Q39 有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合の主張立証の分担はどのようなものになりますか?
有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合,訴訟における主張立証の分担としては,
労働者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価根拠事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価根拠事実
を主張立証し,
使用者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価障害事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価障害事実
を主張立証していくことになります。
上記①②の事実は,重なる部分も多いですが,①②は別の論点ですので,①②どちらの論点についての話なのかを意識して主張立証していく必要があります。
弁護士 藤田 進太郎
有期労働契約の更新拒絶(雇止め)が争われた場合,訴訟における主張立証の分担としては,
労働者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価根拠事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価根拠事実
を主張立証し,
使用者側が,
① 期間の定めのある労働契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならないこと又は雇用継続期待に合理性があること(解雇権濫用法理が類推適用される事案であること)の評価障害事実
② 解雇の場合であれば解雇権濫用に当たることの評価障害事実
を主張立証していくことになります。
上記①②の事実は,重なる部分も多いですが,①②は別の論点ですので,①②どちらの論点についての話なのかを意識して主張立証していく必要があります。
弁護士 藤田 進太郎
Q7 転勤を拒否する。
まずは,転勤を拒否する事情を聴取し,転勤拒否にもっともな理由があるのかどうかを確認する必要があります。
転勤が困難な事情を社員が述べている場合は,より具体的な事情を聴取するとともに裏付け資料の提出を求めるなどして対応することになります。
個人の家庭内の事情は調査が容易ではないため,社員の転勤拒否に理由があるかどうかの調査には,ある程度の時間がかかることは覚悟する必要があります。
認められる要望かどうかは別にして,本人の言い分はよく聞くことが重要です。
転勤が困難な事情を社員が言い出す時期が遅くなった場合であっても,無視してはいけません。
本人の言い分を聞くことすらせずに転勤を強要したり,転勤命令違反を理由に解雇したりすると,トラブルになりやすくなります。
本人の言い分を聞く努力を尽くした結果,転勤拒否にもっともな理由がないとの判断に至った場合は,再度,転勤に応じるよう説得し,それでも転勤に応じない場合は,懲戒解雇等の処分を検討せざるを得ないことになります。
事前の労務管理としては,就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約させておくべきでしょう。
社員から,勤務地限定の合意があると主張されることがありますが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされており,「就業の場所」欄に特定の事業場が記載されていたとしても,勤務地限定の合意があることにはなりません。
ただし,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることをよく説明しておくことが望ましいです。
転勤命令の有効性の判断基準ですが,使用者による配転命令は,①業務上の必要性が存しない場合,②不当な動機・目的をもってなされたものである場合,③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用になりません。
①業務上の必要性については使用者の裁量が広く認められています。
最高裁判決は,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示しています。
退職勧奨したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。
社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。
③に関し,就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が無効とされるリスクが高まることになります。
裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。
転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,通常は懲戒解雇の合理的理由があるといえますが,解雇の仕方によっては懲戒解雇が無効とされることがあります。
焦りは禁物です。
まずは,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くす必要があります。
有効な配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇が無効とされた事例では,懲戒解雇が性急に過ぎることが問題とされることが多くなっています。
弁護士 藤田 進太郎
まずは,転勤を拒否する事情を聴取し,転勤拒否にもっともな理由があるのかどうかを確認する必要があります。
転勤が困難な事情を社員が述べている場合は,より具体的な事情を聴取するとともに裏付け資料の提出を求めるなどして対応することになります。
個人の家庭内の事情は調査が容易ではないため,社員の転勤拒否に理由があるかどうかの調査には,ある程度の時間がかかることは覚悟する必要があります。
認められる要望かどうかは別にして,本人の言い分はよく聞くことが重要です。
