河野洋平は戦後最も日本を貶めた政治家である
『月刊正論』 2014年9月号
上智大学名誉教授 渡部昇一
どういう経緯で慰安婦問題をめぐる河野洋平官房長官談話が出されたのか。安倍晋三政権は6月20日に、これまでの検証結果となる「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯~河野談話作成からアジア女性基金まで」と題する報告書をまとめ、公表しました。 そもそもこの問題は、産経新聞が長年に渡って追及してきた問題でした。河野談話の文言作成過程で日韓のすりあわせが行われてきたと明らかにしたのも産経新聞のスクープでした。河野談話がはじめから韓国の言い分を丸呑みした出来レースだったのではないか、慰安婦からきちんとした聞き取り調査をやっていなかったのではないか、という話はこれまでもありましたが、それらを事実だと明確に特定しました。とても大きな功績だったと思います。政府の報告書は産経新聞の報道が裏付けられた内容といっていいでしょう。これで今後、この問題を論じるさいに必要な、根底となる事実関係が確定したと思うのです。議論が迷走し、錯綜しても、ここから論じていけばいい。スタートラインが明確になったという意味で報告書が公表された意義は大きいと思っています。
政府は村山談話について継承する立場を取っています。河野談話も検証調査はするけれども、見直しはしないという立場を取ってきました。私は二つの談話には大きな問題があって見直しをしてほしいと考えています。だからこそ調査を最後まで続けたことは良かった。結局、これで「調査の結果、見直す必要がある」といつでも言える状態になったのです。安倍内閣は至上命題を長期政権だとしている。ですから妥協できるものは妥協する姿勢を取っています。当面、取り置いたところで調査の結果は動きません。いつでも河野談話が見直せるのです。
日本の政治家としてどこに心を置いているのか
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実は河野氏が談話を出した平成5年当時、私は彼に対してあまり腹を立ててはいませんでした。記者会見で彼は「従軍慰安婦」の強制連行を認めましたが、戦後のある時期から日本の外務省は万事摩擦回避に走ってしまう傾向が強くなっていました。そういう日本の外務省の掌中で河野さんは談話を発表した。そう見ていました。談話の中身は、もちろん問題があるけれども、韓国側の言い分を聞き、穏便に済ませようとした外務省に本質的な問題があると見て河野洋平という一政治家にはそれほど腹は立てなかったのです。
続く・・・(略)