ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

コロナをめぐるパチンコ店事情 その善と悪

2020-05-25 11:59:18 | 日記
「え⁉ホントなのか?ウソだろう!」
そのネット記事を見たとき、私はそうつぶやかずにはいられなかった。

「新型コロナウイルスに対する特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象から大阪、京都、兵庫の3府県が解除されたことを受け、3府県は一部の事業者への休業要請をさらに緩和、パチンコ店も対象から外され、街では休業していた店舗が次々と再開している。しかし(中略)再開後の客の入りは少ない。『これまでなら週末は多くの客でにぎわっていた』という40代の男性店長は『営業再開日は土曜日だったが空席が目立った。客入りはいつもの半分ほどの状態が続いている』とうなだれる。」
(産経新聞 電子版5月24日配信《パチンコ店、悪印象で苦悩 緊急事態下、一部で「営業強行」 》

この記事を見て、「ウソだろう」と私が思ったのは、1ヶ月ほど前に見た、別のある記事を思い起こしたからである。その記事は、緊急事態宣言下の大阪で、休業要請が出されたにもかかわらず、営業を強行する一部のパチンコ店に客が続々と押し寄せている、と報じていた。

この記事を読んだ私は、なるほど、ギャンブル依存症とはかくも恐ろしいものなのだ、と、妙に納得したものだ。パチンコに狂った「パチキチ」たちの耳には、自粛警察の非難の声も聞こえなくなるのだな、--そう思ったのである。

大阪府の休業要請を物ともせず、営業を続行したあのパチンコ店に列をなした、筋金入りのあの「パチキチ」たちは、一体どうしたのか。緊急事態宣言が解除された今、彼らは一体どこに行ってしまったのか。

まさか大半がコロナに感染して病院行きになった、というわけでもあるまい。考えられる一つの仮説は、「休業要請が出されてから緊急事態宣言が解除されるまでの1か月間に、彼らのギャンブル依存症は完全に治癒した」というものである。これは私自身の体験からいっても、充分に考えられることである。

大学生だった頃、私にはパチンコにハマっていた時期があった。どういう経緯だったかはもう憶えていないが、しばらくすると、いつの間にか私のパチンコ熱は醒めていた。

ニコチン依存症のこともある。20歳でタバコを吸いはじめ、その後40年ほど、私のニコチン依存症は続いた。その間、何度も禁煙を試みては失敗し、還暦を迎える頃にやっと禁煙に成功したものの、禁煙して1か月が山だった。この1か月間は「吸いたい」という欲求がしばしば波のように押し寄せ、それを抑えるのに私は難儀した。しかし、その禁断症状の期間を乗り切ると、「吸いたい」という欲求は嘘のように消え失せたのである。

禁じられたあのパチキチたちの場合はどうか。パチンコ店の休業要請から、緊急事態宣言が解除されるまでの1か月の間、彼らは「打ちたい」という欲求と戦い、やっとのことでこれに打ち勝ったのだろう。

緊急事態宣言が解除され、営業を再開したものの、客足が戻らないパチンコ店にとっては、これはたしかに大きな打撃である。だが、私はこの事態をパチンコ店の店長と共に嘆く気にはなれない。パチキチをかかえる家族には、ダンナが(あるいは息子が)パチンコ店に入り浸らくなったこの事態は、むしろ歓迎すべきことだろう。パチンコ店(儲ける側)にとっての〈悪〉は、客(儲けられる側)の家族にとっては〈善〉ということなのである。
コメント
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