弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

退職勧奨を行う上で重要なポイント

2013-01-31 | 日記
Q53 退職勧奨を行う上で重要なポイントは何だと思いますか?


 退職勧奨を行う場合は,担当者の適切な選定,担当者のモチベーションの維持,解雇する場合と同様の下準備がなどが重要となってきます。

 退職勧奨は労使紛争の契機となることが多いですので,相手の気持ちを理解する能力を持っている,コミュニケーション能力の高い社員が退職勧奨を担当することが望ましいところです。
 同じようなケースであっても,退職勧奨の担当者が誰かにより,紛争が全く起きなかったり,紛争が多発したりします。
 適性のある担当者が必要な人数集められない場合は,マニュアルを作成して遵守させるなどして対処せざるを得ませんが,マニュアルだけでは十分な対応ができないかもしれません。
 直属の上司は,日常的に部下とともに業務を遂行すべき立場にありますので,退職勧奨を行わせるのは酷なケースが多く,原則として退職勧奨の担当者にはしない方が無難だと思います。
 退職勧奨を受ける社員と仲の悪い上司が退職勧奨を行うようなケースは非常にトラブルが多いので,できるだけ避けたいところです。


 退職勧奨を担当する社員に対しては,どうして退職勧奨しなければならないのか,その理由についてよく理解してもらう必要があります。
 退職勧奨される側に大きなストレスがかかるのは当然ですが,退職勧奨する側にも相当大きなストレスがかかります。
 退職勧奨を行う必要性について十分に納得してもらわないと,退職勧奨する側が嫌になって会社を辞めてしまうということにすらなりかねません。

 解雇の要件を充たしていなくても退職勧奨を行うことができますが,有効に解雇できる可能性が高い事案であればあるほど,退職勧奨に応じてもらえる可能性が高くなります。
 到底解雇が認められないような事案で退職勧奨したところ,明確に退職を拒絶された場合,手の施しようがなくなってしまうことがあります。
 退職勧奨に応じないようであれば解雇できるよう,退職勧奨に先立ち,問題点を記録に残し,十分な注意,指導,教育を行い,懲戒処分を積み重ねるなどして,解雇する際と同じような準備をしておくべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合の失業手当

2013-01-31 | 日記
Q52 会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合,自己都合退職と評価されて,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けることはありませんか?


 会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合であっても自己都合退職として扱われ,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けるのではないかと懸念し,退職自体はやむを得ないと考えていても,退職届の提出を拒絶する社員がいます。
 しかし,「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当しますので(雇用保険法23条2項2号),会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることはありません。
 社員が失業手当の受給条件について心配しているようでしたら,社員が一方的に辞職した場合や会社からの働きかけがないのに退職したいと言い出して合意退職した場合とは異なり,会社から辞めるよう促されて退職届を提出した場合は自己都合退職として扱われないのでということを丁寧に説明して懸念を払拭する必要があります。


弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担

2013-01-31 | 日記
Q39 有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担はどのようなものになりますか?


 有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合,訴訟における主張立証の分担としては,
 労働者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価根拠事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価根拠事実
を主張立証し,
 使用者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価障害事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価障害事実
を主張立証していくことになります。
 上記①②の事実は,重なる部分も多いですが,①②は別の論点ですので,①②どちらの論点についての話なのかを意識して主張立証していく必要があります。

 現在では労契法19条の要件を充足するか否かといった観点から検討されることになりますが,基本的な構造は従来の判例法理と変わりません。
 主な違いは,「契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」であることが雇止め制限の要件として要求されるようになったことくらいです。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?

2013-01-31 | 日記
Q38 雇止めが争われるリスクが高いのはどのような場合ですか?


 やはり,家計補助的な有期労働ではなく,正社員と同様,一家の大黒柱的に有期労働に従事していたような場合が挙げられると思います。
 そのような立場で雇止めにあって仕事がなくなったら,生活できなくなってしまいますから,反発が強くなるのはやむを得ないところです。

 その他,契約が何回も更新されて長期間にわたり正社員と同様の基幹的業務に従事しているような場合も,リスクが比較的高くなります。
 有期労働契約の労働者が,たいていの正社員よりも勤続年数が長く,正社員よりもできがいい,役に立つということもありますが,そのような労働者については,正社員類似の配慮が必要になると思います。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合

2013-01-31 | 日記
Q37 有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合は,解雇とは違いますから,簡単に辞めてもらうことができますよね?