転勤が困難な事情を社員が言い出す時期が遅くなった場合であっても,無視してはいけません。
本人の言い分を聞くことすらせずに転勤を強要したり,転勤命令違反を理由に解雇したりすると,トラブルになりやすくなります。
本人の言い分を聞く努力を尽くした結果,転勤拒否にもっともな理由がないとの判断に至った場合は,再度,転勤に応じるよう説得し,それでも転勤に応じない場合は,懲戒解雇等の処分を検討せざるを得ないことになります。
事前の労務管理としては,就業規則に転勤命令権限についての規定を置き,入社時の誓約書で転勤等に応じること,就業規則を遵守すること等を誓約させておくべきでしょう。
社員から,勤務地限定の合意があると主張されることがありますが,勤務地が複数ある会社の正社員については,勤務地限定の合意はなかなか認定されません。
平成11年1月29日基発45号では,労働条件通知書の「就業の場所」欄には,「雇入れ直後のものを記載することで足りる」とされており,「就業の場所」欄に特定の事業場が記載されていたとしても,勤務地限定の合意があることにはなりません。
ただし,それが雇入れ直後の就業場所に過ぎないことや支店への転勤もあり得ることをよく説明しておくことが望ましいです。
転勤命令の有効性の判断基準ですが,使用者による配転命令は,①業務上の必要性が存しない場合,②不当な動機・目的をもってなされたものである場合,③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等,特段の事情のある場合でない限り権利の濫用になりません。
①業務上の必要性については使用者の裁量が広く認められています。
最高裁判決は,「右の業務上の必要性についても,当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく,労働力の適正配置,業務の能率増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは,業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」と判示しています。
退職勧奨したところ退職を断られ,転勤を命じたような場合に,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令だから,②不当な動機・目的をもってなされた転勤命令として権利の濫用となり,無効となると主張されることが多いですから,このような場合は,嫌がらせして辞めさせる目的の転勤命令ではないと説明できるようにしておく必要があります。
社員の配偶者が仕事を辞めない限り単身赴任となり,配偶者や子供と別居を余儀なくされるとか,通勤時間が長くなるとか,多少の経済的負担が生じるといった程度では,③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとはいえません。
③労働者の不利益が配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるか否かを判断する際は,単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給,社宅の提供,保育介護問題への配慮,配偶者の就職の斡旋等の配慮がなされているか等も考慮されることになります。
③に関し,就業場所の変更を伴う配置転換について子の養育又は家族の介護の状況に配慮する義務があること(育児介護休業法26条)には,注意が必要です。
育児,介護の問題ついては,本人の言い分を特によく聞き,転勤命令を出すかどうか慎重に判断する必要があります。
本人の言い分をよく聞かずに一方的に転勤を命じ,本人から育児,介護の問題を理由として転勤命令撤回の要求がなされた場合に転勤命令撤回の可否を全く検討していないなど,育児,介護の問題に対する配慮がなされていない場合は,転勤命令が無効とされるリスクが高まることになります。
裁判例の動向からすると,特に,家族が健康上の問題を抱えている場合や,家族の介護が必要な場合の転勤については,労働者の不利益の程度について慎重に検討した方が無難と思われます。
転勤命令自体が無効の場合は,転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため,通常は懲戒解雇の合理的理由があるといえますが,解雇の仕方によっては懲戒解雇が無効とされることがあります。
焦りは禁物です。
まずは,社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くす必要があります。
有効な配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇が無効とされた事例では,懲戒解雇が性急に過ぎることが問題とされることが多くなっています。
弁護士 藤田 進太郎
日弁連では,専門分野登録弁護士制度の導入を検討しているようです。
「はじめにパイロット分野として①離婚・親権,②相続・遺言,③交通事故,④医療過誤,⑤労働問題の5分野からスタートすること,3年以上の実務経験年数と一定の処理件数,専門研修の受講を登録要件とすること,他方,専門分野登録弁護士名簿のほかに補助名簿を設けて意欲のある若手弁護士の参入を支援することを考えております。」とのことです。
なお,Q&Aがいくつか作成されており,「Q12 登録要件ですが,この程度の要件で専門登録を認めるのは安易にすぎませんか。」という質問に対し,「専門分野登録制度は,一般弁護士に「専門分野登録」弁護士との表示を認めるための最低限の要件を設定したものであり,これをもって直ちに「名実共に専門性を認められた」ことまで意味するものではありません。つまり,一般弁護士のうち,当該専門分野について最低限の知識・経験を具備したものとして登録を認められた弁護士のための制度です。」などとの説明がなされています。
「専門分野登録」弁護士は,当該専門分野について「最低限の知識・経験」を具備したものとして登録を認められた弁護士をいうに過ぎないとのことですが,こういった説明で,専門的な知識経験を持った弁護士を探している一般の方々の納得を得られるといいのですが…。
幸運を祈ります!!
