Q25労働審判手続において調停が成立しなかった場合は,どうなるのですか?
労働審判委員会から示された調停案を当事者のいずれかが最後まで受け入れなかった場合は,審理の終結が宣言され,概ね調停案に沿った内容の労働審判が当事者双方に告知されるか,審判書が送達されることになります。
労働審判に対しては,告知・送達から2週間以内に異議を申し立てることができますが,当事者いずれも異議を申し立てなかった場合は,労働審判は裁判上の和解と同一の効力(既判力,執行力等)が生じます。
他方,当事者いずれかから異議が申し立てられた場合は,異議を申し立てた当事者に有利な内容の部分を含めた労働審判の効力そのものが失われ,訴訟手続に移行します。
労働審判で解決しておくべきか,訴訟で戦うべきかの判断についてですが,私の個人的な感覚としては,他の労働者への波及効果等の理由から,会社経営上争う必要が高いものを除き,できるだけ労働審判手続において解決すべき事案が多いのではないかと考えています。
代理人の弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争う価値があるのかもしれません。
しかし,代理人の弁護士が労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずにそのまま解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てていい結果に終わることは稀ではないかという感覚です。
感情的な判断は差し控え,依頼した弁護士の意見に耳を傾ける経営姿勢が重要と思われます。
訴訟手続に移行した場合,労働審判の代理人が引き続き訴訟を受任する場合であっても,新たに訴訟委任状を追完する必要があります。
原告(労働審判手続における申立人)に対しては,異議申立てから2~3週間程度の間に,労働審判手続を踏まえた,「訴状に代わる準備書面」及び書証の提出,提訴手数料の追納及び郵便切手の予納が指示されることになります。
これに対し,被告(労働審判手続における相手方)は,「訴状に代わる準備書面」に対する「答弁書」等を提出し,第1回訴訟期日に臨むことになります。
労働審判手続において既に争点の整理ができているケースが多いことから,異議申立て後,判決までの期間は短くなっており,労働審判を経ずに訴訟が提起された場合と比較して,解決までの時間が長くなってしまうということは多くないようです。
ただし,「訴状に代わる準備書面」の記載内容が労働審判手続を踏まえた内容になっていないような場合は,答弁書も労働審判における答弁書と同じような内容のものが提出されることになりがちであり,同じような主張・反論が繰り返された結果,解決までの時間が無駄に長くなってしまう可能性があります。
したがって,訴訟に移行した後の主張書面には,労働審判の経緯を踏まえた主張・反論をしっかり記載すべきことになるでしょう。
弁護士 藤田 進太郎
労働審判委員会から示された調停案を当事者のいずれかが最後まで受け入れなかった場合は,審理の終結が宣言され,概ね調停案に沿った内容の労働審判が当事者双方に告知されるか,審判書が送達されることになります。
労働審判に対しては,告知・送達から2週間以内に異議を申し立てることができますが,当事者いずれも異議を申し立てなかった場合は,労働審判は裁判上の和解と同一の効力(既判力,執行力等)が生じます。
他方,当事者いずれかから異議が申し立てられた場合は,異議を申し立てた当事者に有利な内容の部分を含めた労働審判の効力そのものが失われ,訴訟手続に移行します。
労働審判で解決しておくべきか,訴訟で戦うべきかの判断についてですが,私の個人的な感覚としては,他の労働者への波及効果等の理由から,会社経営上争う必要が高いものを除き,できるだけ労働審判手続において解決すべき事案が多いのではないかと考えています。
代理人の弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争う価値があるのかもしれません。
しかし,代理人の弁護士が労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずにそのまま解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てていい結果に終わることは稀ではないかという感覚です。
感情的な判断は差し控え,依頼した弁護士の意見に耳を傾ける経営姿勢が重要と思われます。
訴訟手続に移行した場合,労働審判の代理人が引き続き訴訟を受任する場合であっても,新たに訴訟委任状を追完する必要があります。
原告(労働審判手続における申立人)に対しては,異議申立てから2~3週間程度の間に,労働審判手続を踏まえた,「訴状に代わる準備書面」及び書証の提出,提訴手数料の追納及び郵便切手の予納が指示されることになります。
これに対し,被告(労働審判手続における相手方)は,「訴状に代わる準備書面」に対する「答弁書」等を提出し,第1回訴訟期日に臨むことになります。
労働審判手続において既に争点の整理ができているケースが多いことから,異議申立て後,判決までの期間は短くなっており,労働審判を経ずに訴訟が提起された場合と比較して,解決までの時間が長くなってしまうということは多くないようです。
ただし,「訴状に代わる準備書面」の記載内容が労働審判手続を踏まえた内容になっていないような場合は,答弁書も労働審判における答弁書と同じような内容のものが提出されることになりがちであり,同じような主張・反論が繰り返された結果,解決までの時間が無駄に長くなってしまう可能性があります。
したがって,訴訟に移行した後の主張書面には,労働審判の経緯を踏まえた主張・反論をしっかり記載すべきことになるでしょう。
弁護士 藤田 進太郎