 有期労働契約の期間が満了した場合は,契約終了となるのが原則です。
 しかし,有期労働契約期間が満了した場合であっても,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合(東芝柳町工場事件最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決)
② 労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合(日立メディコ事件最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決)
には,解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用され,当該労働契約の雇止め(更新拒絶)は,客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されないことになります。
 したがって,有期労働契約期間満了で辞めてもらう場合であっても,①②のような場合には雇止めが争われることがあり,簡単に辞めてもらうことができるとは限りません。
 もっとも,正社員と比較して,有期労働契約の労働者は,長期雇用に対する期待が低いことが多いので,正社員と比べれば,すんなり辞めてもらえることが多い実情にはあります。

 以上が従来から判例で認められてきた雇止め法理の解説ですが,現在では労契法19条で「有期労働契約の更新等」が定められ,雇止め法理が明文化されたと説明されていますので,この問題は労契法19条の要件を充足するか否かといった観点から検討されることになります。


(有期労働契約の更新等)

19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって,使用者が当該申込みを拒絶することが,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,使用者は,従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。


弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期労働契約期間満了で退職してもらう場合の手続的な注意点

2013-01-30 | 日記
Q36 有期労働契約期間満了で退職してもらう場合の手続的な注意点を教えて下さい。


 有期労働契約が3回以上契約を更新された場合,又は,1年を超えて継続勤務している場合には,期間満了日の30日前までに雇止めの予告をしなければならず,労働者が更新しない理由,又は,更新しなかった理由についての証明書の交付を求めたときは,遅滞なく交付しなければなりません(平成15年10月22日厚生労働省告示357号)。
 雇止めに関する基準は,直ちに民事的効力を有するものではありませんが,これに違反すると,行政官庁により必要な助言及び指導がなされる可能性があります(労基法14条3項)。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非正規労働者はいつでも辞めさせられる??

2013-01-29 | 日記
Q35 契約社員,パートタイマー,アルバイト等の非正規労働者であれば,いつでも辞めさせることができますよね?


 契約社員,パートタイマー,アルバイト等,あればいつでも解雇できるものと誤解されていることがありますが,全くの誤りです。
 3か月とか1年とかいった契約期間が定められている場合は,「やむを得ない事由」がある場合でないと契約期間中に解雇することはできません(労契法17条1項,民法628条)。
 「やむを得ない事由」とは「当該契約期間は雇用するという約束があるにもかかわらず,期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由」(『労働法(第十版)』234頁)をいい,期間の定めのない労働契約における解雇の有効性を判断する際の客観的合理性,社会通念上の相当性(労契法16条)よりも厳格な要件と考えられていますので,よほどのことがない限り契約期間中に解雇することはできません。
 通常は契約期間満了を待って退職という扱いをさせざるを得ませんので,将来の売上げの見通しが立たない場合は,漫然と長期の労働契約を締結するのではなく,採用を控えるか,ごく短期の労働契約を締結するにとどめておく必要があります。

 なお,パートタイマー等の非正規社員の中には,期間の定めなく採用されている労働者もいますが,その場合は解雇権濫用法理(労契法16条)が適用され,解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となりますので,やはりいつでも辞めさせられるわけではありません。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『採用基準』(伊賀 泰代)

2013-01-27 | 日記
昨夜,『採用基準』(伊賀 泰代)を読み終えました。
http://www.amazon.co.jp/%E6%8E%A1%E7%94%A8%E5%9F%BA%E6%BA%96-%E4%BC%8A%E8%B3%80-%E6%B3%B0%E4%BB%A3/dp/4478023417

リーダーシップに関する記述が秀逸。
起業家,人事にかかわる方には,特にお勧めです。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石綿(アスベスト)訴訟 会社側勝訴判決

2013-01-22 | 日記
私が会社側代理人を務め,全面勝訴判決をいただくことができた山口工業ほか事件東京地裁平成24年10月30日判決が,労働経済判例速報2170号11頁に掲載されました。
本件は控訴されず,同地裁判決は確定しています。
石綿(アスベスト)訴訟で会社側が全面勝訴した判決をお探しでしたら,同判決を参考にしたいただければ幸いです。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

