明日はきっと

眠れないなら起きていればいい。
食べられないなら食べなければいい。

そんな状況だったから限界まで追い詰めてみた。
人体とはなかなか不思議なものだ。
素直におにぎりを食べたいと思えたし、横になった途端着替もせずに眠ってしまった。

少しだけ、光が見えてきたような気がした。



「今日はあまり食欲がなくて」
「なんだか眠れない」
そう訴える入居者に
「そういう日もありますよ」
と言うのが仕事なのだけれど。

先日つい口走ってしまった。
「あたしも最近眠れないんですよ。夜の当番にはちょうどいいんですけどね笑」
「そうね、そういう日もありますよね。でも明日はきっと」

入居者のばあちゃんから言われて、仕事中だということを忘れて泣きそうになった。
発作の涙じゃなくて、素直に嬉しかった。
「魂抜けてるよ」だとか「明日は出勤しなくていいからね」とかじゃなくて、あたしが欲しかったのはその言葉だったんだと気が付いた。

あたしと比べたら、じいちゃんばあちゃんたちの明日は少ない。
明日はないかもしれない。
でもこの人たちに、心から今日を楽しんでもらいたい。

明日を信じて励ましてくれた９０代のばあちゃんを見たら、あたしがしっかりしなくてどうするんだと思った。




ゆっくり呼吸する。
ゆっくり食べる。
ゆっくり眠る。

そんなことを手帳に大きな字で書いた。

ゆっくりゆっくり。
ゆっくり明日を信じてみようと思った。



久しぶりの休みは、カレンダー休通りのＧＷ。
明日から祖母と伊豆旅行。
――早く明日にならないかな。
そんな小学生めいたことを今素直に思える。