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全身の皮膚が引きつるような感じを覚えたカッカは、目を覚ました。体が、倍以上膨らんだのではと思うほど、重たかった。背中をはじめとして、痛まないところはどこにもなかった。体中が、傷だらけだった。
「くそう、派手にやりやがって――」と、カッカは渇ききった喉を唾で潤しながら、つぶやいた。
「カッカさん――」
ふっと、カッカはうつぶせのまま、声のほうを見やった。そこには、アリエナが心配そうな顔をして座っていた。
「アリエナ……」と、カッカは重い体を起こした。
「あっ、無理しないで――」と、アリエナは手を貸そうとした。
「いや、まだ力は残ってるさ」と、カッカは自力で起き上がると、ゲホッと苦しげな咳をひとつした。と、「どうしてここにいるんだ――」カッカは、ゆっくりと床に座り直しながら訊いた。
アリエナは返事に困り、顔を背けた。
「誰が裏切りやがったんだ」カッカは「くそっ――」と、吐き捨てるように言うと、ぐっと拳に力をこめた。
「どうりでおれが牢に戻されるわけだぜ。で、おかみさんはどうしてるんだ?」
「オモラさんなら、無事です」と、アリエナは、はっきりと言った。
「そりゃあよかった。だがアリエナ。あんたが捕まっちまったんじゃ、どうにもならねぇんだよ」
「ごめんなさい――」と、アリエナは目に涙を浮かべた。
「いや、あんたを責めてるんじゃないさ。ただ、狼男事件に関わってるアリエナが、なにかひとつでも口にすれば、そいつがすぐ証拠になっちまうってことさ。町のやつらも後悔してるはずだ。もっとしっかり調べて、真実を見極めるべきだったってな。多少とも疑わしいといって、犯人に仕立てあげるなんてことさえしなけりゃ、こんな苦しい思いなんて、しなくて済んだのにってな」
アリエナは、うなずきながら聞いていた。
「いいか、おい」と、カッカはアリエナの顔を覗きこみながら言った。「狼男が誰か聞かれたら、迷わずおれだと言うんだ。おかみさんとこのカッカが狼男ですってな。そうすりゃ、ゲリル達は町からいなくなる。真犯人が早く出てこなけりゃ、あいつらはいつまでだって、ここで粘りやがるだろうから――」
「えっ」と、アリエナは耳を疑った。
「いいんだよ。そうするしか、みんなを助けられねぇんだ」と、カッカは大きく息をついた。「おれはな、昔からおかみさんとこで働いてたのさ。見習いでな。でも、おかみさんが狼男の事件に巻きこまれて、気味悪がった連中が火を点けやがったんだ。おれを使ってくれたおやじさんも、奥さんも、その火事でやられちまった。