解雇有効 使用者側勝訴判決

2013-01-22 | 日記
平成25年1月10日(木),2年に渡って戦ってきた解雇訴訟で完全勝訴判決をいただくことができました。
別の事務所が担当した仮処分事件では主張が認められず負けていたこともあり、依頼者は大喜びしていました。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

所長ご挨拶

2013-01-22 | 日記
所長ご挨拶

 あなたは労使紛争の当事者になったことがありますか?
 労使紛争の当事者になったことがあるとすれば,それがいかに大きな苦痛となり得るかが実感を持って理解できることと思います。

 会社の売上が低迷する中,社長が一生懸命頑張って社員の給料を支払うためのお金を確保しても,その大変さを理解できる社員は多くありません。
 会社はお金を持っていて,働きさえしていれば,給料日には給料が自分の預金口座に振り込まれて預金が増えるのが当然という感覚の社員が多いのではないでしょうか。
 私自身,勤務弁護士の時は給料日には必ず給料が私の預金口座に振り込まれて預金残高が増えていたものが,自分で事務所を開業してみると,給料日には社員に給料を支払わなければならず,私の事業用預金口座の残高が減るのを見て,経営者にとって給料日はお金が減る日なのだということを,初めて実感を持って理解することができました。
 また,個人事業主や中小企業のオーナー社長は,事業にかかる経費と比較して売上が不足すれば,何百時間働いても,事実上,1円の収入にもならないということになりかねず,それどころか,経営者の個人財産からお金を出して,不足する金額を穴埋めしなければならないこともあるのですから,会社の業績が悪化した結果,収入が減ることはあっても,個人資産を事業継続のために持ち出すことのない一般社員とでは,随分,負担の重さが違うのだということも,よく理解できました。
 このような話は,理屈は簡単で,当たり前のことなのですが,誰でも実感を持って理解できるかというと,なかなか難しいものがあります。
 会社勤めをしている友達に,給料日には会社の預金残高が減るという話をしてみたところ,「そのとおりかもしれないけど,その分,会社はお客さんからお金が入ってきて儲かっているんだから。」という答えが返ってきたことがあります。
 確かに,「お金が入ってきて儲かっている」のであればいいのですが,経営者にとっては,実際にお金が入ってくるかどうかが問題なわけです。
 今,売上が上がっていても,将来,どうなるかは誰にも分かりませんし,下手をすると個人資産を事業につぎ込まなければならなくなることもあるのですから,経営者はいつまで経っても気を緩めることはできません。
 実は,私も,勤務弁護士のときは,理屈では雇う側の大変さを理解していても,その理解には共感が伴っていませんでした。
 所長は実際に仕事をこなしている自分よりたくさんの収入があってうらやましいというくらいの感覚だったというのが正直なところで,雇われている人たちのために頑張ってくれてありがとうございます,などと本気で思ったことがあるかというと,一度もありませんでした。
 自分が経営者の立場になってみて初めて,経営者の大変さを,実感を持って理解することができるようになったのです。

 立場が違えば,感じ方・考え方も違ってきます。
 労使紛争でお互いが感情的になりがちなのは,自分の大変さを相手が理解してくれないことに対する苛立ちのようなものが根底にあるからではないでしょうか。
 労使とも,自分ばかりが不当に我慢させられている,譲歩させられていると感じているわけです。
 このような苛立ちを緩和し,冷静に話し合うことができるようにするためには,労使双方,相手のことを思いやる想像力が必要だと思います。
 社員の置かれた状況を鮮明に想像することができ,社員を思いやることのできる優れた会社であれば,会社を思いやる想像力を持った優れた社員との間で労使紛争が生じるリスクは極めて低くなることでしょう。
 仮に,一部の問題社員との間で労使紛争が生じたとしても,大部分の優れた社員は会社の味方になってくれるでしょうし,裁判に勝てる可能性も高くなります。

 私は,あなたの会社に,労使双方が相手の立場に対して思いやりの気持ちを持ち,強い信頼関係で結ばれている会社になって欲しいと考えています。
 そのためのお手伝いをさせていただけるのであれば,あなたの会社のために全力を尽くすことをお約束します。

