タケ・タケ・エヴリバディ!

当ブログは「竹林や自然と共に生きる」をメインテーマに、管理人の田舎暮らしの様子をお届けします。

家族解散まで千キロメートル

2024年12月20日 | 読みました!見ました!

浅倉秋成さんの「家族解散まで千キロメートル(角川書店)」を読了しました。いつものことながら、どこかで(おそらく新潟日報)書評を読んで「面白そう!」って思って図書館で予約をしようやく順番が回ってきて本を手にしたものの、「書評に何が書かれていたのか?」「どこに惹かれてこの本を予約したのか?」をまったく思い出せないでの読書でした。

まずは、「あらすじ」を紹介しますね。amazonからのコピペです。


〈家族の嘘〉が暴かれる時、本当の人生が始まる。どんでん返し家族ミステリ

実家に暮らす29歳の喜佐周(きさ・めぐる)。古びた実家を取り壊して、両親は住みやすいマンションへ転居、姉は結婚し、周は独立することに。引っ越し3日前、いつも通りいない父を除いた家族全員で片づけをしていたところ、不審な箱が見つかる。中にはニュースで流れた【青森の神社から盗まれたご神体】にそっくりのものが。「いっつも親父のせいでこういう馬鹿なことが起こるんだ!」理由は不明だが、父が神社から持ってきてしまったらしい。返却して許しを請うため、ご神体を車に乗せて青森へ出発する一同。しかし道中、周はいくつかの違和感に気づく。なぜ父はご神体など持ち帰ったのか。そもそも父は本当に犯人なのか――?


いやぁ〜面白かった!途中までは緊張感のある中で普通に面白い小説だと思っていたけど、最終的には「家族ってやつがどれだけ歪な常識の上に成り立っているのか」を考えさせられました。ストーリーの中心である「ご神体を神社に返す」っていうミッションが既に遂行されているのに、小説の残ページはまだたっぷり残っているんですからね。「この先、どうなるの?」って思いましたよ。実はそこからが、この小説の真骨頂でした。

この小説に限らず、ストーリーに伏線が張り巡らされていて、それが次々に回収されていくって面白いですね。最近ボクが夢中になる小説って、だいたいこのパターンのような気がします。この本も、事件は本の半分くらいで解決したように見えて、「この先は?」と思って読み進めるとまたひっくり返る。家族とは?常識とは?と考えさせ続けられる小説でした。浅倉秋成さんの小説を読むのは初めてでしたが、「また読んでみたいな…」と思いました。

さて、話は変わりますが、またgooのスタッフさんがこのブログを紹介してくださったみたいで、ここ数日のアクセス数が急増しています。

今回紹介していただいたのは「アオーレのイルミネーション」の記事です。まぁ、またすぐに元の3桁PVに戻るってことはわかっているんですが、それでも嬉しいですね。

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目の見えない白鳥さんとアートを見にいく(書籍)

2024年12月14日 | 読みました!見ました!

ノンフィクション作家・川内有緒(かわうちありお)さんの「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」(集英社インターナショナル)を読了しました。

「あれ?どこかで見たことのある題名だな?」って感じた方、すばらしいです。先月にボクが近代美術館で行われた映写会で見てきた、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」の原作となったのが、この本なのですよ。

 

目の見えない白鳥さん、アートを見にいく(映画) - タケ・タケ・エヴリバディ!

県立近代美術館(長岡市千秋)で行われた映画会で、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」を観てきました。この映画は、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと友人た...

goo blog

 

題名が微妙に違うのは、きっと映画と書籍それぞれの作者に、確固たる意図があるのでしょうね。まずはamazonの書籍紹介から、この本のPR文を引用しますね。


「2022年 Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」受賞! 書店員が選ぶ、いちばん読んでほしいノンフィクションに。発売直後から、数々の反響、すばらしい感想が寄せられた本書です。

「目の見えない人とアートを見る?」タイトルへの素朴な疑問は、驚きとともに解消されます。白鳥建二さんと現代アートや仏像を鑑賞すると、現れるのはこれまで見えていなかった世界。

「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」という著者の友人マイティの一言で、「全盲の美術鑑賞者」とアートを巡るユニークな旅は始まりました。視覚の不思議、アートの意味、生きること、障害を持つこと……などが白鳥さんや友人たちとの会話から浮かび上がってきます。そこに白鳥さんの人生、美術鑑賞をする理由などが織り込まれて…。

軽やかで明るい筆致の文章で、美術館巡りの追体験を楽しみながら、社会を考え、人間を考え、自分自身を見つめ直すことができる、まったく新しいノンフィクションです。


本を読み進めるうちに、「目が見えない人と一緒に美術館で絵を見るってどういうこと?」という疑問が解消し、「これは目の見えない白鳥さんのため」ではなく、「一緒に行く人(健常者)が楽しみむとともに感性を磨く」ってことに大きな意味があるのだ…と、新しい価値観に改めて気づかされました。映画を見た時には、白鳥さんのキャラクターに興味が向き、あまりこのことには考えが及ばなかったので新鮮でした。

