宿戸(しゅくのへ)駅を過ぎると、車窓に海が広がりました。
列車が海岸線に沿って走り始めてから、来し方を振り返ると、緑に包まれた台地状の地形が見えました。
青森県の大久喜駅付近を過ぎて、列車は少し標高の高い場所を走っていたようです。
そして直ぐに、線路脇に屋根の高さを超える防潮堤が現れました
しかし、列車が陸中八木(りくちゅうやぎ)駅に停車すると、駅から海が見えました。
この場所に防潮堤が無いのは、駅前の八木港に堤防があるからだと思います。
振り返ると、港外の海岸に、先ほど見てきた防潮堤が白い壁を連ねていました。
陸中八木駅を出ると列車は海岸線に沿って走り始めました。
リアス式三陸海岸のイメージとは異なる、平穏で緩やかな砂浜が曲線を描いていました。
そして、あの東日本大震災の時、この穏やかな海が猛り狂った日の被害を記録したHPを見つけました。
そのページを見ると、陸中八木駅の構内で、工事用車両が横転し、ひっくり返って車体の腹を見せています。
しかしその一年後に八戸線は復旧し、今現在、鉄道ファンに素敵なシャッターチャンスを提供してくれています。
陸中八木駅を出た列車は4分後に有家(うげ)駅に停車しました。
有家は珍しい地名ですが、この地は古くからアイヌ語由来の「うげ」と呼ばれていたようです。
一方この地方には、古今和歌集の選者として知られる藤原有家が、無実の罪で流罪となり、この地に流れ着き、彼の死後に有家神社を建立し、それが地名になった、との伝説が語り継がれるそうです。
有家駅は海風をまともに浴びる場所にあります。
しかし、潮風から線路を護る遮蔽物は見当たりません。
津波さえ来なければ、東向の海岸は、冬の厳しい西風が吹きすさぶ日本海側より海が穏やかなのかもしれません。
ちょっと不思議な気がして、グーグルマップの写真を眺めていると、おかしななことに気づきました。
種市から有家辺りにかけて、海岸線に沿って海底が白っぽいのです。
何故だろうと思って検索すると、洋野町ジオサイトというHPがヒットしました。
そこには「洋野町種市の海岸部には、浅瀬に10数キロも続く岩盤地帯があります。」と記されていました。
そして、その岩盤に深さ3mの溝を掘って、ウニやアワビの稚貝を放流し、育てているそうです。
クリーンな自然環境の中で良質なウニが育つそうです。
なる程。浅瀬の海は、波を作る為の海水量が少ないので、高波が立ちにくい筈です。
更には、この海岸は冬もサーフィンを楽しむ人の姿が見られるスポットだそうです。
海底に均一な深さの岩盤があれば、均一な程好い高さの波に恵まれるのでしょうか。
何だか洋野町、よさげな町です!
走り行く列車の窓から、穏やかな海の景色を眺め続けました。
嫋やかな曲線を描く海岸に白い波が寄せ、マツ林が波打ち際のすぐ横で、濃い緑の葉を揺らしていました。
線路の下に有家漁港が見えてきました。
その漁港に接したプールのような施設が見えます。
さけ・ます孵化場だそうです。
漁港の横を流れる有家川(画面右手斜面の下)を遡上してきたサケは、ふ化場内の水路に誘導されるそうです。
三陸海岸は豊かな海の恵みに溢れているようです。
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