四谷麹町法律事務所
所長弁護士 藤田 進太郎

経歴・所属等
•東京大学法学部卒業
•四谷麹町法律事務所所長弁護士
•労働問題の予防解決(使用者側専門)が中心業務
•第一東京弁護士会会員
•日本弁護士連合会労働法制委員会委員・事務局員・労働審判PTメンバー
•第一東京弁護士会労働法制委員会委員・労働契約法部会副部会長
•東京三会労働訴訟等協議会委員
•経営法曹会議会員
•全国倒産処理弁護士ネットワーク会員



主な講師担当セミナー・講演・著作等

『中小企業における労働問題の実務』(東京司法書士会,企業法務研修会,平成25年1月21日)
『Q&A職場のメンタルヘルス -企業の責任と留意点-』(共著,三協法規出版)
『労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応』(全国青年社会保険労務士連絡協議会,特定非営利活動法人個別労使紛争処理センター,平成24年12月7日)
『解雇・退職の法律実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成24年11月20日)
『社会保険労務士の紛争解決手続代理業務を行うのに必要な学識及び実務能力に関する研修』ゼミナール講師(東京,平成24年11月9日・10日・17日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年10月4日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年9月28日)
『問題社員への法的対応の実務』(経営調査会,平成24年9月26日)
『日本航空事件東京地裁平成23年10月31日判決』(経営法曹会議,判例研究会,平成24年7月14日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,札幌会場,平成24年6月26日)
『有期労働法制が実務に与える影響』(『労働経済春秋』2012|Vol.7,労働調査会)
『現代型問題社員を部下に持った場合の対処法~ケーススタディとQ&A』(長野県経営者協会,第50期長期管理者研修講座,平成24年6月22日)
『労働時間に関する法規制と適正な労働時間管理』(第一東京弁護士会・春期法律実務研修専門講座,平成24年5月11日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,福岡会場,平成24年4月17日)
『高年齢者雇用安定法と企業の対応』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,労働調査会)
『実例 労働審判(第12回) 社会保険料に関する調停条項』(中央労働時報第1143号,2012年3月号)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成24年3月8日)
『労使の信頼を高めて 労使紛争の当事者にならないためのセミナー』(商工会議所中野支部,平成24年3月7日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成24年2月29日)
『健康診断実施と事後措置にまつわる法的問題と企業の対応』(『ビジネスガイド』2012年3月号№744)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,名古屋会場,平成24年1月20日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,大阪会場,平成23年10月31日)
日韓弁護士交流会・国際シンポジウム『日本と韓国における非正規雇用の実態と法的問題』日本側パネリスト(韓国外国語大学法学専門大学院・ソウル弁護士協会コミュニティ主催,平成23年9月23日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,大阪会場,平成23年9月16日)
『マクドの失敗を活かせ!新聞販売店,労使トラブル新時代の対策』(京都新聞販売連合会京都府滋賀県支部主催,パートナーシステム,平成23年9月13日)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年9月6日)
『問題社員に対する法的対応の実務』(新社会システム総合研究所,東京会場,平成23年8月30日)
『社員教育の労働時間管理Q&A』(みずほ総合研究所『BUSINESS TOPICS』2011/5)
『問題社員対応の実務』(企業研究会,東京会場,平成23年4月14日)
『改訂版 最新実務労働災害』(共著,三協法規出版)
『労働審判を申し立てられた場合の具体的対処方法』(企業研究会,東京会場,平成22年9月8日)
『もし,自分が気仙沼で教師をしていたら,子供達に何を伝えたいか?』(気仙沼ロータリークラブ創立50周年記念式典,平成22年6月13日)
『文書提出等をめぐる判例の分析と展開』(共著,経済法令研究会)
『明日から使える労働法実務講座』(共同講演,第一東京弁護士会若手会員スキルアップ研修,平成21年11月20日)
『採用時の法律知識』(第373回証券懇話会月例会,平成21年10月27日)
『他人事ではないマクドナルド判決 経営者が知っておくべき労務,雇用の急所』(横浜南法人会経営研修会,平成21年2月24日)
『今,気をつけたい 中小企業の法律問題』(東京商工会議所練馬支部,平成21年3月13日)
『労働法基礎講座』(ニッキン)
『管理職のための労働契約法労働基準法の実務』(共著,第一東京弁護士会労働法制委員会編,清文社)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

転勤命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?

