「Five Years」はデヴィッド-ボウイの代表作「ジギースターダスト」のオープニングを飾るナンバーで、非凡な曲調と叙情的な語りで「我々に残された時間はあと五年しかない」と歌われます。
このアルバムが大ヒットしたのは、当時('72)イギリスに大勢いた「怒れる若者たち」の心を代表して歌ったからとされます。
当時は60年代からのヒッピームーブメント(Flower Power とも呼ばれる)が行き詰まって来て、植民地支配は諦めても戦争(冷戦)は続けられており、核兵器をどんどん量産して世界を危機に陥れている国と大人達に対して怒りを表明しました。
この運動には、イギリスの若者たちが持っていた特別なウィット(機知)が大きな影響を及ぼしており、それはドラッグ カンチャーが生んだ機知で、若者たちは「イカれる」事で大英帝国の支配体制を拒絶しました。
この「イカれる若者たち」は多くの映画に成っており、「英国病」とも言われて確かに経済は落ち込みましたが、イギリス社会を寛容なモノに成熟させて貴重な文化遺産(ロック)を生んだ、英国の黄金時代とも言えるかと思います。
話を身近な方に持って来ますと、ボウイは私の父母と同じ年に生まれ、66歳でガンで亡くなりました。
彼は18才でデビューし、当初は「25才まで生きる気はない」なんて歌うほど生き急いでましたが、本人が望んだ(?)よりもずっと長生きして、最期まで創造性は衰えず多くの名曲を残しました。
この「終」の章では挿入歌としてボウイの歌を何曲か入れたいと思っており、初期のチベットの子供を歌った「Silly Boy Blue」や後期の名曲「Seven」なんかが、曹希聖の葬送曲にピッタリかと思います。
ボウイには私と同年代の息子もおり、もし自分の父親がボウイみたいにトンガったアーティストだったら、どんな気持ちだろうかと想像させられます。
アーティストとしてボウイほどの才能と幸運に恵まれる事はまずないでしょうが、彼の様に死ぬまで自分の創造性を追及できたらいいなと思います。