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経験がもたらす恩恵

2017-01-20 | 仕事

今回は、私のある癖に関するカミングアウトと共に経験は心を豊かにするという話です。

私は、ビルなどの高い建物が真っすぐ立っているのを確かめるのが好きで、街中では他のビルとの隙間が平行になっているかを見比べてみたり、部屋から外を眺めながら窓わくや柱と外のビルが、真っすぐに重なり合うかを見たりするのが密かな楽しみです。

しかも縦方向だけでなく、横や斜めもそうで、特に角なんかは大好物です。

五重の塔を下から見上げ、屋根の角の先端が真っすぐ揃ってるのを見ると涙が出るほど感動したり、長い一本道の脇に立つ電柱が等間隔で並んでいるのを眺めるのもワクワクしたり、神社などの長い階段を見上げてその段差が上になるほど狭くなるのを見てにやけたりしています。

つまり私は「水平垂直フェチ」なんです。

私がこの感覚を持ったのは、もう20数年も前に経験したある建設現場での仕事です。

それは養鶏場の建設現場で、当時の私の仕事は鶏を飼うためのケージという“鳥かご”を作ることでした。

鳥かごと言っても、一つの鶏舎(鶏を飼育する建物)の中に、高さ約3m、幅約1.5m、長さ約90mの巨大な鳥かごを2列作り、それを24鶏舎分作り上げるという大きな仕事でした。

建設現場自体初めての経験でしたが、さらに鶏舎建設という特殊な仕事を任され、当時は相当ハイテンションだったことを今でも懐かしく思います。

その仕事を通して、建設関係の基礎知識だけでなく、電機や空調関係の知識も学び、さらに溶接、配管、左官、内装加工などの施工技術も身に付けることが出来ました。

その中で最も気を使ったのが、水平と垂直の正確さでした。

人の住む家と同じで、鶏の入るケージも水平垂直が正確でなければすぐにガタが来るものです。なので、高価な測定機を使い90mもある長い長い鳥かごを、奇麗な一直線状の建設物に仕上げて行く必要がありました。

最初は一本ケージの水平垂直を出すのに丸1日を要し、体力的にもキツイ仕事だと思っていましたが、次第に要領を得ていくうちに、美しいラインを出す事に魅力を感じはじめ、最後の方では建物全体の水平垂直が気になる様になっていました。

その時の感覚が今でも残っていて、建設中の建物を目にするとつい水平垂直が出ているか?などと思ったりします。

おそらく、あの時の経験が無ければ、建物を見ても何も感じることなどなかったと思います。またそれでも何も困ることも無かったとも思います。

しかし、何気なく目に映る建物でも楽しんだり感動できる感性は、経験がもたらしてくれた恩恵だとも思うのです。

自分の中だけでワクワク感を味わえる小さな感性かもしれませんが、私はいつでもどこでも、しかも無料でワクワク感を楽しむことができるのです。


仕事に限らず、何事も経験を積むということは心を豊かにすることに繋がると私は思います。たとえそれが辛い経験であっても、いつかは人を癒したり励ますことも出来るし、それが悲しい経験であっても、いつかは人を思いやることに繋がると思うからです。

そして同時に思うことは、自分では経験できない事でも、友人や家族の経験を通じてもたらす恩恵もあるということです。

親しい友人の経験談を聴いて感動したり共に悲しんだり、一喜一憂するのも心を豊かにすることに繋がると思います。

そう思えば、これからもまだまだ続く様々な経験が楽しみでなりません。

楽しくとも辛くとも、やがて自分の心を豊かにする経験を積みたいものです。