2013-01-18 | 日記
Q34 転勤命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?


 転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
 他方,有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,懲戒解雇には客観的に合理的な理由があるといえるのが通常ですが,性急に過ぎる懲戒解雇は社会通念上相当でないものとして無効と判断されるリスクが高くなります。
 裁判例の中には,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くすべきとするものもあります。
 懲戒解雇は,退職という重大な法的効力を生じさせるものですから,それに見合った手順を踏む必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?

2013-01-18 | 日記
Q33 転勤命令が権利の濫用になるのはどのような場合ですか?


 使用者による転勤命令は,
① 業務上の必要性が存しない場合
② 不当な動機・目的をもってなされたものである場合
③ 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき
等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用にならないと考えられています(東亜ペイント事件最高裁第二小法廷昭和61年7月14日判決)。

 ①業務上の必要性については,東亜ペイント事件最高裁判決が,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示していることもあり,企業経営上意味のある配転であれば,存在が肯定されることになります。
 退職勧奨したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。
 社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
 ③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。

 ③に関し,就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
 育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
 本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が権利の濫用で無効とされるリスクが高まることになります。
 裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

勤務地限定の合意があったとの主張に対する対応

2013-01-17 | 日記
Q31 勤務地限定の合意があったとの主張に対し,どのように対応すればいいでしょうか?


 転勤命令の有効性が争われた場合,勤務地限定の合意があったとの主張が労働者側からなされることが多いですが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
 したがって,就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約してもらっておけば,特段の事情がない限り,訴訟対策としては十分だと思います。

 他方,有期労働者,パートタイマー,アルバイト等の非正規労働者については,勤務地限定の合意があることも珍しくありませんし,転勤させることが相当でない事案も比較的多いのではないかと思います。
 非正規労働者については,転勤命令権限の有無・範囲,転勤命令権限の濫用となる事情がないのか等について,慎重に検討していくべきでしょう。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

試用期間中の本採用拒否(解雇)

2013-01-16 | 日記
Q14 試用期間中の本採用拒否(解雇)なのに,解雇は無効だと主張して,職場復帰を求めてくる。


(1) 試用期間及び本採用拒否の法的性格

 使用者と試用期間中の社員との間では,既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案がほとんどです。
 労働契約の成立を前提とした場合,本採用拒否の法的性格は,留保された解約権の行使であり,解雇の一種ということになるため,解雇権濫用法理(労契法16条)が適用され,解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合でなければ,本採用拒否(解雇)することはできません。
 まずは,採用の場面とは異なり,自由に本採用拒否(解雇)できるわけではないこと,本採用拒否(解雇)が認められるためには具体的根拠を証拠により立証する必要があることを理解する必要があります。

(2) 緩やかな基準で本採用拒否(解雇)が認められるのは,どのような場合か?

 試用期間中の解雇は緩やかに認められるというイメージがありますが,それは,「当初知ることができず,また知ることが期待できないような事実」に基づく本採用拒否について言えることであって,採用当初から知り得た事実を理由とした場合は,緩やかな基準で解雇することはできません。
 例えば,本採用拒否(解雇)したところ,「本採用拒否の理由となるような事情がない。」といった趣旨の指摘がなされたことに対し,「本採用拒否の理由となるような事情がないようなことを言っているが,そんなことはない。採用面接の時から,あいつがダメなやつだということは分かっていた。」というような反論では,本採用拒否(解雇)を緩やかな基準で判断してもらうことはできないことになります。

(3) 試用期間満了前に本採用拒否(解雇)することはできるか?

