筑紫文化財研究所

筑紫における歴史的文化の探求と漫遊

大正時代の博多人形の修復

2011-04-26 22:58:44 | 日記

竹久夢二風の大正モダンスタイルの博多人形です。
コレクターの方から依頼を受けて右足の欠損を修復してみました。


補修は欠損した部分を粘土で整形して焼成後に貼付する方法がありますが、
焼成による収縮と多方向の歪みが発生することから効率が良くありません。
使用した補修材に歯科用石工や第一合成社のクレイテックスなどを試しましたが、
ゲル状の物質を固化させて後に彫塑する方法では本体と接したままでの作業となり、
本体のダメージを避けるためには型どりしたモデリング原体を作成する手間が生じました。
そこで今回は日清アソシエイツ社のマイネッタという石粉粘土を使用しました。


粘土を少し練ってやや硬い状態にしたものを大雑把に指で成形し、それを欠損部に充てます。


ポックリやつま先の大きさ、角度を本体にあわせて修正します。

補修部分を本体から取り外して、2時間ほど自然状態で乾燥させ、
固化する少し前に再度本体の欠損部分に強く押し充て、細い工具で
補修部位と本体との隙間の調整をおこないます。
硬く固化する寸前では多少の可塑性が残っているため
石粉粘土にはこのような最終調整ができる特性があります。
あわせて軽く表面に水を含ませて表面の仕上げ調整(滑面化処理)をおこないます。
乾燥の過程で収縮や歪みが起こらないことが最大の利点です。


彩色にはアクリル系絵具のリキテックスを使用しました。
下塗りのホワイトを乾燥させながら二度塗りします。
この時、足袋の割れ目など成形時のディテールを潰さないよう気をつけます。


ポックリはオリジナルのオレンジを出すためにカドミュームイエローに
水性絵具の赤を少量ずつ混ぜて色を近づけていきます。
あらかじめ用意した粘土の乾燥状態のサンプルに彩色して
色の載り具合を原体と比較しながら濃度を調整します。


オリジナルのポックリ表面の光沢には透明ニスを上塗りします。


こうして完成した補修部位を木工用ボンドで本体に接着して完成です。