弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない。

2011-10-23 | 日記
Q4 注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない。

 「パワー・ハラスメント」は,法律上の用語ではありませんが,人事院の通知では,「職権などのパワーを背景にして,本来の業務の範疇を超えて,継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い,それを受けた就業者の働く環境を悪化させ,あるいは雇用について不安を与えること」とされています。
 近年では,上司の言動が気にくわないと,何でも「パワハラ」だと言い出す社員が増えているように思えます。
 そのような社員は,勤務態度等に問題があることが多く,むしろ,注意,指導,教育の必要性が高いことが多いという印象です。
 上司の部下に対する注意,指導,教育は必要不可欠なものであり,上司に部会の人材育成を放棄されても困りますから,パワハラにならないよう神経質になるあまり,上司が部下に対して何も指導できないようなことがあってはなりません。
 セクハラにおける性的言動が業務遂行に不要なものであるのとは対照的です。

 違法なパワハラに該当するかどうかは,行為のなされた状況,行為者の意図・目的,行為の態様,侵害された権利・利益の内容,程度,行為者の職務上の地位,権限,両者のそれまでの関係,反復・継続性の有無,程度等の要素を総合考慮し,社会通念上,許容される範囲を超えているかどうかにより判断されることになります。
 部下に問題がある場合であっても,やり過ぎは良くありません。
 指導教育目的であっても,やり過ぎると違法と判断されることがあります。
 皆の前で叱責することや,大勢の社員が読むことができる電子メールで叱責することは,裁判所受けが良くありません。
 パワハラでなくても,名誉毀損となることもあります。
 電子メールにより部下を叱責する場合は,主に,メール送信の目的,表現方法,送信範囲等の要素をチェックする必要があります。

 パワハラにより精神障害を発症した場合,労災となり,会社が安全配慮義務違反又は使用者責任を問われて,損害賠償請求されることになりかねません。
 パワハラを行う原因が上司のマネジメント能力の不足にある場合は,上司の懲戒処分だけ行うよりも,研修,降職,配置転換等により対処した方が有効な場合もあります。

 パワハラの状況は,部下により無断録音されて,証拠として提出されることが多く,訴訟では,無断録音したものが証拠として認められてしまいます。
 部下が上司をわざと挑発して,不相当な発言を引き出そうとすることもあります。
 無断録音されていても問題が生じないよう指導の仕方に気をつける必要があります。

弁護士 藤田 進太郎

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サービス内容ページ

2011-10-22 | 日記
サービス内容ページを改訂しました。


サービス内容
1 労使紛争の予防解決
  顧問先企業の労使紛争の予防解決が中心業務です。

2 企業法務・一般民事全般
  顧問先企業の法務・一般民事全般を扱っています。

3 破産管財業務・倒産処理
  東京地裁から破産管財人に選任されて破産管財業務に従事しています。
  企業から倒産処理の依頼を受けて破産申立て等を行っています。

4 その他
  顧問先企業関係者からの様々な相談に応じています。
  労働問題に関する講演,執筆活動を行っています。

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労働審判の第1回期日にかかる時間

2011-10-22 | 日記
Q114 労働審判の第1回期日にかかる時間はどれくらいですか?

 労働審判の第1回期日は,通常,2時間程度かかります。
 私がこれまで現実に経験した労働審判事件の第1回期日は,最短1時間20分~最長3時間30分かかっています。
 念のため,3時間30分程度の時間を取られても不都合が生じないよう,スケジュール調整しておくべきでしょう。
 なお,第1回期日にかかる時間は,事案の複雑さの程度にもよりますが,同程度の事件であれば,申立書,答弁書において,充実した主張反論がなされているケースの方が,所要時間が短くなる傾向にあります。

弁護士 藤田 進太郎

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「異常に巨大な天災地変」

2011-10-20 | 日記
東電株を1500株保有する東京都内の男性弁護士が,原子力損害賠償法の免責規定を東電に適用しなかったことで株価を下落させたとして,国に150万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし,同地裁で20日,口頭弁論が開かれたとのことです。
国側は「東日本大震災は免責規定が適用される『異常に巨大な天災地変』には当たらず,東電が損害賠償責任を負うべきだとした対応は適法だ」とこれまで政府が示してきた見解と同様の主張をし,請求の棄却を求めたようです。

