うちでは、夫婦の間で、ひそかに、
一人息子のことを、「王子」と呼んでいる。
「今日の王子は、ご機嫌悪かったですね」
「今日は、王子は外でご飯食べてらっしゃるんですってよ」
ふざけて私たちは息子の行動を揶揄して言う。
別に見目麗しいわけじゃない。神々しい気品があるわけじゃない。
単に、ふてぶてしい感じの嫌な「威厳」があるからだ。
小さいときからだが、何をしてやっても、憮然と「くるしゅうない」的な表情で奉仕を受けるからだ。
「なんかさ、あのひと、えっらそうにしてるよねぇ?」
私は時折、たまらなくなって夫にこぼしたものだ。
そんな王子。
高校の時の三者面談で、自分とたいして年齢の変わらない女性教師を前に、息子をチラ見して、
うわ、と思った。産毛的なものと、剛毛といっていいけれどまばらな髯がところどころ、かなり
長く生えていて、ニキビもある顔でなお一層汚らしかったのだ。
ねぇ働いてるからって、お母さん、手を抜きすぎなんじゃないですか?
と、その女性教師に言われている気がして、居心地が悪かった。
ま、勝手な想像ではあるが。
夫は早速カミソリやひげ剃りのためのあれこれを買い与え、レクチャーもしたようだが、
王子は「みてくれ」は人物の評価基準にすべきでないとの考えかたのようで
あまりせっせと髭剃りしている様子ではなかった。
洗顔すら怪しい。王子は私が洗顔してくれるとでも思っているのだろうか。
高校のうちはそんな日々だったが、
大学生になってちょっとは気を遣うようになったものだなと思っていた。
が。
今日、発覚。うっかり息子が使用中の洗面所へ入って見てしまったのだ。
王子は私がスパなどでもらってきたT字カミソリを使っていた!!
なんか細かい産毛でみっしりと刃の間が埋まっていると思ったら。
お前か!!!
「だって、あの(男性用の)カミソリ、全然剃れないんだもん」
洗ってよ!と言うべきか、使わないでよ!というべきか。
王子へ渡したカミソリは3本一セットで売られていたもので
要は使い捨てなのだろうが、そのことが分からなかったということだろう。
実はそのカミソリ、姑とこが買ってきたもので、夫は「男性用のカミソリをなぜ?」と思ったらしい。
昨年の9月のことだ。(ああ、すっごく以前のことのように思う。)
なにやら、神戸の親戚へ、プレゼントしたかったようだ。
同年代の女性へはかわいらしいハンカチを、その息子さんへは剃刀を。
夫は黙って却下し、神戸の親戚へは別のものを送った。
でもそのカミソリ、なりはごつくて立派だが、替え刃式でもなく、王子の使用感は「剃れない」だったので
たぶん、夫の見立てどおり、差し上げないのが正解だったのだろう。
女性にとっては髭剃り用の剃刀なんて、勝手がわからないからね。
王子にとっては、もらってきたスパの使い捨てT字カミソリの勝ちってわけだ。
王子よ。困っていたら、言えよ。
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