弁護士 藤田 進太郎
「はじめにパイロット分野として①離婚・親権,②相続・遺言,③交通事故,④医療過誤,⑤労働問題の5分野からスタートすること,3年以上の実務経験年数と一定の処理件数,専門研修の受講を登録要件とすること,他方,専門分野登録弁護士名簿のほかに補助名簿を設けて意欲のある若手弁護士の参入を支援することを考えております。」とのことです。
なお,Q&Aがいくつか作成されており,「Q12 登録要件ですが,この程度の要件で専門登録を認めるのは安易にすぎませんか。」という質問に対し,「専門分野登録制度は,一般弁護士に「専門分野登録」弁護士との表示を認めるための最低限の要件を設定したものであり,これをもって直ちに「名実共に専門性を認められた」ことまで意味するものではありません。つまり,一般弁護士のうち,当該専門分野について最低限の知識・経験を具備したものとして登録を認められた弁護士のための制度です。」などとの説明がなされています。
「専門分野登録」弁護士は,当該専門分野について「最低限の知識・経験」を具備したものとして登録を認められた弁護士をいうに過ぎないとのことですが,こういった説明で,専門的な知識経験を持った弁護士を探している一般の方々の納得を得られるといいのですが…。
幸運を祈ります!!
弁護士 藤田 進太郎
Q6 取引先から個人的にリベートを取得したり,虚偽の出張旅費を申告したりして,会社に損害を与える。
まずは,本人からよく事情聴取する必要があります。
本人の説明なしでは,不正行為がなされたかどうかが分かりにくいことも多いです。
事情聴取書をまとめてから本人に署名させたり,事情説明書を提出させたりして,証拠を確保することになります。
事情説明書等には,問題となる「具体的事実」を記載させる必要があります。
本人提出の事情説明書等に「いかなる処分にも従います。」と書いてあったとしても,問題となる具体的事実が記載されておらず,具体的事実を立証できないのであれば,懲戒処分等は無効となる可能性が高くなります。
本人が提出した事情説明書等に説明が不十分な点や虚偽の事実や不合理な弁解があったとしても,突き返して書き直させたりしないで下さい。
そのまま受領した上で,追加の説明を求めるようにして下さい。
せっかく提出した書面を突き返したばかりに,必要な証拠が不足して,訴訟活動が不利になることがあるので,そのようなことがないよう,くれぐれも注意する必要があります。
本人作成の書面を確保することにより,本人の言い分をありのまま聴取していることや,本人が不合理な弁解をしていること等の証明もしやすくなります。
不正があったことが証拠により証明できる場合は,事案の程度に応じた懲戒処分等を行うことになります。
単なる計算ミスに過ぎないのか,故意に金銭を不正取得したのかの区別が重要です。
単なる計算ミスの場合は重い処分をすることはできません。
注意,指導,教育により対処することになります。
他方,社員が故意に金銭を不正取得したことが判明した場合は,懲戒解雇することも十分検討に値します。
ただし,不正取得した金銭の額,それまでの会社に対する貢献度,反省の程度等によっては,より軽い処分にとどめるのが妥当な場合もあるでしょう。
不正が疑われるだけで,本人も不正を認めておらず,客観的証拠が不十分な場合は,懲戒処分はできません。
当該業務に従事する適格性が疑われる事情があれば,配転・降格等の人事異動により対処することも検討することになります。
不正に取得した出張旅費等は,「書面」で返還を約束させて下さい。
返還方法としては,賃金全額払いの原則(労基法24条1項)との関係から,賃金から天引きするのではなく,当該金額を会社の預金口座に振り込ませて返還させるのが無難です。
弁護士 藤田 進太郎
まずは,本人からよく事情聴取する必要があります。
本人の説明なしでは,不正行為がなされたかどうかが分かりにくいことも多いです。
事情聴取書をまとめてから本人に署名させたり,事情説明書を提出させたりして,証拠を確保することになります。
事情説明書等には,問題となる「具体的事実」を記載させる必要があります。
本人提出の事情説明書等に「いかなる処分にも従います。」と書いてあったとしても,問題となる具体的事実が記載されておらず,具体的事実を立証できないのであれば,懲戒処分等は無効となる可能性が高くなります。
本人が提出した事情説明書等に説明が不十分な点や虚偽の事実や不合理な弁解があったとしても,突き返して書き直させたりしないで下さい。
そのまま受領した上で,追加の説明を求めるようにして下さい。
せっかく提出した書面を突き返したばかりに,必要な証拠が不足して,訴訟活動が不利になることがあるので,そのようなことがないよう,くれぐれも注意する必要があります。
本人作成の書面を確保することにより,本人の言い分をありのまま聴取していることや,本人が不合理な弁解をしていること等の証明もしやすくなります。
不正があったことが証拠により証明できる場合は,事案の程度に応じた懲戒処分等を行うことになります。
単なる計算ミスに過ぎないのか,故意に金銭を不正取得したのかの区別が重要です。
単なる計算ミスの場合は重い処分をすることはできません。
注意,指導,教育により対処することになります。
他方,社員が故意に金銭を不正取得したことが判明した場合は,懲戒解雇することも十分検討に値します。
ただし,不正取得した金銭の額,それまでの会社に対する貢献度,反省の程度等によっては,より軽い処分にとどめるのが妥当な場合もあるでしょう。
