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歌劇「サロメ」のライブストリーミングを観る

2023年02月15日 | オペラ・バレエ

ウィーン国立歌劇場が毎月無料のストリーミングサービスをしているのは有難い。ニューヨークのMET、ロンドンのROHは有料だがウィーン国立歌劇場や日本の新国立劇場は無料だ。今月は13日からリヒャルト・シュトラウスの「サロメ」が無料公開されるので早速観た、日本語字幕が画面をかなり邪魔するが文句は言えない、あるだけましだ。無料公開は15日まで。

  • 作曲 リヒャルト・シュトラウス
  • 初演 1905年12月9日 ドレスデン宮廷歌劇場
  • 原作 「新約聖書マタイ伝第14章」、「マルコ伝第6章」
  • 台本 オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」、ヘドヴィヒ・ラハマン訳
  • 言語 ドイツ語
  • 上演時間 1時間40分

あらすじ

ユダヤの王ヘロデスは兄である前王を殺し妃ヘロディアスを奪い王の座に就いた。 妃の娘である王女サロメに魅せられて、いやらしい目を彼女に向ける。その視線に耐えられないサロメは、宴の席をはずれて預言者ヨカナーンを幽閉している井戸から出させ口づけを迫るが拒否され、ヨカナーンはヘロディアスの近親婚を非難する。ヘロデスが来てサロメに踊りを命ずる。拒否したサロメに王は踊れば望むものをやるといわれ、「7つのヴェールの踊り」を披露する。王が望みのものは何だと聞くとサロメはヨカナーンの首だと言う。銀の皿の上にのせられたヨハナーンの首を持ち上げ口づけをするサロメ。それを見ていた王はサロメを殺すように命ずる。

サロメはオスカーワイルドの同名の戯曲をオペラにしたもので1幕109分の短いオペラである。ウィーン国立歌劇場の説明によれば、シュトラウスは若い王女のセクシュアリティを預言者の禁欲的な宗教的真実と対比させ、当時のサウンドと道徳的な概念の両方を勇気を持って爆発させましたとある。また演出は、サロメのエネルギーと鼓動を目に見えるものにし、彼女のトラウマをリアルにし、強力な王朝の家族の歴史を根本的に伝えた、としています。
 
いくつか感想等を
  • 公演開始直前に、字幕で、サロメが踊る場面で、この舞台のためにフランシス・グルジャン Francis Kurkdjanが特別に手がけたフレグランス(香水)がお楽しみいただけます、と表示された。
  • サロメの7つのヴェールの踊りはこの演出ではヴェールを一枚ずつ脱いでいくような視覚に訴える官能的な演出ではなく、香水を使って嗅覚に訴える官能的演出だったのか? 福田恆存訳のオスカーワイルド「サロメ」の該当箇所を読んでみると「奴隷たちが香料と7つのヴェールを運んできて、サロメのサンダルを脱がせる」とある。そして、7つのヴェールの踊りの部分は「サロメ、7つのヴェールの踊りを踊る」とだけ書いてあり、どう踊ったかは書いていない。よって、7つのヴェールを一枚ずつ脱いでいくエロチックな演出は原作と関係ない演出家の創作であり、むしろ、今回のシリル・テステの演出は香料と七つのヴェールを運んできた、と言う部分の香水の部分を効果的に客に感じさせる原作に忠実な演出と言えるかもしれない。
  • また、この場面を含めサロメと同じ白いドレスを着た少女2人が出てくるが、これは少女時代のサロメを意図しているのかよく分からなかった。
  • ヨカナーンの首が出てくる場面だが、今回は首から上が出てくると言うより、首から上の仮面が出てきた。この方がグロテスクでなく現代にはマッチしているかもしれない。
  • サロメ役のマリン・ビストレームは美人で良かった、スタイルも良かったし官能的な雰囲気があった
  • 福田恆存氏翻訳の「サロメ」の巻末の解題を読むと、氏は「私はワイルドのサロメをスペクタル的官能美の表現と見る従来の定説に与しない、それはあくまで台詞中心の運命的悲劇である、1905年にリヒャルト・シュトラウスがドイツ語翻訳をそのまま歌劇化し、しかも大成功した、爾来、ワイルドのサロメよりシュトラウスのそれほ方が比較にならぬほど度々上演されている、その理由はやはり官能的要素や視覚的要素が人々の注意を奪ったせいもあろうが、更に、それが一晩の芝居としては短すぎると言うことにあるのではないか。ただ、戯曲としては、これほど多く読まれている作品もめずらしい」と述べているのは興味深い

スタッフ、出演者は

Conductor Philippe Jordan
Production Cyril Teste
 
Herodes Gerhard Siegel
Herodias Michaela Schuster
Salome Malin Byström
Jochanaan Wolfgang Koch
Narraboth Daniel Jenz
 
(日本語訳:Google翻訳を一部修正)
指揮 フィリップ・ジョーダン
演出 シリル・テステ
 
ヘロデス ゲルハルト・シーゲル
ヘロディアス ミカエラ・シュスター
サロメ マリン・ビストロム(マリン・ビストレーム、スウェーデン:49才)
ヨチャナン ヴォルフガング・コッホ
ナラボス ダニエル・ジェンツ