高い能力を要するものではないが、贈与契約のような無償契約の場合、必要性や合理性がないにもかかわらず、なぜ登記するのかという説明が可能な能力を要すると思われる。

講師の弁護士の先生は、「本人が、はい(YES)だけで答えられる質問のみでは意思確認としては不十分」との見解でした。なぜ贈与や売買をするのか理由を尋ね、その中で何か少し否定をするような質問をしてみて、否定(NO)したら、意思確認があったと判断していいのではないかということでした。なるほど、参考になりますね。

②本人にとっての理解の容易性・複雑性を検討する。

登記の内容が所有権を取得である場合、本人にとって高い能力を要するものではない。しかし、本人が所有権を喪失したり、本人に高い負担が課せられるような内容では、非常に高い能力を要すると考えられる。

③本人の意思能力に関するテスト結果

長谷川式簡易スケールの点数がある場合、単純な登記であればおおよそ10点以上であることが意思能力ありとする目安となるが、複雑な登記であれば20点以上であることが意思能力ありとする目安となるのではないかと思われる。長谷川式簡易スケールは認知症の場合に使用するものなので、精神障害や知的障害のケースでは使えない。

裁判例の資料もたくさんあったので、またの機会に読んでおこうと思います。

 

 

 

 

 


半血兄弟の相続分

2021-10-01 09:49:47 | 相続

先日異母兄弟の相続を受任した際に、相続分について少し知識が曖昧になっていたところがあったので整理してみようと思います。

民法900条4号に「子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人ある時は、各自の相続分は相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。」とあります。

以前は、この規定に「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とする」という文言がありましたが、平成25年の改正で削除されました。改正前は非嫡出子は嫡出子の相続分の2分の1でしたが、改正後は平等になったわけです。

問題は民法900条4号の但し書きの部分ですが、これが適用されるのは「被相続人の兄弟姉妹が相続人となる」場合です。

今回受任したケースは、被相続人は父親で相続人の子供が異母兄弟になるため、子供の相続分は平等になります。

2分の1を適用するのはどのケースだったか曖昧でしたが、スッキリしました。