ノーマライゼーションに関わる部分も多く散らばりつつ、全体として「芸術鑑賞友達ができていろんなとこ見に行ったよ!」的なノリで追体験できる内容は、とても読みやすく明るい気分にさせられました。中でもボクの心に刺さった部分を、2箇所ほど抜き出しますね。

●「見えるひと」が、「見えないひと」と一緒に作品鑑賞をすると、自分の思い込みや勘違いにたびたび気づかされる。普段、目が見える人々は、膨大な視覚情報にさらされながら生活してるのだが、細かい情報をすべて脳内処理することは不可能なので、目は必要な場所に注目し、必要な情報だけを取捨選択する。同時に必要のないものは視覚に入っても脳内で処理されない。(P118)

●この社会におけるできごとのすべてには異なる視座があり、異なる「正義」がある。経済のため、社会のため、効率のため、会社のため、国家のため。わたしには筆舌に尽くしがたいほど理不尽に感じる福島の原発事故にも、誰かの「正義」がある。どんなに人が苦しんでいても、「それでも原発は必要だ」と固く信じて主張し続ける人もいる。長崎・広島への原爆投下もシリア内戦も、視座が変われば誰かの「正義」がそこにある。そういった「正義」と「正義」はぶつかり合って、砕け散って、その破片はときになんの関係のないひとまで傷つけてしまう。だからもしかしたら、ひとつの正義を信じる自分もまた誰かにとって非道な刃になってるかもしれなかった。「悲劇」を後世に伝えるだけでなく、その多面性、複雑さを理解しながら、一歩ずつ先に進んでいかないといけない。白鳥さんが言わんとすることはそういうことなのではないだろうか。(P113)

う〜ん!なんか人生というか、人間としての生き方についても考えさせられました。いい本にめぐり逢いました。

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定年物語(新井素子)

2024年12月11日 | 読みました!見ました!

新井素子さんの自伝的小説「定年物語」(中央公論新社)を読了しました。新井素子さんの小説を読むのはボクにとって初めての経験でしたが、同世代の作家ということもあり親しみを感じるとともに、1つの文章が短く簡潔でとても読みやすかったです。500ページ近くある長編小説でしたが、抵抗なく最後までサクサクと読むことができました。

作者の新井素子さんに関しては、ボクは「どこかで名前は聞いたことがあったよなぁ…」程度しか知らず、自伝的な私小説として「結婚物語」とか「新婚物語」とか「銀婚式物語」なんていう夫婦モノの小説も書いていたことも初めて知りました。今回読んだのは、そのシリーズの中の初老編である「定年物語」です。

主人公は現在62歳の正彦さんと陽子さんの夫婦です。正彦さんが定年を迎え、さてこれからは、一緒に旅行を……と期待していた2人。しかし、折しも世の中はコロナで自粛中。そんな中で、新たなフェーズに入った2人の生活は?俳句、骨董と、趣味の道をきわめる正彦さんと、QRコードやスマホに苦しめられたり、日々のちょっとした生活の変化を楽しんだりする陽子さんの日常を綴る物語です。何よりも2人の感じ方や価値観に、ボク自身も共感しながら気楽に読めたというのがヨカッタですね。いやぁ〜おもしろかった!

で、今「新井素子」と「定年物語」をネットで検索していろいろ情報を得たのですが、ボクはさっき新井素子さんのことを「どこかで名前を聞いたことがあったよなぁ…」なんて書きましたが、訂正します。ボクは彼女のことを知っていました。それどころか今から40年以上前に、「とんでもない女子大生がいる!」ってビックリしていたことを思い出しました。

当時、ボクが好んでよく読んでいた漫画の作者に「吾妻ひでお」という漫画家がいました。「ふたりと5人」とか「やけくそ天使」とか、ちょっとエッチで不条理系の漫画を描いていた人だと記憶しています。後にアルコール依存症や自殺未遂なども起こし、それをネタに描いた「不条理日誌」なんていう作品もボクは読んでいました。

その”吾妻ひでお”氏と、この”新井素子”さんが、なんと40年前に共著でこんな本を出していたのです。

「ひでおと素子の愛の交換日記」です。この本の執筆時、新井素子さんは20歳前後の女子大生。ボクは20代の頃に、間違いなくこの本を書店で立ち読みしていました。今、その記憶が蘇りました(本に何が書いてあったかは蘇りませんが)。いやぁ〜あの時代に女子大生だった新井素子が、自伝的小説の「定年物語」かぁ。時間は確実に流れているなぁ。ますます感慨深いです。

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もうじきたべられるぼく(はせがわゆうじ)

2024年12月06日 | 読みました!見ました!

