彼女たちのやっかいな虚栄と、せつなる孤独に捧げる
「こんなはずじゃなかった」――悩みながら、
泣きながら戦っているすべての“彼女”たちのために。
文庫ながらデザインに惹かれて買った一冊。
登場する女性たちが皆リアルで、友達にいそうだったり、街ですれ違ったあの綺麗な人みたいだったり、もしくは私自身みたいだったり。
それは多分、もう若いとは言えないアラサーの彼女たちが抗えない暑い時間の中で、夏休みを切望しているからなんだと思う。
「こんなはずじゃなかった」
というのが全編の根底に流れているキーワードなのだけれど、きっと誰もがそれを思ってる。
バリバリに仕事をこなして帰りがけの飲み屋で笑うあの子も、専門職として独立しプロとしてあの子も、きれいに化粧して似合った服を着てにっこり笑うあの子も、彼の横で幸せそうに笑うあの子も、結婚して妊娠して子供を抱き上げながら笑うあの子も。
みんな笑いながら泣いている。
泣きながら笑ってる。
きっと全てが順調な人なんていないんだ。
私自身だってそうじゃないか。
学生時代に戻れたら、と思うときがあるけれど、あのときはあのときであっちがうまくいけばこっちがうまくいかない、そんなことの繰り返しだったじゃないか。
そんな孤独の中でも虚栄を握り締めて精一杯に胸を張る。
惨めで、情けなくて、滑稽で。
それでも夏休みの夢を見る。
女って多分こういう生き物なのかなと。
救いがあるのは、登場人物それぞれが
「今の目の前の幸せ」に気づいて、行動をした、あるいは行動しようとしていること。
幸せってそういうことなのかなと。
だから仕事なり恋愛なり、夏休みを楽しんでいるんじゃないかなと。
印象的なのが、ベタなのですが、「あしたまでの距離」の英子と莉沙。
2人の生き様や仕事や結婚に対する思い、人生や自分の夢への思いなどが紡がれる中で、再会した同級生。
多分どっちかがくっつくだなんてのはないと思うんだけど、どうなの?!どうなるの?!とハラハラしていたら、まどかの思いも語られてびっくり。
さらにびっくりしたのが秋史の告白。
そこで2人はいろいろと気づくんだけど、最後がよかった。
2人が夏休みを楽しんでいるようでよかった。
久しぶりに本に励まされました。
同世代の女友達に是非ともオススメしたい。
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