ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

東京医大の入試について考える

2018-08-03 21:39:29 | 日記
東京医大が入試の際、女子の得点を一律に減点し、女子の合格者数を抑制するよう操作していたという。けしからんことだ。これは、この医大が文科省局長からうけた便宜の見返りに、彼の息子を合格させようとして、この学生の得点を操作していたのと同じことではないか。入試の平等原則に反し、身勝手が過ぎるというものだ。これでは医師を志し、長い間まじめに勉学に励んできた女子学生が浮かばれない!

だが、そんなふうに憤る前に、今回問題になった東京医大の採点措置を、アファーマティブ・アクションの一事例として見ることができるかどうか、それを考えてみたい。アファーマティブ・アクションとは、社会を望ましくない状態から望ましい状態へ近づけるために、積極的に行われる社会的是正措置のことである。アメリカで実際にあった例をあげれば、貧民層出身の黒人受験生が 受験の準備で不利な環境におかれている事情を考慮し、彼らに入学の特別枠を認めたケースがある。

今回の東京医大のケースは、この黒人受験生のケースと似ているようにも見える。というのも、女性は医師になっても出産や子育てを機に医師をやめることが多く、系列病院の要員不足を招く大きな要因になっている。これはたしかに「望ましくない状態」である。これを「望ましい状態」に近づけるために、つまり、系列病院の要員不足を解消するために、東京医大が男子の入学者数を増やそうとしてとったのが 今回問題になった措置だとしたら、どうなのか。

この措置はむろん適切なものではない。女性の社会進出が大きな意義を有するのは、言わずもがなである。女性の社会進出を阻む要因があるとしたら、まずそれを除去するのが対処の筋道というものだろう。朝日新聞はきょうの社説《東京医大入試 明らかな女性差別だ》で、次のように書いている。
「女性医師の休職や離職が多いのは事実だ。だがそれは、他の多くの職場と 同じく、家庭や子どもを持ちながら仕事を続けられる環境が、医療現場に整っていないためだ。厚生労働省の検討会などでも整備の必要性がかねて指摘され、医療界全体の課題になっている。」

女性医師は 出産や子育てを機に医師をやめることが多いとすれば、女性医師を多く作り出しても、病院側はこれを歓迎しないだろう。女性医師が出産をしても離職を余儀なくされないよう、職場の勤務体制を整えるとなれば、それは病院側にとってさらに重い負担になる。ーー病院側からそんな不満とも困惑ともつかぬ声が聞こえてきそうだが、それもこれも男性優先社会を前提にした上での不満であり、困惑である。女性医師が病院の多数を占めるようになれば、 事情もおのずと変わるのではないか。そんなふうに思う酷暑のきょうこの頃である。
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