法的に考えれば,東日本大震災は,「異常に巨大な天災地変」に該当すると思います。
これが該当しなければ,およそ該当する事案は想定することができず,免責規定を設けた意味がなくなってしまいます。
被害者への補償は,本来,国が責任を取るべき問題でした。
政治的判断から,法の適用をねじ曲げたと言わざるを得ません。
一連の動きを見て,日本は法治国家とは言えないという印象を受けました。
日本では投資家の地位が低いということも,影響したのかもしれません。

本来の争点は,どちらかというと,「原子力損害賠償法の免責規定を東電に適用しなかった」といえるかどうかの問題ではないでしょうか。
東電は,免責規定の適用を主張できたのに,勝手にしなかっただけだ,国が東電に強制したわけではない,という主張です。
もっとも,国が圧力をかけて,東電に免責規定の適用を主張できないようにしたように見えますから,国は,今さら,そういった主張はできないのかもしれません。

弁護士 藤田 進太郎

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「合理的な理由」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)

2011-10-01 | 日記
Q176 「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)にいう「合理的な理由」があるといえるためには,どの程度の理由があることが必要なのですか?

 賃金(退職手当を除く。)の支払を怠った場合,退職後の期間の遅延利息は年14.6%という高い利率になる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条)が,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)などの厚生労働省令で定める事由に該当する場合には,その事由の存する期間については上記規定の適用はありません(賃金の支払の確保等に関する法律6条2項)。
 では,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」(賃金の支払の確保等に関する法律施行規則6条4号)にいう「合理的な理由」があるといえるためには,どの程度の理由があることが必要なのでしょうか。

 退職後の労働者から支払が遅滞していると主張されている賃金の存否を争うことに,厳密な意味での「合理的な理由」があるような場合は,そもそも未払賃金元本自体が存在しないと認定されるケースが多いと考えられますから,未払賃金の遅延利息の利率に関する定めである賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条や,その適用除外を定めた賃金の支払の確保等に関する法律6条2項・賃確法施行規則6条の適用は問題となりません。
 とすると,賃金の支払の確保等に関する法律6条1項・同施行令1条が適用され,賃金の遅延利息の利率が年14.6%となる可能性があり,そのその適用除外を定めた賃金の支払の確保等に関する法律6条2項・賃確法施行規則6条適用の可否が問題となるのは,結果として,厳密な意味での「合理的な理由」がなかった場面ということになります。
 厳密な意味での「合理的な理由」がない場面において,賃確法施行規則6条4号の「合理的な理由」を限定的に考えなければならないとすると,賃確法施行規則6条4号は適用場面がなくなり,死文化してしまいます。
 賃確法施行規則6条4号に存在意義を認めるのであれば,「合理的な理由」は限定的に考えるべきではなく,一応の合理的な理由,明らかに不合理とまではいえない理由があれば足りると考えるべきことになるのではないでしょうか。

 私が使用者側代理人を務めた東京地方裁判所民事第19部平成22年(ワ)第41466号賃金請求事件において,平成23年9月9日に言い渡された判決(伊良原恵吾裁判官,平成23年9月27日判決確定)では,賃確法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」の存在について以下のとおり緩やかに判断されており,当該事案における未払割増賃金に対する遅延損害金の利率も,商事法定利率(年6分)によるべきものとされています。

 そもそも賃確法6条1項の趣旨は,退職労働者に対して支払うべき賃金(退職手当を除く。)を支払わない事業主に対して,高率の遅延利息の支払義務を課すことにより,民事的な側面から賃金の確保を促進し,かつ,事前に賃金未払が生ずることを防止しようとする点にあるが,ただ,それは,あくまで金銭を目的とする債務の不履行に係る損害賠償について規定した民法419条1項本文の利率(民法404条又は商法514条に規定する年5分又は年6分である。)に関する特則を定めたものにとどまる。
 以上によると上記(1)の賃確法6条2項,同法施行規則6条は,遅延利息の利率に関する例外的規定である同法6条1項の適用を外し,実質的に原則的利率(民法404条又は商法514条)へ戻すための要件を定めたものであると解することができ,そうだとすると賃確法施行規則6条所定の各除外事由の内容を限定的に解しなければならない理由はなく,むしろ上記原則的利率との間に大きな隔たりがあること及び賃確法施行規則6条5号が除外事由の一つとして「その他前各号に掲げる事由に準ずる事由」を定め,その適用範囲を拡げていることにかんがみると,同条所定の除外事由については,これを柔軟かつ緩やかに解するのが同法6条2項及び同施行規則6条の趣旨に適うものというべきである。
 このように考えるならば,賃確法6条2項,同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には,裁判所又は労働委員会において,事業主が,確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく,必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部又は一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当である。

弁護士 藤田 進太郎

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