筑紫文化財研究所

筑紫における歴史的文化の探求と漫遊

2022ヤマ褒め6 11番山笠 渡辺通一丁目

2022-07-16 22:24:43 | 山笠


11番山笠 渡辺通一丁目 表 
「新選組風雲録伝」
人形師 中野 親一

御年86歳の大古参の人形師による幕末譚。
大の字スタイルの人形を縦横箱型に配置する中野スタイルは定番。
背景も横方向に目地が入り層のように見える。
JR博多駅に同氏が作成した江戸期の山笠の復元模型は、
人形がチドリに配置されているため箱型配置は意図してのことと拝察される。
川端中央街の同氏作のヤマの人形配置も同様の中野スタイル。
背景が平板な配置のため左端の池田屋の階段が本棚に見えてしまった。
風が吹くと屋形の軒先に下げられた銀の短冊飾り(通称ビラビラ)が
涼やかにさらさら鳴って郷愁を誘う(昔の飾り山はたいがいそうでした)。

参考資料

JR博多駅みどりの窓口にある中野 親一作の古い山笠の模型



11番山笠 渡辺通一丁目 見送り 
「愛と勇気のアンパンマン」
人形師 中野 浩

毎年、見送りのキャラクターものを担う
造形・彩色ともに丁寧できれいな仕上がり。
ヤマの前で子どもが写真に写りたがるためか主役のアンパンマンが一番下に配置されている。

第52回 博多人形与一賞展

2022-07-16 08:32:05 | 人形


若手博多人形師の登竜門とされる「与一賞」は、 長年、博多人形の発展に尽くした博多人形師 故小島与一氏にちなんで 創設された賞で、博多人形の後継者の 創作意欲と技術技法の向上を目指し、 博多人形商工業組合により博多大丸アートギャラリーで毎年開催されてています。

[会期] 7月13日(水)~19日(火) 午前10時~午後8時(最終日は午後5時閉場)
[会場] 大丸福岡天神店 本館6階 アートギャラリー 入場無料

与一賞 石井美緒「道祖白兎大明神」
特選  阿部範子「大きくなったら鬼になる(上毛町子ども神楽)」
    桑原修 「平教経、八艘飛びを見送らざるを得ず」
大丸賞 青木利絵「高く」
博多人形商工業組合理事長賞
    川崎高歩「初陣」

2022ヤマ褒め5 13番山笠 博多駅商店連合会

2022-07-14 22:12:26 | 山笠


13番山笠 博多駅商店連合会 表 
「いざ、鎌倉」
人形師 白水英章

表が唯一櫛田神社を向いていない飾り山。
山小屋は最も高く、しかしてヤマも最大級。
ゆえに人形師は他のヤマに増してボリュームが求められる。
人形は奇数の5体が通常だがここでは9体も上がっている。
中央の義経、弁慶辺りからは小型の衣装人形のようになっている。
今年は東流や天神1丁目の同氏のヤマではこの小人形が多用されている。
大きな人形の顔はすべてこのために製作されたスチロール切り出しと思われるが
北条義時はどことなく天神1丁目表の菅公の面相と似ている。



13番山笠 博多駅商店連合会 表 
「報道ワイド記者のチカラ」
人形師 田中勇

毎年テレビ局タイアップもので人形師にとっては冒険を強いられる題材だが
上川端同様にきれいで端正な仕上がり。
吉川リポーターは表情がよくとらえられている。
こちらも顔はスチロール切り出しと思われるオリジナルなもの。
キャラクターを入れて人形が5体あるためか、テレビクルーは人形でなく絵になっている。

2022ヤマ褒め4 14番山笠 キャナルシティ博多

2022-07-13 07:44:15 | 山笠

14番山笠 キャナルシティ博多 表 
「弁慶衣川大奮戦」
人形師 川﨑 修一

上から下へ斜位に人と川を配置する基本形を守り
ひと周り大きな主人公の弁慶の持つ薙刀から、下の2人の人物が円を描くように塩梅されている。
写真の取り手がヤマの正面で何度も位置を変えて撮影を試みている。
通常の真正面に立ってヤマを見上げると、薙刀が邪魔をして弁慶の眼が見えない、
という遊びを入れた計算になっているところが面白い。
このヤマも山小屋がなく四方から見るヤマで、今年はランタンが付かない代わりに
側面には鬼板の上に鎌倉殿(源頼朝)があげられている。



14番山笠 キャナルシティ博多 見送り 
「浦島太郎竜宮縁」
人形師 室井 聖太郎

竜宮城の浦島が巨大な亀の甲に乗った人形を中心に
乙姫、翁媼と人形は偶数でなく4体上がっている。
道や川はなく、浦島の背景には水中を表現する不思議な波板が横方向に貼られている。
スチロール板の魚も飾り全体もやや平板で、小屋の制約がない中ではややもったいない感がする。
人形の面相や指先にやや違和感を感じる。
巨大な亀は子ども達には大人気だった。

2022ヤマ褒め3 17番山笠 新天町

2022-07-12 21:17:15 | 山笠

17番山笠 新天町 表 
「望天下哉賤ケ岳」
人形師 小副川 太郎

昨年から亀田均氏の後を引き受け製作する若手の小副川氏の作。
屋形も人形も丁寧できれいな出来。
顔もこのヤマのために製作したものと思われる。
全ての空間に人形と屋形を配置して余白が極端に少ない。
背景に上から下への道や水の流れがないため目線の導線が得られず主題がつかみにくい。
人形も屋形も赤と金の配色で遠目に同化して見えてしまうのは惜しい。


17番山笠 新天町 見送り 
「サザエさん」
人形師 小副川 太郎

キャラクターものは似ている、似ていない論議がおきてしまうことがあるが
昨年同様にすばらしい出来。歌のタイトルバックのシーンを3D化。
人形師が楽しんで製作した様子がうかがえる。
クライアントも満足の作品であろう。