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『べっぴんさん』12週 穏やかな時間の中で

2016-12-30 16:45:24 | 朝ドラの感想
2016年後期BK朝ドラ『べっぴんさん』の第12週「やさしい贈り物」のネタバレ感想。


メリークリスマス週でした。



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●不器用すぎる夫婦の時間


11週ラスト、キアリスに辞意を告白したすみれ。

さくらの靴、朝帰りで紀夫にビンタされたこと。
仕事に集中し過ぎる中で置き去りにしてきた家族のこと。
すみれの中で罪悪感が大きくなっていたのでしょう。



家のことをキッチリしたい。
「両立させればいい」と思わないわけではないものの、幼いころから思い込んだら一直線だったすみれを考えると、どこかで区切りをつけたかったのかもしれません。

紀夫もこれに答えます。


「ありがとう」

ほんっとに不器用な紀夫よ。
あんた、「ごめんね」って謝ってないでしょう。
顔に「ごめんね」って書いてあるけど、口に出して謝ってないでしょう。

ほんっとに不器用な夫婦よ。



●クリスマスを落ち着いて迎えられるまでの時間


すみれが去ろうとしているキアリス。
すみれの発案で、『明美ちゃんの知恵袋』を冊子にまとめる計画が進んでいました。


そんな大事なことを無料で配ってしまっていいのか?と昭一がまた茶々を入れたものだから…


「心が狭いんですね。何でもかんでも商売につなげんでもええやないですか」

明美さん爆弾がドカン。



「この育児法が広がれば事故がなくなったり助かる命があるかもしれない。赤ちゃんやお母さんがもっともっと幸せな毎日を送れるようになるかもしれない。だからまねしてもらっていいんです」

すみれも追撃!


キアリスの理念を地のままでいくすみれ。
クッキーにしろ肌着にしろ、あげるものは病気以外あげてしまえ精神というか。

そして近づくクリスマス。
戦後初めて、クリスマスを落ち着いて迎えられるようになったこのころ。
すみれから渉外担当を引き継いだ君ちゃんが、大急小山からあるミッションを申し渡されました。

 

クリスマス商戦の目玉商品。
「うわぁ」なるようなもの考えてくださいって。

小山かわいいな小山。




●(潔があかん子という諸問題)


ところで先日、ゆり姉ちゃんがご懐妊した潔夫妻は何をしているのかと言うと。


「潔さん、やっぱり男の子がいい?」
「元気やったらどっちでもええ」
「そう」
「そやけど男やったらわしと一緒に坂東営業部を支えていかなな」


潔おい潔。
そういう問題じゃない。


さらには、生まれてくる子供をお手伝いさんに預けるという話。


「ちょっと待ってお手伝いさんて」
「その方が仕事に専念できるやろ」
「私この子を預けたりしない」
「そしたら働かれへんぞ」


潔てめえ潔。



こんなふがいないっていうか、人の気持ちをさっぱりわかっていない潔。
ゆり姉ちゃんも泣きたくなる案件。



そりゃあ近江に帰りたくもなっちゃうよ。
(後ろでモグモグしてる長太郎おじさん!!)




●お母さんが見守ってくれている時間


すみれは、キアリスガイドの執筆を手伝いつつ穏やかに過ごしていました。


──家族は共に過ごす時間がその土台になっています。
──何事も土台が脆ければ簡単に崩れてしまうのです。


終戦後の混乱を生き抜くために商いをはじめたすみれ。
多くの人と出会ううちに、世の中のお母さんと赤ちゃんのことを思って別品を作ることが生きがいになったすみれ。
紀夫が復員してからもそれを続け、大きな飛躍を遂げました。

そこに一段落つけたくなったのかもしれません。




さくらと過ごす穏やかな時間。

さくらが保育所の友人・ひろ子ちゃんと喧嘩してしまった話を聞きながら、毛糸を解く時間。
それはすみれが仕事をしたままでは得られなかった時間なのかもしれません。


「お母さん小さい頃のこと思い出したわ。お母さんもお母さんに刺繍とか教えてもらってね。一緒にいられた時間はとても短かったんやけど、でもね、色んなこと教えてくれたのよ」
「さくらは人の気持ちをちゃんと考えられるのね。お母さん嬉しい」


誰かのことを想って何かを作る。
贈り物をもらって、誰かの想いを知る。
それはとても幸せな時間。
幼いすみれにそれを教えてくれたのははなさんでした。




翌朝、目が覚めたさくらの目に飛び込んだのはすみれが編み込んだ新しいカーディガン。

タペストリーのときと同じ構図。
お母さんがこうやって見守ってくれている時間。




●一緒に過ごす時間


すみれとさくらを目にした紀夫も穏やかに過ごしていました。
そんな紀夫からさくらへのクリスマスプレゼント。



缶につまったキャンディー。
なんとも可愛らしい。

さくらがリクエストした「みんなにも作ってほしい」という思いは、すみれと紀夫にもプレゼントを贈りました。



買い物をしながら2人で焼き芋を食べる。
ほっこりした温かさ。
戦争で失われた時間を、忙しさの中で見過ごしてきた時間を取り戻すような2人。

不器用な紀夫とすみれに必要なのは時間なのかもしれません。
相手のことを思い、その思いを知る時間。
一緒に過ごして、土台を築く時間。


11週の週タイトルでもあった「やるべきこと」は、そういう時間を作ることだったのかもしれない。








●大事なものに気づく時間


潔が駆け込んだのはあさやさん。
ゆりが一体何を考えているのかわからない、と麻田さんにもらすのですが。

「何のために頑張ってる?」と聞かれた潔。
坂東営業部再興のため、ゆりもその想いのはずなのにどこか自分たちはうまくいかない。


「お前は見誤っとる。人は自分の幸せのために生きるんや」

近江へ帰ってしまったゆりを追いかけた潔。
その潔に五十八がかけた言葉。


「これからは自分のために生きてくれ」

お前が守りたいものはなんだ?
お前の幸せはなんだ?