まずは、女優で歌手の中山美穂さんの急逝の報道を受け、驚いています。ボクらよりも一回り下の世代ですが、ドラマや歌でその溌剌と活躍している姿に胸をトキメカせておりました。死因はヒートショックの可能性が大きいとか?ボクらも気をつけなくてはなりませんね。

さて、わが家ではウィークデーの毎日夕方の2時間、保育園帰りの5歳の孫(娘の子:年中の男児)を世話をしています。このブログでも「孫とのかかわり」については、時々記事にしてきました。まぁボクよりも妻のほうが、この「孫育て」については中心的に行っており、いろいろ気合も入っています。「子育て」時代に「もっとこうすればよかった」って思っていたことを、「孫育て」に活かそうとしているみたいです。

その妻が新聞広告を見て、「この絵本は絶対に(孫に)読ませたいわ」ってことで、ネット注文をした本がわが家に届きました。

「もうじきたべられるぼく」(中央公論社)。作者は”はせがわゆうじ”さんです。amazonの紹介文にはこんな記述がされていました。


「うんめい」を受け入れた子牛の「ぼく」が、さいごにしたかったこととは――
静かで優しく、切ないけれど愛に満ちた物語。
読み終えたとき、きっと、あなたの「いただきます」が、変わります。
老若男女、全国各地から大反響!


もうすぐ屠殺されることがわかっているかわいい子牛が、食べられる前に故郷の母にひと目会おうと帰省するお話です。そこで彼が見たものは…? とった行動は…? 母牛は…? いやぁ〜切ないなぁ。ジジイは涙腺が緩くなって困ります。妻は号泣しておりましたよ。

ですが、肝心の5歳の孫は「へぇ〜?」「そうなんだ…」って感じ。まだちょっと難しかったかな?


さて、昨日のブログで「アクセス数14,000PV」にビックリしたことを記事にしましたが、なんとまぁ、今日は「21,000PV」に増加していました。2日連続のビックリポンです。

しかも、ブログランキングも30万ものブログの中で9位とな?

「ぼうしパン」の記事も8位にランクアップ。

あっはっは、すごいね。こんなこともあるんだなぁ…と驚いています。まぁ、それも今日まででしょう。また明日は、きっと「200PV」とかに戻るんでしょうね(笑)。

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カラフル(阿部暁子)

2024年12月03日 | 読みました!見ました!

阿部暁子さんの「カラフル」(集英社)を読了しました。数か月前に新潟日報の書評に紹介されていた本を図書館に予約し、ようやく順番が回ってきた本でした。だけど順番が回ってきた頃には、書評に書かれていた内容やどこに惹かれたのかはすっかり忘れているという、いつものボクのパターンでした。

この小説のあらすじは、こんな感じです。


高校入学式の朝、駅のホームでひったくり犯を捕まえた荒谷伊澄は、犯人を足止めしようとした車いすユーザーの少女、渡辺六花(りっか)と出会う。伊澄と同じ高校の新入生で、弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じて...?夢を追い続けられなくなった少年と少女の再生と恋の物語。


…とまぁこんな感じ。高校生が主人公のガチガチの青春小説であり、恋愛小説。還暦を超えたジジイのボクは、遥か半世紀前の自身の高校1年生の頃を思い出しながら(ボクは男子クラスだったけどね)、読み進めましたよ。だけど、小説はいいですね。66歳のボクも、小説を読みながら想像の世界では16歳になれるんですからね。正直に言います。面白かったです。夢中になりました。一気に読んじゃいましたよ。あぁ!青春だ!カルピスだ!初恋の味!

この物語は、病気が原因で車椅子ユーザーとなった渡辺六花(りっか)と高校の入学式の登校の時に出会った荒谷伊澄(いずみ)の2人を中心とした青春小説です。高校生の学校生活に車椅子の生徒が混ざることによって起きる様々な出来事、戸惑いながらも真剣に向き合おうとする仲間たちの姿が、心地よく描かれています。何かよかったねぇ。みんな!頑張れ!って言いたくなりましたよ。

本文の中のいろいろな言葉も、ボクの心に残りました。そして心地よい読後感へと誘ってくれました。「神様は扉を閉める時、別のどこかで窓を開けてくださる」良い言葉ですね。ボクが中学生の時に、高校生だった姉が「サウンド・オブ・ミュージック」の映画を見て感動し、サントラ盤レコードをよく聴いていたのを思い出しました。その中の言葉だったそうです。うんうん、思い出してきた。

そうそう。本の題名の「カラフル」ですが、小説の中にこんな表現がありました。


この世界はカラフルだ。気が遠くなるほど色んな人がいて、誰もがそれぞれの事情と思惑を抱えて生きている。同じものはひとつとしてない。その中で自分と似た色を見つけて安心することも、まるで違う色に惹かれることもある。どこまでいっても交わることのない違いに孤独になることも、傷つくことも、違うということを認められず攻撃し合い、ぐちゃぐちゃの暗黒の色をあたりに塗りつけてしまうことも。


いろんな色が混じり合ったこの世界を生きていくには、一生懸命に考えて、話し合って、相手のことを考えて、でも自分の気持も大切にしていくことが大切なんだよな。「あぁ!もう一度16歳に戻って、人生をやり直したい!」って一瞬思いましたが、やっぱり面倒くさいな。残りの今の人生を、ジジイなりに精一杯生きようと思いました。

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