Q250 「仕事を休みます。」とだけ連絡してきて,勝手に何日も休んで周りに迷惑をかけている社員がいます。懲戒処分か解雇をしたいのですが,何に注意すればよろしいでしょうか?
何年も勤務を続けている社員の場合,年次有給休暇(労基法39条)が何日もたまっていることがあります。
何日も欠勤したことを理由として懲戒処分や解雇をしたところ,年次有給休暇取得の申請をしたのだから,欠勤日数は大した日数ではなく,懲戒事由や解雇事由には当たらない,仮に懲戒事由や解雇事由に該当するとしてもこの程度の欠勤日数で懲戒処分に処したり解雇したりするのは懲戒権,解雇権の濫用であるといった主張がなされるリスクが残ることになります。
もちろん,所定の用紙を用いて年次有給休暇取得を申請するルールになっているにもかかわらず,単に「休みます。」と連絡しただけでは年次有給休暇取得を請求したとはいえないと解釈すべきという主張にももっともな理由があるところです。
しかし,会社の中には,風邪などで欠勤した場合に,年次有給休暇を使ったことにして欠勤扱いせず,欠勤控除しないのが慣行となっている会社も数多くあるところです。
そのような会社で,年次有給休暇が10日も20日も残っている社員が休むと連絡してきた場合,その連絡には年次有給休暇取得請求の趣旨が含まれていると考えることもできそうです。
事前に書面で申請しない限り年次有給休暇の取得は一切認めないというルールを作成し,現実にそのルールを例外なく適用している会社であれば別かもしれませんが,貴社においてそのような運用は現実的でないというのであれば,別の対処方法を考えた方が賢明と思われます。
私が顧問先企業にお勧めしているアドバイスの中には,「欠勤を理由に何らかの処分をしたいのであれば,まずは年次有給休暇を使い切らせて下さい。」というものがあります。
年次有給休暇が残っていれば,年休取得なのか,欠勤なのかの問題が残りますが,年次有給休暇を使い切らせてしまえば,年休を取得したという主張を完全に封じることができます。
また,会社とトラブルになっている社員の中には,退職すること自体はやぶさかではないが,年次有給休暇を使い切らずに退職してしまうのだけが心残りだ,もったいない,と考えている者も多くいます。
心残りとなっていることを解消してやれば,紛争解決に大きく近づいていくことになりますので,年次有給休暇を使い切らせるというのは,実際上も紛争解決に役に立つことになります。
くれぐれも,「こんな問題社員に年休取得までさせたら,踏んだり蹴ったりで,会社ばかりが一方的に損をすることになるし,迷惑がかかっている他の社員が納得しないから,年休取得を認めるわけにはいかない。」などと考えて,年休取得を妨げるようなことはないようにして下さい。
そんな不合理な対処をしたら,労働審判などにおける解決金の相場が無駄に上がってしまう可能性が高くなります。
具体的なやり方としては,所定の申請用紙を本人宛書留郵便などで郵送し,年次有給休暇の取得なのか,欠勤なのか,明確に記載して返送するよう伝えれば足ります。
年次有給休暇が何日も残っている社員であれば,まず間違いなく,年次有給休暇を取得する旨記載して返送してきます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎
何年も勤務を続けている社員の場合,年次有給休暇(労基法39条)が何日もたまっていることがあります。
何日も欠勤したことを理由として懲戒処分や解雇をしたところ,年次有給休暇取得の申請をしたのだから,欠勤日数は大した日数ではなく,懲戒事由や解雇事由には当たらない,仮に懲戒事由や解雇事由に該当するとしてもこの程度の欠勤日数で懲戒処分に処したり解雇したりするのは懲戒権,解雇権の濫用であるといった主張がなされるリスクが残ることになります。
もちろん,所定の用紙を用いて年次有給休暇取得を申請するルールになっているにもかかわらず,単に「休みます。」と連絡しただけでは年次有給休暇取得を請求したとはいえないと解釈すべきという主張にももっともな理由があるところです。
しかし,会社の中には,風邪などで欠勤した場合に,年次有給休暇を使ったことにして欠勤扱いせず,欠勤控除しないのが慣行となっている会社も数多くあるところです。
そのような会社で,年次有給休暇が10日も20日も残っている社員が休むと連絡してきた場合,その連絡には年次有給休暇取得請求の趣旨が含まれていると考えることもできそうです。
事前に書面で申請しない限り年次有給休暇の取得は一切認めないというルールを作成し,現実にそのルールを例外なく適用している会社であれば別かもしれませんが,貴社においてそのような運用は現実的でないというのであれば,別の対処方法を考えた方が賢明と思われます。
私が顧問先企業にお勧めしているアドバイスの中には,「欠勤を理由に何らかの処分をしたいのであれば,まずは年次有給休暇を使い切らせて下さい。」というものがあります。
年次有給休暇が残っていれば,年休取得なのか,欠勤なのかの問題が残りますが,年次有給休暇を使い切らせてしまえば,年休を取得したという主張を完全に封じることができます。
また,会社とトラブルになっている社員の中には,退職すること自体はやぶさかではないが,年次有給休暇を使い切らずに退職してしまうのだけが心残りだ,もったいない,と考えている者も多くいます。
心残りとなっていることを解消してやれば,紛争解決に大きく近づいていくことになりますので,年次有給休暇を使い切らせるというのは,実際上も紛争解決に役に立つことになります。
くれぐれも,「こんな問題社員に年休取得までさせたら,踏んだり蹴ったりで,会社ばかりが一方的に損をすることになるし,迷惑がかかっている他の社員が納得しないから,年休取得を認めるわけにはいかない。」などと考えて,年休取得を妨げるようなことはないようにして下さい。
そんな不合理な対処をしたら,労働審判などにおける解決金の相場が無駄に上がってしまう可能性が高くなります。
具体的なやり方としては,所定の申請用紙を本人宛書留郵便などで郵送し,年次有給休暇の取得なのか,欠勤なのか,明確に記載して返送するよう伝えれば足ります。
年次有給休暇が何日も残っている社員であれば,まず間違いなく,年次有給休暇を取得する旨記載して返送してきます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
弁護士 藤田 進太郎