不正が疑われるだけで,本人も不正を認めておらず,客観的証拠が不十分な場合は,懲戒処分はできません。
当該業務に従事する適格性が疑われる事情があれば,配転・降格等の人事異動により対処することも検討することになります。
不正に取得した出張旅費等は,「書面」で返還を約束させて下さい。
返還方法としては,賃金全額払いの原則(労基法24条1項)との関係から,賃金から天引きするのではなく,当該金額を会社の預金口座に振り込ませて返還させるのが無難です。
弁護士 藤田 進太郎
Q81 割増賃金の遅延利息の利率は,退職後は年14.6%という高い利率になるというのは本当ですか?
割増賃金(残業代)などの賃金(退職手当を除く。)の支払を怠った場合,退職後の期間の遅延利息は年14.6%という高い利率になる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)。
厚生労働省令で定める事由に該当する場合には,その事由の存する期間については上記規定の適用はありませんが(賃金の支払の確保等に関する法律6条2項),従来は当該事由に該当するかどうかについて裁判で争点になることはそれほど多くなかったようです。
しかし,会社側としては,厚生労働省令で定める事由に該当する可能性があるような事案であれば,しっかり主張すべきではないでしょうか。
特に,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)に該当する場合は,それなりにあるように思えます。
民事訴訟では弁論主義が適用されますから,会社が厚生労働省令で定める事由の存在を主張しさえすれば立証が容易で割増賃金の遅延利息の利率を下げられるような事案であっても,会社側が主張すらしなければ,そのまま年14.6%という高い利率が適用されることになってしまいます。
私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官,平成23年9月27日確定)では,賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに判断されており,当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も,商事法定利率(年6分)によるべきものとされています。
そもそも賃確法6条1項の趣旨は,退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して,高率の遅延利息の支払義務を課すことにより,民事的な側面から賃金の確保を促進し,かつ,事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが,ただ,それは,あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法419条1項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。
以上によると上記(1)の賃確法6条2項,同法施行規則6条は,遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し,実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ,そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく,むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め,その適用範囲を拡げていることにかんがみると,同条所定の除外事由については,これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。
このように考えるならば,賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には,裁判所又は労働委員会において,事業主が,確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく,必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。
弁護士 藤田 進太郎
割増賃金(残業代)などの賃金(退職手当を除く。)の支払を怠った場合,退職後の期間の遅延利息は年14.6%という高い利率になる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)。
厚生労働省令で定める事由に該当する場合には,その事由の存する期間については上記規定の適用はありませんが(賃金の支払の確保等に関する法律6条2項),従来は当該事由に該当するかどうかについて裁判で争点になることはそれほど多くなかったようです。
しかし,会社側としては,厚生労働省令で定める事由に該当する可能性があるような事案であれば,しっかり主張すべきではないでしょうか。
特に,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)に該当する場合は,それなりにあるように思えます。
民事訴訟では弁論主義が適用されますから,会社が厚生労働省令で定める事由の存在を主張しさえすれば立証が容易で割増賃金の遅延利息の利率を下げられるような事案であっても,会社側が主張すらしなければ,そのまま年14.6%という高い利率が適用されることになってしまいます。
私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官,平成23年9月27日確定)では,賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに判断されており,当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も,商事法定利率(年6分)によるべきものとされています。
そもそも賃確法6条1項の趣旨は,退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して,高率の遅延利息の支払義務を課すことにより,民事的な側面から賃金の確保を促進し,かつ,事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが,ただ,それは,あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法419条1項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。
以上によると上記(1)の賃確法6条2項,同法施行規則6条は,遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し,実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ,そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく,むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め,その適用範囲を拡げていることにかんがみると,同条所定の除外事由については,これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。
このように考えるならば,賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には,裁判所又は労働委員会において,事業主が,確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく,必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。
弁護士 藤田 進太郎
Q5 会社に無断でアルバイトをする。
会社に無断でアルバイトしている社員がいる場合は,まずはよく事情聴取する必要があります。
アルバイトしている事実が確認され,それが企業秩序を乱すようなものである場合は,口頭で注意,指導して,アルバイトを辞めてもらうことになります。
会社に無断でアルバイトしている社員に対し,アルバイトを辞めるよう促した場合,アルバイトを辞める旨の回答が得られるケースがほとんどです。
単にアルバイトを辞めるよう説得するにとどまらず,会社に無断でアルバイトをした社員に対し,何らかの処分をしようとする場合は,話しは簡単ではありません。
就業時間外の行動は自由なのが原則のため,社員の兼業を禁止するためには,就業規則に兼業禁止を定めて,兼業禁止を労働契約の内容にしておく必要があります。
そして,何らかの処分をするためには,兼業により十分な休養が取れないなどして本来の業務遂行に支障を来すとか,会社の名誉信用等を害するとか,競業他社での兼業であるとかいった事情が必要となります。
企業秩序を乱すようなアルバイトを辞めるよう注意,指導しても辞めようとしない場合は,書面で注意,指導し,それでも改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
解雇までは難しい事案が多く,紛争になりやすいので,解雇に踏み切る場合は,その有効性について慎重に検討すべきでしょう。
弁護士 藤田 進太郎
会社に無断でアルバイトしている社員がいる場合は,まずはよく事情聴取する必要があります。
アルバイトしている事実が確認され,それが企業秩序を乱すようなものである場合は,口頭で注意,指導して,アルバイトを辞めてもらうことになります。
会社に無断でアルバイトしている社員に対し,アルバイトを辞めるよう促した場合,アルバイトを辞める旨の回答が得られるケースがほとんどです。
単にアルバイトを辞めるよう説得するにとどまらず,会社に無断でアルバイトをした社員に対し,何らかの処分をしようとする場合は,話しは簡単ではありません。
就業時間外の行動は自由なのが原則のため,社員の兼業を禁止するためには,就業規則に兼業禁止を定めて,兼業禁止を労働契約の内容にしておく必要があります。
そして,何らかの処分をするためには,兼業により十分な休養が取れないなどして本来の業務遂行に支障を来すとか,会社の名誉信用等を害するとか,競業他社での兼業であるとかいった事情が必要となります。
企業秩序を乱すようなアルバイトを辞めるよう注意,指導しても辞めようとしない場合は,書面で注意,指導し,それでも改善しない場合は,懲戒処分を検討することになります。
解雇までは難しい事案が多く,紛争になりやすいので,解雇に踏み切る場合は,その有効性について慎重に検討すべきでしょう。
弁護士 藤田 進太郎