妄想ジャンキー。202x

人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

〈08冬、北海道・果ての岬〉銀河鉄道の夜

2008-02-12 18:50:34 | ○08冬、極寒北海道・果ての岬
北斗星に乗り、一路北海道へ向かっています。


スープカレーを食べたあと、改札まで見送られた。
いつもの大宮駅とは違う風景であることにハッとする。
そうだ、私はこれから旅に出るんだ。
「いつかは乗りたいと思っていたけれど、まさか学生時代に乗れるだなんて」
旅は恋に似ている。
なぜ会いたいのかわからない。
わからないがそれでも会いたいと思ってしまう。


個室にはいり、検札を終えた。
冊子に目を通しているうちに、あっという間にやることがなくなった。
札幌到着は翌朝9時。
膨大な時間をどうやって過ごそうか。
そんなことを考えているうちに、列車は宇都宮に到着した。

街の灯りが遠くに見えて、四角く窓の形に切り取られた風景が、クルクル回っていく。
頭上に研ぎ澄まされた月に吸い込まれそうになる。
走馬灯なんて見たことないけど、きっとこんな感じなのかな。
「あの小さな灯りひとつひとつの下に、家庭があるんだ」
そう言っていたのは誰だったろうか。

時々浮かび上がる駅舎に目を凝らすと、帰宅時間のサラリーマンたちがいた。
会社でも家庭でも見せない素の表情を見せている。
――ああ、ここが境界線なんだ。
「私、雨の日って好きよ。雨の日というより傘が好き。傘の下には自分の世界が広がっているの」
傘の中、サラリーマンの駅。
静かな世界の切目を見たような気がした。

日はとうに沈み、灯りさえもまばらになった。
カーテンを閉めて読書灯を点ける。
さあ、いよいよ銀河鉄道の夜がはじまる。
ジョバンニ、カムパネルラと共に過ごす贅沢な夜。

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