 試用期間満了前であっても,社員として不適格であることが判明し,解約権留保の趣旨,目的に照らして,客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合であれば,本採用拒否(解雇)することができます。
 試用期間中に社員として不適格と判断された社員が,試用期間満了時までに社員としての適格性を有するようになることは稀ですから,使用者としては早々に見切りをつけたいところかもしれません。
 しかし,その後の努力次第では試用期間満了時までに社員としての適格性を有するようになることもなくはありませんので,本採用拒否(解雇)することを正当化するだけの客観的に合理的な理由がある場合であっても,本採用拒否(解雇)を試用期間満了前に行うことが社会通念上相当として是認されるかどうかについてもよく検討する必要があります。
 また,試用期間中の社員の中には,少なくとも試用期間中は雇用を継続してもらえると期待している者もおり,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)には紛争を誘発しやすいという問題もあります。
 したがって,基本的には,試用期間満了前の本採用拒否(解雇)が認められそうな事案であったとしても,よほどひどい事案でない限り,退職(解雇)日は試用期間最終日とすることをお勧めします。

(4) 試用期間と解雇予告制度(労基法20条)の適用(労基法21条)

 解雇の予告(労基法20条)が不要なのは,就労開始から14日目までであり,14日を超えて就労した場合は,試用期間中であっても,解雇予告の手続が必要となります(労基法21条但書)。
 就労開始から14日目までなら自由に解雇できると思い込んでいる方もたまにいますが,完全な誤解であり,むしろ,勤務開始間もない時期の本採用拒否(解雇)は客観的に合理的な理由があるのか疑わしい事案も多いですし,社会通念上相当ではないものとして無効とされる可能性も高いと考えられます。

(5) 試用期間の残存期間が30日を切ってから本採用拒否(解雇)する場合の注意点

 試用期間の残存期間が30日を切ってから試用期間満了日の本採用拒否(解雇)を通知する場合は,所定の解雇予告手当を支払う等する必要があります。
 試用期間満了ぎりぎりで本採用拒否(解雇)し,解雇予告手当も支払わないでいると,解雇の効力が生じるのはその30日後になってしまうため,試用期間中満了日の解雇(本採用拒否)ではなく,試用期間経過後の通常の解雇と評価されるリスクが生じることになります。
 試用期間を大雑把に考え,試用期間満了後の日を解雇日としている事例が散見されますので,十分に注意して下さい。

(6) 主張立証上の注意点

 訴訟で本採用拒否(解雇)の効力を争われた場合には,本採用拒否に客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されるといえるだけの事実を説明することができるか,当該事実を立証するために必要な証拠がそろっているかが問題となります。
 抽象的に勤務態度が悪いとか,能力が低いとか言っていたところで,裁判官には伝わりません。
 具体的に,何月何日にどういうことがあったのか記録に残しておく必要があります。
 可能であれば,毎日,本人に反省点等を記載させて,指導担当者がコメントするような形式の記録をその都度作成しておくことが望ましいところです。
 本採用拒否が予想される場合は,原則として,本人が達成すべき合理的事項を事前に書面で明示するなどして,本人に対する注意,指導,教育を十分に行い,改善の機会を与えたことを示す証拠を残すようにしておくべきでしょう。

(7) 能力不足を理由とした本採用拒否(解雇)はなかなか認められない

 能力不足を理由とした本採用拒否(解雇)が認められるかどうかは,当該労働契約で予定されている能力を有しているかどうかに判断されます。
 長期雇用を予定した新卒社員や第二新卒については,入社後の教育により能力を向上させていくことが予定されているのですから,試用期間中であっても,よほどひどい場合でない限り,能力不足を理由とした本採用拒否(解雇)はできません。
 地位を特定されたり,一定の能力を有することを前提として高額の賃金で採用された場合は,労働契約で予定されている比較的高い水準の能力がないことが判明すれば本採用拒否(解雇)することができますが,そうでない場合は,中途採用者であっても,能力不足を理由とした本採用拒否(解雇)は必ずしも容易ではありません。

(8) 話し合いの重要性

 本採用拒否に十分な理由がある場合であっても,まずは話合いが先です。
 よく話し合った上で,自主退職を促すべきでしょう。
 紛争になった場合の当事者双方の負担を考えれば,裁判に勝てばいいというものではありません。

(9) 慎重かつ丁寧な採用活動の重要性

 採用活動は,試用期間における本採用拒否(解雇)は必ずしも容易ではないことを念頭に置いて行うべきでしょう。
 安易な採用をしてはいけません。
 「取りあえず採用してみて,ダメだったら辞めてもらう。」という発想の会社は,トラブルが多く,社員の定着率が低い傾向にあります。

弁護士 藤田 進太郎

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする