解雇 される社員の気持ちを考えてのことなのだとは思いますが,本当のことを伝えると角が立つから解雇の本当の理由を伝えられないというのでは,会社経営者としてなすべき仕事から逃げていると言わざるを得ません。
会社経営者は,社員に言いたくないことであっても,会社を経営していく上で必要なことであれば言わなければなりません。
解雇の理由が,勤務態度が悪いことや能力が極端に低いことなのだとすれば,まずはその事実を伝えて理由を説明するとともに,改善を促すのが本筋でしょう。
労働契約を終了させなければならないほど勤務態度の悪さ,能力不足の程度が甚だしいことを証拠により立証できるのでしょうか?
有効に解雇できるだけの証拠がそろった状態でそのように仰っているのであればまだいいのですが,普通解雇 (狭義)も懲戒解雇 もできない状態でその台詞を言ってみても,全く説得力がありません。
「勤務態度が悪いとか,能力が低いと言ったら,労働者が反発して解雇の効力が争われる可能性が高いが,整理解雇であれば本人に落ち度があると言っているわけではないから,解雇の効力が争われるリスクが減るのではないか。」と考えている,といった程度の話ではないかと疑われてしまいます。
整理解雇 の有効要件を満たしていないのに整理解雇したところ,社員が整理解雇の効力を争ってきた場合,そのまま整理解雇が有効であると押し通しても勝てませんから,解決金を支払って合意退職してもらうか,解雇を撤回して出社を命じることになるのが通常です。
整理解雇しないと失業手当を受給する上で解雇された社員が不利になるということもありません。
解雇した場合であっても,重責解雇と評価されなければ,解雇された労働者は特定受給資格者に該当し得ることになり,失業手当を受給する上で不利に取り扱われません。
退職勧奨 により合意退職した場合も同様です。