おまえにとって大事なものはなんだ?


初めて出会ったその日から時間が流れた。
時代が変わった。


「きっと変わったんです。私にとって大事なものが」

頭を下げる潔にゆりは言います。




●(閑話休題)


流れていく時間はこの人たちにも平等なもので。



年末進行に悲鳴を上げる昭一www

専門の経理の人を雇ってくれと懇願するのですが。


君ちゃん「昭一うるさいよ」

ほんとにこの夫婦はwww



●会いたい人に会う時間


悩める潔。
その夢枕に立ったのは。


名倉あああああああ!!!!!
おおおおお名倉あああ!!!!



「潔、わしに孫が出来るらしいやないか」
「そうや」
「孫か。ウッシシシシ……」



なんだこのSEはwww





正蔵が自分に何かを託すとしたら、坂東営業部のことだと思っていた。
でも父はただ笑っていただけだった。

 
「もし…もしおやじが生きていたら、そないな風に笑うんやろなあ。孫が出来たことをただ喜んで…みんな、生きていれば変わる。変わることが生きるいうことなんやて。親父の喜ぶ顔見てそう思うたわ」」
夢で再会した父は変わっていた。
会社のことより自分の喜びを最優先させていた。
父が変わったように自分も変わってもいい。

名倉が霊なのか、それとも潔の中で「誰かに言ってほしかった言葉」なのか。
それはわかりません。

でも潔は今、自分の幸せは家族だと気づいた。


潔おまえも不器用だな潔ぃ……。




ゆりに「家を建てよう」と潔。
実の親も死に、育ての親である正蔵も死に、身寄りのない潔にとって家族のシンボルたる家は何にも代えがたいもの。

肩肘を張らなくていい。
自分の幸せを考えていい。
家族を第一に考えていい。
それをゆりも正蔵も五十八も望んでる。

よかったね、潔。




●失いたくない大切な時間


家庭か仕事か。
潔が直面した問題は。すみれのそれと同じです。
仕事を選ぼうとした潔に対して、家庭を選ぼうとしたすみれ。

潔が「何を大切にして何を守るか」に気づいた今、すみれのその想いに紀夫も気づき始めていました。

守ると誓ったすみれ。
その人生の宝物であるキアリス。

それを自分が奪っているのではないか。

ならば変わろう。
自分は変わっていかなくてはならない。
すみれを守るためにキアリスを守る。




坂東営業部を辞めることを決意した紀夫。
そのことをクリスマスパーティーの席で伝えます


「僕はすみれの仕事と家庭が上手くいくように間に立ちたいんや」

「僕らは確かに大事な時間を戦争に奪われた。そやけどもっと大事なのはこれからや」

「すみれの人生はあと何十年も続くんや。僕と生きていく人生もあと何十年も続くんや。それが僕の幸せなんや」


「一番自分らしくいられる場所で、輝くすみれを僕とさくらに見せてくれ。この店をいつまでも育てて守って残していこう」

紀夫おおおお、そういうことは家で言えよお。
でも潔の話を聞いた勢い(紀夫の行動は、直前のあさやのシーンとつながってます)でこうやって言っちゃうのが、何とも紀夫らしい。

紀夫おまえほんとに……。



穏やかに穏やかに流れる時間。
麻田さんのホワイトクリスマスが商店街に響きます。

よかったですね。
みんなが笑顔になれるクリスマス。

 
潔夫婦も、近江のみんなも。


天国のみんなも。


さくらは紀夫に尋ねます。
「お母さんのどこが好き?」
さくらのこの質問、「お父さんの守りたいものはなに?」という意味を含んでいるのかもしれないと思いました。
紀夫の答えは「愛に溢れているところ」と。

別品への思い、キアリスへの思い、家族への思い。
不器用だし思い込んだら猪突猛進だけれども、いつも誰かのことを想っているすみれ。
すみれのその時間を守りたい。

ホワイトクリスマスが響く時間は、何よりの思い出になるでしょう。
誰にとっても失いたくない大切な時間。


小山がクリスマスを心から楽しめるようになるまでの時間。
潔が本当に守りたいものに気づくまでの時間。
さくらが毛糸をほどきながらひろ子ちゃんのことを想った時間。
すみれがさくらの成長を実感する時間。
はなさんとすみれたちが過ごした短い時間。
紀夫とすみれが一緒に過ごして、土台を築く時間。
紀夫が守るべきものに気づく時間。

みんなで笑って夜空を見上げる時間。
この先の未来の時間。

週タイトルの『やさしい贈り物』とは何だろうと考えたとき。
それは何にも代えがたい別品な時間なのかもしれません。








ミュージカルでお馴染の市村正親さんのポテンシャルをがっつり使った演出、よかったなあ。


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