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金銭を着服・横領したり,出張旅費や通勤手当を不正取得したりして,会社に損害を与える。

2016-06-22 | 日記

金銭を着服・横領したり,出張旅費や通勤手当を不正取得したりして,会社に損害を与える。


1 客観的証拠の収集と事情聴取
 金銭の不正取得が疑われる場合,まずは不正行為を裏付ける客観的証拠をできるだけ収集して下さい。不正が疑われる社員から事情聴取する際,客観的証拠と照らし合わせることにより,嘘や矛盾点が見抜きやすくなります。
 もっとも,金銭の不正取得は,本人の説明なしでは実態が分かりにくいことも多いため,客観的証拠を収集する努力をある程度したら,不正が疑われる社員から事情聴取して下さい。事情聴取に当たっては,事情聴取書をまとめてから本人に署名させたり,事情説明書を提出させたりして,証拠を確保します。
 事情説明書等には,何月何日の何時頃にどこで誰が何をしたのかといった問題となる「具体的事実」を記載させることが重要です。本人提出の事情説明書等に「いかなる処分にも従います。」と書いてあったとしても,問題となる具体的事実が記載されておらず,具体的事実を立証できないのであれば,懲戒処分や解雇 は無効となるリスクが高くなります。
 本人が提出した事情説明書等に説明が不十分な点や虚偽の事実や不合理な弁解があったとしても,突き返して書き直させようとしたりせずにそのまま受領し,追加の説明を求めるようにして下さい。せっかく提出した書面を突き返したばかりに,必要な証拠が不足して,訴訟活動が不利になることがあります。虚偽の事実や不合理な弁解が記載されている書面を確保することにより,本人の言い分をありのまま聴取していることや,本人が不合理な弁解をしていること等の証明もしやすくなります。


2 配置転換・降格
 当該業務に従事する適格性が疑われる事情があれば,配置転換を検討します。賃金額が減額されない配置転換であれば,明らかに嫌がらせ目的と評価できるようなものでない限り,無効にはなりにくいところです。
 管理職 としての適格性が疑われる場合には,人事権を行使して管理職から降格させることも考えられます。降格に伴い賃金額が減額される場合には,降格が人事権の濫用と評価されないよう,金銭の不正取得について十分に調査するなどして,降格の必要性を立証できるようにしておく必要があります。降格に同意する旨の書面を取得できるのであれば取得しておいて下さい。同意書を提出した場合には,懲戒処分の程度を検討する際にプラスの情状として考慮することになります。


3 懲戒処分
 不正があったことが証拠により客観的に認定できる場合は,不正行為の内容・程度・情状に応じた懲戒処分を行います。不正が疑われるだけで,証拠により客観的に不正行為が認定できない場合は,懲戒処分を行うことはできません。
 懲戒処分の程度を決定するに当たっては,故意に金銭を不正取得したのか,単なる計算ミス等の過失に過ぎないのかの区別が重要な考慮要素となります。
 社員が故意に金銭を不正取得したことが判明した場合は,懲戒解雇 することも十分検討に値します。ただし,不正取得した金銭の額,会社の実質的な損害額,懲戒歴の有無,それまでの会社に対する貢献度,反省の程度等によっては,より軽い処分にとどめるのが適切な場合もあります。
 過失に過ぎない場合は重い処分をすることはできないケースがほとんどなので,注意指導,始末書の提出,軽めの懲戒処分などにより対処することになります。


4 自主退職を申し出られた場合の対応
 本人が自主退職を申し出た場合に,懲戒解雇・諭旨解雇等の退職の効力を伴う懲戒処分をせずに自主退職を認めるかどうかは,
 ① 重い懲戒処分をして職場秩序を維持回復させる必要性
だけでなく,
 ② 自主退職を認めた方が紛争になりにくいこと
 ③ 懲戒解雇・諭旨解雇等の退職の効力を伴う重い懲戒処分をした場合は紛争になりやすく,訴訟で懲戒処分が有効と判断されるためのハードルが高いこと
 ④ 懲戒解雇に伴い退職金を不支給とした場合は紛争になりやすく,訴訟においては懲戒解雇が有効であっても,退職金の一部の支給が命じられることが多いこと
等も考慮して,冷静に判断して下さい。


