<<ネタバレしてます。未読の方はご注意ください>>
金曜更新、野中かをるさんの『失格人間ハイジ』。
神保町の冴えない書店員・灰澤修治(ハイジ)が、同じく神保町の出版社勤務の一色ひかるに恋をする…
といったパッと見は電車男よろしくなラブストーリーなのですが、内実はラブどころじゃなくジョブもあるし、むしろライフストーリーなんじゃないかと。
ハイジと一色さんは同じ29歳、30歳を目前に控えた年頃とあって、様々な「焦り」や「迷い」、「戸惑い」も「振り返り」が日々襲ってきます。
そんな2人がどんな幸せを掴むのか、と同世代として読んでいてリアリティのあるドキドキとワクワクを感じます。
30歳って何か大きな峠。結婚でも仕事でも「30歳までには」っていう気持ちがどこかにあって、だからアラサーなんて言葉が出来上がった。まるで最後のモラトリアムみたいな時期。
そんなモラトリアムの中をもがきながら生きていくハイジと一色さん、等身大の主人公に素直な共感を持てます。
『失格人間ハイジ』にみる、アラサーあるある。
【仕事の話】
正規社員か非正規社員か、格差社会
辞めたい、辞めたい。でもどうせ辞めるなら寿退社がいい。そういう同僚や友人を何人も見送ってきたんだから。ああやだやだ疲れてるとこういうこと考えちゃうんだよね。
こんな風に思えたときもあった。
夢があった。目指しているものがあった。でも気がついたらこうなってた。
だから女は仕事では絶対に泣いちゃいけない、男に頼っちゃいけない。
だからこそ優しさが突き刺さる。
この歳になると真面目だけじゃ仕事ではできない。
プライベートを棒に振るくらい頑張ってきた仕事だもの。それなりのプライドがある。
【恋愛とか結婚とかの話】
もう恋愛相手選びに失敗したくない。だから厳しいふるいにかけるしかないのだ。
恋愛や結婚に期限はなくても、妊娠・出産にはタイムリミットがある。
そこにときめきがあるか否か。
最初から期待しなければ裏切られることはないから。
周りからの期待、鬱陶しいくらいにハンパない。
かといって、期待されなさすぎるのも辛い。
みんな、幸せになっていく。1人だけ取り残される。
もし続いていたら、別れていなければ。たらればを言い出したらきりがない。
年齢の数だけ恋愛経験積んできたわけじゃない、恋愛じゃなくて仕事をしていたんだ。
なんだかんだでお金が大切だってこと、気がついちゃった。
【人生の話】
自分で選んだ人生、後悔は……ない。少し考えてしまう。
がんばった。がんばった。がんばったけど。疲れた。それが大人になることだった。
どん詰まりのときに欲しいのはこんな単純な励ましなんです。
こんな風に言ってくれる人、なかなかいない。
20代終わりかけ。進むべき道の、もうそのレールの上に乗っているはずだった。
夢みる歳でもない。夢みた日々を歩いてるはずの歳なのに。
身体的な老いもそれなりに感じるけど、まだまだこれから、と思いたい。
でも、幸せなんて、自分の心が決めるものだから。
ご紹介したのはごく一部。ストーリーは伊勢レイジというライバルが出現し、いよいよ現実味を帯びていきます。
10代後半のみずみずしさもなく、20代前半の若々しさもないけれど、それでも僕は恋をする。ハイジや一色さんの背中をそっと押したくなる作品です。
余談。
新宿駅での待ち合わせは結構ハイレベル。
コンビニ探してるんなら駅構内入ったほうが早いと思うよ。
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