所変われば品変わると言うが、同じ出来事でも、これを報じる報道機関次
第でまったく違った性格を持つものになってしまうことがある。きのう本
ブログで言及した中国人男性の件ーー中国版ツイッターに「安倍(晋三)首
相は僕の親愛なる父」と書き込んだ中国人男性の一件であるが、この件をめ
ぐる報道について、私はそのことを痛感した。きのう私が依拠したのは、
「朝日新聞DIGITAL」の記事であるが、これと「人民日報」の記事との違い
を取りあげようというわけではない。私が取りあげたいのは、同じ出来事を
報じた「YOMIURI ONLINE」の記事との違いである。この読売の記事は次の
ように報じている。
中国安徽省馬鞍山市の公安局は17日、中国版ツイッター・微博(ウェイ
ボー)に「安倍首相は実の父親」など、日本を称賛するような書き込みを
し、中国人の民族感情を著しく害したとして、18歳の中国人の男性を拘束
したと発表した。発表や微博の投稿記録によると、男性は「生まれる国を間
違えた。来世は日本か台湾に生まれたい」などと書き込んでいた。男性は今
年4月にもネット上に同様の投稿をしたとして当局から訓戒処分を受けた。
(YOMIURI ONLINE 8月18日配信)
比較のため、次に「朝日新聞DIGITAL」の記事を取りだしてみよう。これは
以下の通りである。
中国版ツイッター「微博」に「安倍(晋三)首相は僕の親愛なる父」などと
書き込んだ中国人の男性(18)が16日、虚偽情報で社会に悪影響を与え
たとして、中国・安徽省の警察に騒動挑発容疑で拘束された。警察が17
日、発表した。
(朝日新聞DIGITAL 8月17日配信)
ご覧の通り、ここ朝日の記事では、件(くだん)の男は、「虚偽情報で社会
に悪影響を与えた」との咎で拘束されたとされている。真っ赤なウソである
ことが明らかであるような書き込みが「社会に影響を与える」ことはないか
ら、「騒動」を誘発するようなこともなく、したがって中国政府のこの処分
はおかしいと、きのうの本ブログで私は書いたのだった。
一方の読売の記事の場合はどうか。ここでは、男の書き込みは「日本を称賛
する」ものであり、「中国人の民族感情を著しく害した」とされている。
「安倍首相は俺の実の父親なんだぞ」と書き込むことがはたして「日本を称
賛した」ことになるのかどうか、定かではないが、そういう場合もないとは
言えないだろう(たとえば、この書き込みが自分の父親を自慢する、という
文脈でなされた場合など)。だがそうだとしても、この書き込みが「中国人
の民族感情を著しく害した」かどうかは、大いに疑わしい。
一つだけ確実なこととして言えるのは、この書き込みが「中国公安当局者の
民族感情を著しく害した」ということである。
公安関係の中国政府高官の民族感情を損ねた。それだけの理由でブタ箱入り
になる社会は、やはり恐ろしいと言わなければならない。アメリカでは、大
統領の自尊感情を損ねるような報道があふれている。日本だって、日本人の
民族感情を損ねるネットへの書き込みなど、掃いて捨てるほどゴミのように
あふれているのにね。
第でまったく違った性格を持つものになってしまうことがある。きのう本
ブログで言及した中国人男性の件ーー中国版ツイッターに「安倍(晋三)首
相は僕の親愛なる父」と書き込んだ中国人男性の一件であるが、この件をめ
ぐる報道について、私はそのことを痛感した。きのう私が依拠したのは、
「朝日新聞DIGITAL」の記事であるが、これと「人民日報」の記事との違い
を取りあげようというわけではない。私が取りあげたいのは、同じ出来事を
報じた「YOMIURI ONLINE」の記事との違いである。この読売の記事は次の
ように報じている。
中国安徽省馬鞍山市の公安局は17日、中国版ツイッター・微博(ウェイ
ボー)に「安倍首相は実の父親」など、日本を称賛するような書き込みを
し、中国人の民族感情を著しく害したとして、18歳の中国人の男性を拘束
したと発表した。発表や微博の投稿記録によると、男性は「生まれる国を間
違えた。来世は日本か台湾に生まれたい」などと書き込んでいた。男性は今
年4月にもネット上に同様の投稿をしたとして当局から訓戒処分を受けた。
(YOMIURI ONLINE 8月18日配信)
比較のため、次に「朝日新聞DIGITAL」の記事を取りだしてみよう。これは
以下の通りである。
中国版ツイッター「微博」に「安倍(晋三)首相は僕の親愛なる父」などと
書き込んだ中国人の男性(18)が16日、虚偽情報で社会に悪影響を与え
たとして、中国・安徽省の警察に騒動挑発容疑で拘束された。警察が17
日、発表した。
(朝日新聞DIGITAL 8月17日配信)
ご覧の通り、ここ朝日の記事では、件(くだん)の男は、「虚偽情報で社会
に悪影響を与えた」との咎で拘束されたとされている。真っ赤なウソである
ことが明らかであるような書き込みが「社会に影響を与える」ことはないか
ら、「騒動」を誘発するようなこともなく、したがって中国政府のこの処分
はおかしいと、きのうの本ブログで私は書いたのだった。
一方の読売の記事の場合はどうか。ここでは、男の書き込みは「日本を称賛
する」ものであり、「中国人の民族感情を著しく害した」とされている。
「安倍首相は俺の実の父親なんだぞ」と書き込むことがはたして「日本を称
賛した」ことになるのかどうか、定かではないが、そういう場合もないとは
言えないだろう(たとえば、この書き込みが自分の父親を自慢する、という
文脈でなされた場合など)。だがそうだとしても、この書き込みが「中国人
の民族感情を著しく害した」かどうかは、大いに疑わしい。
一つだけ確実なこととして言えるのは、この書き込みが「中国公安当局者の
民族感情を著しく害した」ということである。
公安関係の中国政府高官の民族感情を損ねた。それだけの理由でブタ箱入り
になる社会は、やはり恐ろしいと言わなければならない。アメリカでは、大
統領の自尊感情を損ねるような報道があふれている。日本だって、日本人の
民族感情を損ねるネットへの書き込みなど、掃いて捨てるほどゴミのように
あふれているのにね。