5 退職勧奨する際の注意点
 「このままだと懲戒解雇 は避けられず,懲戒解雇だと退職金は出ない。懲戒解雇となれば,再就職にも悪影響があるだろう。退職届を提出するのであれば,温情で受理し,退職金も支給する。」等と社員に告知して退職届を提出させたところ,実際には懲戒解雇できるような事案ではなかったことが後から判明したようなケースは,錯誤(民法95条),強迫(民法96条)等の主張が認められ,退職が無効となったり,取り消されたりするリスクが高いところです。
 懲戒解雇できる事案でもないのに,懲戒解雇の威嚇の下,不当に自主退職に追い込んだと評価されないようにして下さい。退職勧奨 のやり取りは,無断録音されていることが多いということにも留意して下して下さい。
 退職するつもりはないのに,反省していることを示す意図で退職届を提出したことを会社側が知ることができたような場合は,心裡留保(民法93条)により,退職は無効となることがあります。


6 不正取得した金銭の返還方法
 不正に取得した出張旅費等の金銭は,「書面」で返還を約束させ,会社名義の預金口座に振り込ませるか現金で現実に支払わせるのが望ましいところです。賃金から天引きすると,賃金全額払いの原則(労基法24条1項)に違反するものとして,天引き額の支払を余儀なくされることがあります。
 月例賃金を減額して実質的に損害賠償金を回収しようとする事案が散見されますが,賃金減額の有効性を争われて差額賃金の請求を受けることが多いですし,退職されてしまった場合には回収が困難となりますので,お勧めしません。


7 身元保証人に対する損害賠償請求
 社員に対し損害賠償請求できる場合であっても,身元保証人に対し同額の損害賠償請求できるとは限りません。裁判所は,身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるにつき社員の監督に関する会社の過失の有無,身元保証人が身元保証をなすに至った事由及びこれをなすに当たり用いた注意の程度,社員の任務又は身上の変化その他一切の事情を斟酌するものとされており(身元保証に関する法律5条),賠償額が減額される可能性があります。身元保証の最長期間は5年であり(身元保証に関する法律2条1項),自動更新の合意は無効と考えるのが一般的です(同法6条参照)。


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団体交渉に関する基本原則を教えてください。

2016-06-06 | 日記

団体交渉に関する基本原則を教えてください。


 団体交渉 には①複数組合主義と②中立保持義務という二つの基本原則があります。

 ① 複数組合主義は,使用者は,自らが雇用する労働者を代表している労働組合のすべてと団体交渉を行わなければならないというものです。

 例えば,労働者が企業内組合と地域合同労組等に重複加入している場合も,当該団交事項について二重交渉になるおそれがある等の特段の事情がない限り,使用者は団体交渉に応じる必要があります。

 この点,アメリカでは交渉単位における過半数代表組合にのみ団体交渉権が認められる(排他的交渉代表制)仕組みになっているのとは対照的です。

 ② 中立保持義務は,使用者に,複数の労働組合に対し当該労使関係の具体的状況に応じて中立的な態度をとるよう義務づけているというものです。

 中立保持義務が問題となりうる場面としては,労働条件に関する場面,施設利用に関する場面があります。

 中立的な態度の結果,一方の労働組合とは合意し,他方とは合意に至らなくても結果の差異は不当労働行為にはあたりません。

 ただし,ある組合が受け入れられないような条件(さし違え条件)をあえて提示し,当該組合が条件を受け入れられず不利益を被ることになった場合には,意図的な組合弱体化行為として不当労働行為(支配介入)になります。


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配転を命じた組合員から,組合活動ゆえの左遷であるとの抗議がありました。不当労働行為に該当しますか

2016-06-06 | 日記

ある組合員に配転を命じたところ,その組合員が組合活動ゆえの左遷であるとの抗議がありました。この配転命令は不当労働行為に該当するのでしょうか?


