くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

狼おとこ(56)

2022-04-05 20:00:33 | 「狼おとこ」

「冗談じゃない。うちの子がそんなことをするもんか。昨夜は、花火を見に行こうぜとそそのかされて、出かけたんだ。トムが狼男だなんて知らないばかりに、口車に乗ってしまったんだ。アリエナだって、うちの子の話じゃ、もう少しの所で刺されそうだったというじゃないか。なんで命を助けた恩人に、罪の片棒を担がせるようなことを言いやがるんだ」
「なに言ってるの」と、アリエナは、証人達の方を見ながら言った。「わたしは、アル達になんか助けて貰ってやしないわ。その逆よ。みんな、トムがナイフを振り上げると、散り散りになって逃げ出したのよ。誰も、そう、わたしもだけど、グレイを助けようなんてしなかったわ」
「ほら見ろ、やっぱりトムは狼男じゃないか。まだその、グレイとかいう小僧は見つかっちゃいないが、トムの持っていたナイフにも、それに現場にだって、うちの子らが言ったとおり、刺した痕跡が残っていたんだ。おれも見てきたが、あの点々と落ちた血は、山へ走っていた。かわいそうに、今ごろは濡れそぼった森の土の上で、冷たくなっているだろう――」
 裁判を見守っている人々が、ザワザワと、波を打ったように色めき立った。「処刑だ!」という叫びが、あちらこちらから聞こえてきた。
「やめて!」と、アリエナは涙を浮かべながら叫んだ。「みんな聞いて。バードは、無実の罪で処刑されたわ。今度だって、トムもバードと同じ様に、殺してしまうつもりなの。トム一人のせいにして――本当のことなんて、みんなぜんぜん知らないくせに……」
「いいんだよ。もういいんだ、アリエナ」と、付き添いできていたケントが、そっとアリエナを抱き寄せた。もう、判決は決まっていた。ケントは、高ぶった群衆の間を縫うようにして、裁判の行われている教会から離れた。去り際、人々は口汚くケントをののしった。唾を吐きかける者もいた。ようやく群衆の中から出られたと思えば、石つぶてが容赦なく飛んできた。ケントは黙って、グリフォン亭に向かう帰路についた。
 トムの処刑が執行されたのは、それから数日経ってからだった。その間、ケントは町長の職を追われ、代わって仕立屋のジムが、町長に就任した。グリフォン亭は、さんざんだった。酒場にも、食堂にも、誰一人として客は来なくなった。宿も、裁判が終わった直後には、まだ何人かの客はあったが、彼らが去ると、もう誰も部屋を借りに来る者はいなかった。ケントは、無精ひげを伸ばし、エレナは、ひがな一日、鏡台の前に座っていた。アリエナは毎日、窓の外を、恨めしそうに眺めていた。数少なくなっていた使用人も、全員が店を移っていった。それまで、たいして人気のなかった宿屋が、いちやく賑わいを見せ始めた。グリフォン亭は日に日に、落ちぶれていった。
 アリエナは、トムの処刑当日、ただぼんやりと外を眺めていた。まぶしい日の光が、部屋の中に射しこんできた。朝からなにも食べていなかったため、じんじんと、頭が痛んでいた。しくしくと、腹が痛んでいた。窓の外を、町の住人達が大挙して歩いて行くのを見て、処刑が行われるのを知った。決して、見に行こうなどとは思わなかった。トムが、バードのように灰になるのかと思うと、なにも食べていないはずの自分の胃が、それでも吐き気を催すのだった。

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よもよも

2022-04-05 06:17:35 | Weblog

やれほれ。

生態系のことよくわからんけどさ、

カメムシっていつまで出てくんの??

昨日も仕事から帰ってきて

台所に立ってたら、ブン、とかって目の前を飛んでいって

追いかけて天井見たら、

照明の周りにカメムシが数匹・・・。

ガムテープと掃除機持ってうろうろ。。

部屋ん中カメムシ臭いと思うけど、

もうどうにでも良くなっちゃうくらい、

めんどいXXX

はぁ・・・。

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