司法書士伊藤弥生の好好学習天天向上

日々の司法書士業務に関してあれこれ備忘録など。

公正証書遺言の変更

2022-03-30 11:34:51 | 遺言

以前作成した遺言書の内容を作り直すことは可能です。

数年前に公正証書遺言を当事務所において関与させていただいた方が、内容を変更したいという依頼がありました。変更したい箇所は、前回記載した「付言事項」の記載を削除するだけでした。公証人の先生に相談したところ、このケースは撤回するよりも変更の方が、費用も安く済むし書類を改めて揃える必要もないのでいいのではないかというアドバイスをいただき、本人の意向を確認したところ、撤回ではなく変更でお願いしたいということでしたので、今回は変更で進めることにしました。

撤回の場合は改めて作成することになるので、一から書類を集める必要がありますが、変更の場合は、本人の印鑑証明書と身分証明書だけで済みました。ただし、証人2名が必要なことに変わりはありません。

内容が大きく変わるのでなければ、撤回するより変更した方が良さそうです。

撤回の場合も同じだと思いますが、変更の場合も「遺言者は、平成〇年〇月〇日〇〇地方法務局所属公証人〇〇作成平成〇年第〇〇号遺言公正証書による遺言(以下「原遺言」という。)の一部を次のように変更する。変更しないその余の部分は、すべて原遺言公正証書記載のとおりである」という一文は入れておいた方がいいでしょう(公正証書の場合には、公証人の方で入れてくれると思いますが)。

 


40年前の書類を使って相続登記

2022-03-07 10:36:15 | 不動産登記

「昔相続登記をしたが、一部相続をしていない不動産を発見したのでその手続きのお願いをしたい」という依頼はたまにあることだと思います。

今回もそのような依頼で、相続をしていなかった不動産とは、数年前に何かの手続きの際に測量士に指摘を受けて初めて気が付いたとのこと。その不動産は本人の居住している場所とは少し離れたところにあり、現況道路で(台帳も公衆用道路)市役所の課税も非課税になっているため、本人は所有している認識はなく、指摘を受けて初めて気が付いたようです。後から一部相続登記の漏れがあったというのは、このように役所で非課税扱いになっている不動産のケースが多いように思います。

相続人の調査をしたところ、比較的若くして他界した人も何人かおり、2次、3次の数次相続が発生しているところもありました。元々の相続関係も複雑で、会ったことのない知らない相続人も何人かいる状態でした。そこで、昔相続登記を行った際の書類を探していただきました。数年前の登記であれば残っているケースが多いと思いますが、このケースは被相続人が死亡したのは昭和45年だったので、残っているかわかりません。正直あまり期待はしていなかったのですが、比較的奇麗で、内容も判別できる状態で残っていたので、それを使って登記申請をしたところ無事登記は完了し、ホッとしたところです。

ちなみに遺産分割協議ではなく、特別受益証明書を使って登記をしていました(昔はこのように手続きをすることも多くあったようですね)。特別受益の証明書の記載日は、昭和57年から58年の間だったので、相続開始から12年近く経過してから登記手続きをしたようです。

たとえ大昔の相続書類でも無効になることはなく、内容が判別できる限り登記手続きに使用は可能です。今回は登記原因証明情報として、当時相続登記の手続きを行った司法書士の相続関係説明図を使用、相続する人の戸籍謄本及び住民票のみ最新のものを使用、特別受益証明書及び印鑑証明書、その他戸籍謄本は当時のものを全て使用しました。

 

 


売主が準禁治産者(被保佐人)

2022-03-01 13:58:23 | 不動産登記

先日過去の書類を整理していたところ、少し変わった手続きがありましたのでこちらに書き残しておこうと思います。

5年程前のものですが、売主が準禁治産者という土地売買(居住用ではない)がありました。

平成12年4月1日から成年後見制度が施行されたことにより、施行前に「禁治産者」「準禁治産者」を受けている人は、それぞれ「成年被後見人」「被保佐人」とみなされ、施行後においても宣告を受けた旨の戸籍の記載や後見人の権限は有効なものであるため、それらの証明には戸籍謄本を使用することが可能です。戸籍謄本の記載をやめたい場合には、戸籍の記載を後見登記等ファイルに移す「移行の登記」を申請することが出来ます。ただし、心神耗弱以外を原因とする準禁治産宣告の場合には移行は出来ないのです。準禁治産者の時代には、心神耗弱の他に「浪費」が原因の場合にも認められていました。現在の成年後見制度では浪費を理由とする保佐人の申立ては認められていませんから、それに合わせたものだと思います。

結局移行の登記はせず、準禁治産宣告の記載のある戸籍謄本を使用し、保佐人の同意書(保佐人の印鑑証明書付)を添付して登記手続きをしました。被保佐人ご本人は、準禁治産宣告を受けているのが不思議なくらいしっかりしたいた記憶があります。