 貴社がどのような意図をもって配転を命じたかによります。

 ここでは,不当労働行為の要件(FAQ568 )のうち使用者が不当労働行為意思をもって配転命令をしたかどうかが問題になります。

 基本の定式は,組合活動家であるが故に配転や解雇 等しようとの意欲を使用者がもち,かつそれを実現したと推認できるかどうかにあると言われています。

 具体的には,外部に現れた事情(使用者の労働組合に対する日頃の態度,通常の人事のパターンとの相違点,組合加入・組合活動等との時期的符号など)から推認していくことになります。

 裁判例の中には,業務上の必要性と組合活動への嫌悪とが競合的に存在する場合には,反組合活動の意思が業務上の必要性よりも優越していることを要するとしているものもあります。


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取引先から組合員の解雇を強要された場合の対応方法について教えてください。

2016-06-06 | 日記

取引先の方が当社の組合員の正当な組合活動を嫌悪し,取引の解除など経済的圧力のもと当社に組合員の解雇を強要していました。当社がやむなくこれに従い解雇した場合には,不当労働行為に該当するのでしょうか?


1 回答

  不当労働行為に該当します。

2 説明

 ここでは,不当労働行為の要件(FAQ568 )のうち,使用者に不当労働行為意思があったのかが問題となります。

 最高裁判例は,組合活動家を排除しようとする第三者の意図は,その強要により,その意図を知りつつ解雇 を行った使用者の意思に直結し,そのまま使用者の意思内容を形成するから,解雇は不当労働行為意思に基づくと判示しています。

 したがって,解雇のきっかけが取引先の進言,圧力だったとしても,使用者の不当労働行為意思は肯定され,不当労働行為に該当します。


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労働組合の「正当な行為」が問題とされるケースはどのようなものがありますか?

2016-06-06 | 日記

労組法7条1号の不当労働行為(不利益取扱い)の成立要件のうち,労働組合の「正当な行為」が問題とされるケースはどのようなものがありますか?


第1 回答

 労働組合の行為には,「正当性」が必要とされています。正当性がないのであれば使用者が懲戒処分などをしても,不当労働行為には該当しないことになります。

第2 説明

1 争議行為の性質に着目

(1) 山猫スト(労働組合内部の承認を経ずに,一部の集団が独自に行うストライキ)

 正当性なし。

(2) 政治スト(労働者の経済的地位の向上とは直接関係のない政治的目的の争議行為)

 正当性なし。

(3) 抜き打ちスト(団体交渉 を経ないストライキ)

 これだけでは必ずしも正当性は否定されません。

(4) 労働協約中の平和条項(争議行為を行わない旨の誓約)に違反する争議行為

 これだけでは必ずしも正当性は否定されません。

2 争議行為の態様に着目

 裁判例には,不法に使用者側の自由意思を抑圧しあるいはその財産に対する支配を阻止するような行為には,正当性が否定されるとするものがあります。

 具体例としては,タクシー会社の組合員が,ストライキ中,会社の退去要求に応じず,車輌の傍らに座り込み又は寝転ぶ等して車輌の搬出を妨げた行為について,正当性を否定しています。

3 争議行為以外の活動

 裁判例には,会社の一連の合理化政策に反対する立場から組合内の少数派グループが行ったビラ配布等の活動は,正当性があるとしたものがあります。

4 職務専念義務違反

 就業時間中に労働組合の活動を行うことは,原則として正当性が否定されます。


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労組法7条1号の不当労働行為(不利益取扱い)の要件を教えてください。

2016-06-06 | 日記

労組法7条1号の不当労働行為(不利益取扱い)の要件を教えてください。


 労働組合法7条1号は,以下の成立要件を満たした場合に,不当労働行為(不利益取扱い)に該当すると定めています。

① 労働者が組合員であることまたは労働組合の正当な行為をしたこと(FAQ569

② 使用者から不利益な取扱いを受けたこと(FAQ567

③ 使用者が労働者組合加入・組合活動を理由として(「故をもって」)不利益取扱いをしたこと(「不当労働行為意思」)


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